ガバナンスTOPICS【イベントレポート】
【能登半島地震】被災地支援にあたる民間団体が現状を報告/イベントレポート
NEW地方自治
2025.01.08
目次
(『月刊ガバナンス』2025年1月号)
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【ガバナンス・トピックス】
能登半島地震の被災地支援にあたる民間団体が支援の現状を報告 ――日本財団「災害対策の課題と展望を語るフォーラム2024」
令和6年能登半島地震の発生から1年。被災者と支援者の今は、そして今後の見通しは――。
2024年12月12日、公益財団法人日本財団は、「災害対策の課題と展望を語るフォーラム2024〜能登半島の活動実態を踏まえて〜」を都内で開催。
能登半島で支援活動中の民間団体等が一堂に会し、被災者の声や支援現場の課題、相互連携の必要性などについて報告・意見交換を行った。
震災から1年の節目に
令和6年能登半島地震(以下、能登半島地震)の発生から1年の節目に開かれた本フォーラムには、各地のNPOやボランティア団体、自治体、企業、大学、社会福祉協議会などから100人以上が参加。関心の高さがうかがえた。
主催の日本財団は、「痛みも、希望も、未来も、共に」を活動理念に掲げ、幅広い分野で人種・国境を越えた人道支援や助成事業を展開しています。災害時には、財団職員が被災地に入り情報収集や応急的な物資提供を行うとともに、連携協定締結団体との協働、NPO等支援団体の活動資金の助成などを実施。復旧・復興までを見据えた、切れ目のない民間共助の実現をめざしています。
フォーラムの冒頭、日本財団の高島友和さん(災害対策事業部災害対策事業チームリーダー)が、能登半島地震(地震・水害)被災地支援に関する助成事業について概況を説明。発災後まもない24年1月5日から助成事業の募集を開始し、全国の326団体、439事業に対し、合計約8億4000万円の助成を行ったという(同年12月7日現在)。
災害支援に関する日本財団の助成事業について説明。
続けて、「Session1」「Session2」の2部構成で、能登半島地震の被災地支援で助成を受けた団体のメンバーが複数登壇(表参照)。それぞれの活動内容を報告し、今後の見通しなどについて意見が交わされた。
【Session1】「緊急期・応急復旧期」の支援
Session1のテーマは「緊急期・応急復旧期における民間非営利活動を振り返る」。3つのパート(Part)に分けて、支援者と財団職員の対話形式で進められた。
Part1:能登半島での地震大雨連続災害、対応現場の実態
神徳宏紀さん(社会福祉法人珠洲市社会福祉協議会)が登壇。
被災住民でもあり支援団体の職員でもあるという立場から、発災後の危機的状況、ボランティアの受け入れ、諸団体との連携体制などについて報告した。発災後1週間は社会福祉協議会の職員約70人のうち1割程度しか出勤できなかったといい、緊急期・応急復旧期の対応の難しさを感じさせた。
石川県珠洲市は、能登半島地震発生から遡ること8か月、23年5月5日にも震度6強の地震に見舞われていた。「この時のつながりが(今回の対応においても)大きかった」と神徳さんは振り返る。
珠洲市社会福祉協議会による支援の両輪は、「災害ボランティアセンター」と、生活再建相談や見守りなどを担う「珠洲ささえ愛センター」だ。住民の福祉に関するニーズや被災家屋の片付けのニーズをセンター同士が共有するなどして連携。誰一人としてとりこぼすことのない支援をめざしているという。
神徳さんは、「民間だからできることが必ずあると思う。行政がなかなかサポートできないようなところ、住民の中に入り込んだ支援を、これからも行っていきたい」と抱負を述べた。
緊急期・応急復旧期の支援活動を振り変える(Part1)。
Part2:被災地の医療・介護現場を支えながら普段の現場を維持する体制
被災地支援の報告とともに、支援団体の「普段の現場」をどう維持していくかという視点からも対話が行われた。
医師だけでも看護師だけでもだめ。ケアする人も常にいる状態を
菊池郁希さん(医療法人社団オレンジ)は、石川県輪島市の福祉避難所「ウミュードゥソラ」、福井県勝山市の県外避難所の運営などに携わる。看護や支援の中で「災害関連死の危険性がリアルに見えた」という。避難した時には避難所の2、3階に上がれたのに、次の日にはもう動けなくなるといった高齢者の姿を目の当たりにした。「医師だけでも看護師だけでもだめ。ケアする人も常にいる状態をつくり続けなければ」。オレンジでは、福祉支援チームFamSKO(ファムスコ)とも連携し、必要な支援が行える体制を組んでいる。
6法人が福祉支援チームとして一つに
FamSKOの大林喬充さん(所属は社会福祉法人薫英会)は、FamSKOの結成経緯や活動について報告。
FamSKOは、6つの社会福祉法人による任意団体で、各法人の頭文字をとって名付けられた。6法人は次のとおり。
・福祉楽団(千葉県)
・愛川舜寿会(神奈川県)
・みねやま福祉会(京都府)
・生活クラブ(千葉県)
・薫英会(群馬県)
・小田原福祉会(神奈川県)
拠点も災害対応の経験値も異なる6法人が福祉支援チームとして一つにつながり、互いにカバーし合い「普段の現場」の維持も図りながら、輪島市の福祉避難所に介護福祉士等を派遣するなど、高齢者や障害者の介護や間接支援を行っているという。
専門職が一緒に被災者の困りごとを聴き、分担を
駒井公さん(社会福祉法人全国社会福祉協議会)は、社会福祉協議会が災害時に果たす役割や災害ボランティアセンター(VC)の歩みなどについて説明。地域協働型VCの重要性、企業参画の必要性について強調したほか、「看護師、介護福祉士、社会福祉士などの専門職が一緒に被災者の困りごとを聴き、分担できるようになれば、被災者にとってよりよいのでは」と、今後を展望した。
医療・介護・福祉の視点から意見交換(Part2)。
Part3:被災地の住まいや暮らしの整え方あれこれ
住まいの確保や暮らしの立て直しなど、被災者の「生活」に軸足を置いて、支援の現況と課題を共有した。
山本周さん(山本周建築設計事務所)は、建築士のボランティア団体「建築プロンティアネット」に能登半島地震を契機に参加。半島全域で建物の現地調査や修繕・解体に向けた助言を行っている。「支援者に出会えていない被災者が多い」と山本さん。建築士と弁護士がチームを組んで支援にあたる必要性を語った。
大塩さやかさん(一般社団法人ピースボート災害支援センター)は、珠洲市で炊き出しの体制づくり、災害VCの運営サポートなどを行っている。発災から1年、まだ水道が使えないなど「元の生活は戻っていない」と住民が置かれた厳しい状況を指摘。行政、社会福祉協議会、NPOや企業など外部支援者による三者連携が必要と訴えた。
鈴木隆太さん(一般社団法人おもやい)は、新潟県中越地震被災地での集落再生支援などを経て、佐賀県武雄市に移住。同市での豪雨災害をきっかけに「おもやい」を立ち上げた。度重なる地元の災害に向き合う中で、それまで他地域で外部支援者として関わっていた時のありようを見つめ直した経験を振り返った。
住まいの確保や生活再建の支援について対話(Part3)。
【Session2】地域密着多機能型拠点の取り組み
Session2のテーマは、「地域密着多機能型拠点(ちいたき)これまでとこれから」。
地域密着多機能型拠点
日本財団の助成事業の一つ。
以下3点を組み合わせ、細やかな支援を行う取り組み。
①スタッフが常駐する支援拠点の運営と交流事業等の実施
②訪問活動(アウトリーチ)の実施
③個別支援活動
収集した支援ニーズ等のデータをもとに、今後の災害に備え検証を行うことにしている。
Session2では、地域密着多機能型拠点の運営団体メンバーらが登壇。石川県能登町、七尾市、輪島市における地域密着多機能型拠点の活動を共有し、「いつかは去らねばならない」外部支援者としての思いや展望について対話を行った。
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フォーラム全体を通じ、被災地の厳しい状況、継続的な民間共助の必要性、様々な団体のリソースを重ね合う連携の大切さが共有された。
(本誌/西條美津紀)