こちら「嬉野市」情報化本部 小規模な自治体こそ、自然災害やコロナ禍などの備えともなる積極的なデジタル改革を!

地方自治

2022.06.27

この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊 J-LIS」2022年6月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。

こちら「嬉野市」情報化本部
小規模な自治体こそ、自然災害やコロナ禍などの備えともなる積極的なデジタル改革を!

 

長崎街道に面する宿場町として栄え、歴史的な魅力あふれる佐賀県嬉野市。人口2万5千人の小さなまちながら「攻めのDX」を掲げた革新的なDX戦略に挑み続け、ICT関連企業の進出も相次いでいる。

(月刊「J-LIS」2022年6月号)

嬉野市のDXの取り組み

 佐賀県嬉野市は人口2万5千人と小さなまちでありながら、1300年の歴史を有する「日本三大美肌の湯」の嬉野温泉、品評会連続日本一の銘茶「うれしの茶」、様々な人や最先端の文物が往来する長崎街道に面する宿場町として栄えた歴史に由来する「シュガーロード(砂糖の道)」と「日本陶磁器のふるさと」の2つの日本遺産を擁する魅力あふれるまちです。新たなチームカラーとして今、DX戦略に積極的に挑んでいます。RPAやAI-OCRの導入といった庁舎内業務の「守りのDX」を皮切りに、顧客である市民や来訪者へ価値を提供する「攻めのDX」も掲げています。具体的には市民が市役所に来庁しなくても証明書発行が可能な「オンライン申請」の導入や、西九州新幹線開業を機に観光客の新たな移動手段としての自動運転車両の導入実証実験に取り組んでいます。

災害時に確信するデジタル改革の効果

 「仕事は追われるのではなく、追いかけるもの」。2018年2月に就任した村上大祐市長が繰り返し職員に語り掛ける言葉です。市役所の仕事は本来、創造的(クリエイティブ)なものですが、市民からの申請書類に加え、国・県や他の地方公共団体とやり取りする書類の山に追われるのが現実です。生産性向上が喫緊の課題でありました。

 近年頻発する自然災害やコロナ禍もDXに取り組む必然性を生み出しました。ひとたび大規模災害に見舞われれば業務が増大し、小さなまちはひとたまりもありません。平時の備えとしてもデジタル活用の業務改革は急務となりました。

 まずは庁舎内で副市長をトップとする業務改革チームを立ち上げましたが、近隣の同規模の地方公共団体での事例がなく、何から手を付ければよいのかわからない状態でした。まず、どのような業務が自動化に適しているのか洗い出した上で、徐々に絞り込んで5つの業務を選び、3か月の短期集中で「小さな成功事例」を作るところから始めました。要するに小さく生んで大きく育てるということです。初年度は5業務で年間業務量に換算して全体の18%にあたる225時間の削減が期待できる成果が挙がりました。研修や検証作業は、部署横断的に参加してみんなで共有することを重視しました。実は「みんなでやる」というプロセスも大事な業務改革で、普段はどこか知らないところで行われている業務を知ることが、業務全体の流れを知ることにもつながりますし、部署を超えた交流にもなります。とにかく職員に「人員削減が目標ではなく、サービスの向上」「業務改革(BPR)は、災害が起きても対処できるようにするための平時における備え」と繰り返し、業務改革の目的を意識してもらうよう努めました。

 目覚ましい成果が出たことで自信を高め、取り組みを加速するべく、2020年度は本格的に予算計上を行いました。そこに前年度末からくすぶり続けていたコロナ禍が急激に深刻化して全国一斉の緊急事態宣言が出たことで、テレワークやオンライン会議システムの導入も急ピッチで進み、業務改革(BPR)への機運は一気に高まりました。地元のITベンダに委託して庁舎内に常駐してもらい現場ヒアリングや実装・運用テストなどを行い、業務改革(BPR)の取り組みを拡大した結果、22業務で2,395時間、率にして35.9%の削減見込みとなりました。この成果は大きな前進です。例えばふるさと納税のワンストップ特例申請書の受領確認業務では、通常12月に寄附が集中することもあり、担当する企画政策課は書類の処理に追われます。寄附金総額32億5千万円で20万人を超える人が嬉野市に志を寄せてくれるため、他の課から動員しても間に合わず、正月返上は当たり前でした。しかし、RPAを導入したことで従来は2週間を要していた作業を4日で終えることができました。「ひとり親家庭等医療費助成事業」でも現場の若手職員のアイデアにより、AI-OCRで読み込みやすいよう書式変更を行いました。内部の事務処理の効率化だけでなく、将来的には役所の申請書類でよくある、同じ書類の中で何か所も住所や名前を書く煩わしさなど、市民の申請負担を軽減することも可能になりそうです。業務改革(BPR)の本当の成果は職員一人ひとりが日常の業務で課題意識を持ち、その課題をデジタルの力で何とかならないかと思案し、仲間の力を結集してアイデアを出していく好循環を生み出すことだと考えています。

今後の取り組み

 内閣府の「未来技術社会実装事業」の採択を受け、新しく誕生する新幹線駅と温泉街を結ぶ自動運転車両をはじめ、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を用いて特産品や歴史文化の魅力発信をして実際の回遊効果を高める観光地づくり、そのコンテンツ制作を担う人材や企業の誘致を進めていく構想が動き始めています。産官学に地元のステークホルダーが集まる協議体では、5か年計画で最先端技術の実装に向けての課題の洗い出しや実施体制を具体的に詰めています。自動運転やARの活用は当初こそ観光客・来訪者へのサービスを想定していますが、最終的には交通弱者と呼ばれる人たちの暮らしを豊かにするために精度を高めていく考え方を忘れないようにしたいと思います。これからの取り組みに注目してほしいと思います。

地域情報及び行政情報(2022年4月30日現在)

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特集:自治体で広まるデータ利活用

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