【特別企画】JTBのエリアソリューション事業 「送客から誘客へ」と進化する地域ツーリズムの新展開

地方自治

2024.05.29

『月刊ガバナンス』2024年6月号

 コロナ禍は人々の社会活動を急速に低下させながら、ライフスタイルまで大きく変えた。旅行業界も厳しい影響を受けるなか、最大手のJTBはその危機を奇貨としてツーリズムの新たな方向性「『新』交流創造ビジョン」を発表。グローバルとローカル、デジタルとリアルを視座に、創意豊かな「旅ナカ体験」を演出しつつソリューションを創出して注目を浴びた。旅行者と、自治体や地域、観光事業者をつなげることで新たな交流を生む試みとはどのようなものなのか。同社の森口浩紀・取締役常務執行役員/エリアソリューション事業部長に話を聞いた。


株式会社JTB
取締役常務執行役員
エリアソリューション事業部長
森口浩紀さん

変革へのチャンスに変えたコロナ危機

――新型コロナが世界を揺るがす渦中の2020年度より、JTBは「中期経営計画」で「『新』交流創造ビジョン」を打ち出しました。

森口 コロナ禍はツーリズムを取り巻く環境を変えた面もありましたが、私たちはもともと業界が抱えていた課題解決への取組みを加速させたことが最大の影響だったと考えています。というのも、コロナ前から国内市場は縮んでいるなど、厳しい市場環境にありました。そこをコロナが襲って一気に旅行者が減少したうえ、厳格な「三密回避」等の課題が出てきたことで、その変化に対応してサービスを変えるいい機会になったのです。

 したがって、「『新』交流創造ビジョン」では、グローバルとローカル、デジタルとリアルが融合して様々な交流が多様に広がるなか、その新展開にマッチする新たなビジネスモデルを創り上げると宣言しました。なかでもJTBの存在価値は何かと考えたのが、人々を「つなぐ、つなげる」こと。旅行者と地域、企業をつなげることで自らの企業価値を高めることでした。

――その理念に沿い新たにエリアソリューション事業を構築しました。

森口 新ビジョンに基づく事業体系は、ツーリズム、エリアソリューション、ビジネスソリューションの3分野で構成され、そのうち地域に最も関係の深いエリアソリューション事業は、観光DX事業、観光地整備・運営支援事業、エリア開発事業の3事業からなっています(図1参照)。

図1 JTB「エリアソリューション事業」ビジョン

 これらはいずれも自治体やDMO、観光事業者を中心としたお客様の観光に関連する課題解決にあたることが共通のテーマです。これまでのJTBは旅行商品等をご購入いただいたり、自治体から要請された課題を解決するフロー型ビジネスに主眼を置いていましたが、現在は旅ナカの予約・決済のデジタルプラットフォームを整備し、データマーケティングのソリューションを提供して常に地域と伴走するストック型への転換を図っています。

――目指す姿とは。

森口 私たちは「送客から誘客へ」という理念を掲げており、単にお客様を観光地に送り込むのではなく、地域目線で誘客して地元の皆さんとの交流機会を増やしていくことを重視しています。そのため、魅力に溢れ、滞在を楽しめるコンテンツを増やし、来ていただくサポートを徹底するようにしています。「継続的な交流を生むしくみづくり」、これが目指す姿です。

 そうした意味で最近話題になっているのが、新しい旅の形を提案する河口湖の「Tourist Base Kawaguchiko」や笛吹市の「FUJIYAMAツインテラス」です。また、レンタカー不足だった沖縄県では、2次交通の課題解決にあたって「エアポートシャトル」を那覇市から恩納村まで運行させ、利便性が向上した「やんばるの森」でもアクティビティを楽しんでもらうジップラインを展開するなど、旅の目的地に魅力あるコンテンツを提供する試みを続けています。

 

3本の矢で支えるエリアソリューション事業

――エリアソリューション3事業の概要を教えてください。

森口 観光DX事業では、自治体・DMOや観光事業者が販売チャネルを通じて旅行者とつながるプラットフォームとマーケティングのデジタル基盤を提供しています(図2参照)。

図2 「観光DX事業」 全体像

 これらを活用すれば、自社サイトやDMOサイト等を通じて旅行者にそれらの情報、予約・決済がシームレスにできるサービスが提供されます。観光DXは事業者には生産性を上げて業務効率化を図れる利便性を、旅行者にとってはシームレスにチケット等の予約ができる快適な「旅ナカ体験」をお約束しています。

 観光地整備・運営支援事業では、観光事業者や自治体に対する支援として観光雑誌のプロモーションを行ったり、「ふるさと納税」の一括受託、宿泊施設や観光局のデジタルコミュニケーションツールも提供しています。そのほかハード面では旅館・ホテルの改装や備品販売、空間ソリューション、施設運営のプロデュースなど、多岐にわたる事業を展開しています。

 エリア開発にはデスティネーション開発、観光開発・運営スキームの高度化、万博・IRの取組み等がありますが、地域コンテンツの高度化、開発投資などによって収益が地域に落ちるしくみづくりを目指しています。

 

新たな観光支援ツールで拓く「つながる」新たな未来

――一方、力を入れる観光ツールのひとつが多言語AIコンシェルジュ「Kotozna laMondo(コトツナラモンド)」ですね。

森口 20言語以上に対応可能なデジタルコミュニケーションツールで、(公財)大阪観光局で採用となり注目されています。訪日外国人のお客様にとって、「言葉」が観光の障害になっているケースが多いです。まして観光業界は慢性的な人手不足なので、おもてなし側の細やかな対応が難しい点もあります。そこでAIを活用して省力化を図り、幅広い案内をしようというコンセプトで導入しました。

 同ツールからは人と会話しているような回答が得られ、しかも(公財)大阪観光局の場合1000を超える情報を連動させ、自動的にチャットボットが更新されます。もちろん、リアルの場につなげば飲食店や土産物のクーポンが提供できますから、地域の経済循環を高める効果があります。つまり、これからインバウンドが爆発的に伸びる中で、いかに省力化でき多言語対応のサービスを提供できるかがカギになります。大阪・関西万博やIR対応を考えれば、こうした機能は不可欠だと思います。

――「JTB BÓKUN(ボークン)」も注目されています。

森口 ボークンは自治体・DMO、観光事業者が様々なコンテンツを国内外のOTA(インターネット上だけで販売を行う旅行会社)を通じて販売できるしくみで、観光地の体験型アクティビティの予約・販売、在庫管理可能な多機能型サービスですが、域内の「旅ナカ体験」を充実させることで、長くそこに留まって消費を増やしていただくことを目指すものです。一般的にコンテンツは様々な旅行サイトで販売すると在庫コントロールが難しいですが、ボークンなら販売・在庫管理を一括で行えます。旅先にいながらスマートフォンで旅ナカ体験の予約から決済までできるので旅行者に便利ですし、事業者もコストを削減しつつ売上を向上でき、自治体やDMOのHPで売ればそちらの収益にもつながります。

 このように、エリアソリューション事業はお客様に地域に来て快適に楽しんでいただくためのしくみです。JTBは「つなぐ、つなげる」を旨として、地域課題への最適解を地域の皆さんとともに考え、その発展に資する事業活動を展開していきます。自治体の皆様にもぜひご活用いただければと思います。

 

「エリアソリューション事業」紹介ページ
https://www.jtbcorp.jp/jp/domains/area/

 

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【企画提供】  ㈱JTB
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