政策トレンドをよむ 第6回 ベビーテックの動向と課題(2)

地方自治

2023.10.06

目次

    ※2023年8月時点の内容です。
    政策トレンドをよむ 第6回 ベビーテックの動向と課題(2)
    EY新日本有限責任監査法人 CCaSS事業部

    貝 蕾
    『月刊 地方財務』2023年9月号

     ベビーテックとは、妊婦の健康や乳幼児の育児にテクノロジーを活用することで「効率化・簡略化」を図るもののみならず、子育ての質の向上や親子・子育て世帯のウェルビーイング促進への寄与が期待されるものでもある。本稿では令和4年度に弊法人が経済産業省からの委託により実施した「デジタル技術等を活用した育児支援サービス(Baby-Tech等)が少子化等に与える効果と課題に関する調査」(以下「昨年度調査」という)の結果をもとに、ベビーテックの普及に当たっての課題及び今後の方向性について考察する。

     ベビーテックは、サービス事業者が独自に普及促進を行うことが多い。しかし、サービス事業者へのヒアリングによると、ベビーテックの認知度が低く、その有効性が周知されていないことがベビーテックの普及の上で課題になっている。また、一部のユーザーにおいては「子育てには手間をかけるべき」という固定観念が強く、ベビーテックの利用に対して不安や抵抗感があるため、利用が進まない状況でもあるという。さらに、ベビーテックのサービス事業者はベンチャー企業が多く、製品開発の資金確保が困難である上、自ら自治体や他の企業等との連携も進めにくい。その結果、ベビーテックの利用はベンチャー企業の多くが立地する都市部に集中していることが課題となっている。

     近年では、自治体が子育てサービスの一環としてベビーテックを導入するケースが増えてきている。昨年度調査では、自治体経由で保育施設へのベビーテックの導入が増加し、公立保育園の情報管理が容易になったり、保育園と保護者との情報共有が円滑になったりして、職員・保護者の負担軽減につながったことがわかった。一方、行政独自に普及促進を図る際に、行政ならではの障壁があることも自治体向けのヒアリングで明らかとなった。

     まず、ベビーテックは新しい技術を利用しているため、効果の検証やサービスに対する見積が困難である。また、初期費用以外にランニングコストがかかる場合もあり、その予算獲得も課題となる。さらに、個人情報漏えい防止のための措置をとらなければならない。その他、自治体が導入する場合は、効果が当該自治体の範囲内に限られる(自治体の範囲を超えた広域的な利用ができない)点も課題である。ベビーテックの効果をより広範に波及させるには、地域内外での連携が求められる。

     上述の課題を踏まえ、今後のベビーテック普及促進の方向性について、考えられる3つの方向性を下記に示す。

     第一に、自治体がハブとなってベビーテックを導入すること。自治体がベビーテックサービス事業者とエンドユーザーの間に入り、ベビーテックサービスの紹介や提供を行うことである。さらには、自治体が、地域内の子育て支援団体・NPO、インフラ事業者(沿線の住民向けに子育て支援事業を推進している鉄道会社等)と連携し、ベビーテックをより多くの子育て世代に普及させることが望まれる。また、自治体がハブとなってベビーテックを導入する際に、成果連動型民間委託契約方式(PFS)をとれば、ベビーテックの成果を検証するとともに、限られた財源の有効活用にもつながる。

     第二に、企業の福利厚生としてベビーテックを導入すること。近年、特に大企業では、女性のみならず、すべての社員のウェルビーイングのために、充実した福利厚生サービスを提供することが求められており、その一環としてベビーテックを導入・活用することが望ましいと考えられる。一方、人手不足問題が大企業より深刻な中小企業にとっては、ベビーテック導入のメリットはあるものの、そのコスト負担が導入のボトルネックになると考えられる。そこで、自治体が地域内の中小企業を対象として、ベビーテックの導入をサポートすることが期待される。これにより中小企業を通じてより多くの子育て世代へのサポートができる上、人材確保など地域内の中小企業の発展にも寄与する。

     第三に、好事例の発信と広域的な情報交流をすること。ベビーテックの有効性が知られていない、他地域の導入事例がわからないなど、情報不足が普及の障壁になっていることから、ベビーテックの導入・活用に関する好事例を自治体や国によって積極的に発信・表彰することが望まれる。特に、自治体や福利厚生で導入した企業によって普及した事例は、他の自治体や企業にとって参考になる。また、そうした事例の積み重ねによって、ベビーテックの利活用に関するノウハウの蓄積にもつながる。長期的には、優良なベビーテックの普及が加速していくことが期待される。

     こうした方向性を通じて、ベビーテックの開発・普及が進み、子育てをする一人ひとりのウェルビーイング増大と負担軽減につながり、ひいてはわが国の少子化対策に寄与していくものと考えられる。

     

    〔参考文献〕
    ・EY新日本有限責任監査法人(経済産業省委託調査)「令和4年度産業経済研究委託事業デジタル技術等を活用した育児支援サービス(Baby-Tech等)が少子化等に与える効果と課題に関する調査調査報告書」


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