地域の助け合いが自分と家族の命を守る第一歩!~「地区防災計画」の作り方~

葛西 優香

地域の助け合いが自分と家族の命を守る第一歩!~「地区防災計画」の作り方~ 第6回 地区防災計画策定の進め方

地方自治

2023.08.07

東日本大震災・原子力災害 伝承館 常任研究員・株式会社 いのちとぶんか社 取締役
葛西 優香

 

1.地区防災計画の7つのステップを振り返る

 地区防災計画を作成するための最初の準備について前回までの記事に示した。最初の準備を振り返ると、以下の7つのステップが必要となる。

STEP1 計画を作成するチームを構築する。この時点で多世代が関わっている10~15名のチームを形成する STEP2 誰とどの範囲の計画を立てるかを決める(例:町会範囲、小学校区範囲、一棟のマンション範囲) STEP3 話を聞きたい人(協力者)リストを作成する STEP4 計画の範囲に存在する人の属性を整理する STEP5 属している人にできるだけ多く声をかける STEP6 計画の最終形態(目次)を示す STEP7 いつまでに完成をさせるか大枠のスケジュールを決める

 

2.計画策定の10の段取り

 7つのステップを整えることができたら、いざ、作成に向けて動き出す。ここで「整えることができたら」と提示したことに訂正を加える。STEP1の「10~15名のチーム」形成ができない、人数が揃わなくても始めることが大切である。「10名」集めないといけないから、作成に向けてのスタートが切れないというわけではない。10名に満たなくても、スタートし、活動を続けるうえで仲間を一人、また一人と増やしていけば、自然とチームメンバーの人数は増えてくる。作成のうえで意識したいことは「無理をしない」ことである。作成を志した気持ちがメンバーの不足によって折れてしまっては元も子もない。まずは、志したメンバーで動き出し、策定を進めていくことから始めていきたい。
 地区防災計画は誰のための計画であっただろうか。計画を作成する地域に住む住民のためである。よって、「進め方」も一つだけのやり方を守り抜く必要は全くない。それぞれの地域において計画を作成しようと決めたメンバーで内容も検討して進めればよい。それが地区防災計画である。一方で、全く方針が見えない状態ではなかなか作業は進まない。進めるために、次に示す策定の段取りは一つの例であることを認識していただきたい。

【策定の10の段取り】
① 自分たちが住んでいる地域を知るために、資料を収集する。 ② お住まいの地域の行政に地区防災計画作成を行うことを伝える。 ③ 行政で定めている方針や作成における助成金やアドバイス制度などがないかを確認する。 ④ 地域で作成されている防災計画(地域防災計画、避難所運営マニュアル等)を確認する ⑤ 7つのステップで整理した「話を聞きたい人(事業者・教育機関等含む)リスト」に沿って、アポイントを取る。 ⑥ 「話を聞きたい人リスト(事業者・教育機関等含む)」に挙がっている方の災害時の状況について聞き取りを行い、整理する。 ⑦ お互いを知ることができたら、聞き取りを行った人(事業者・教育機関従事者)と共に、作成の話し合いを行う会議日程を決定する。 ⑧ 会議時には、目次に沿って、話し合うべき内容と事前に決められた情報(被害想定等)を分けて、計画に反映させていく。 ⑨ 話し合ったこと、決定事項、保留事項を整理しながら、目次に沿って検討を進める。 ⑩ 初版として、話し合ってきた内容を示す計画を一旦まとめる。

 

 ここまでが、策定の10の段取りである。段取りを進めるうえでの重要なポイントを2つ提示する。

(1)「一旦まとめる」過程の重要性
 まず、一つ目は、⑩で示した「一旦まとめる」という過程の重要性である。一つの項目にこだわり、なかなか議論が前に進まないことも作成の過程では訪れるであろう。どうしても、その項目に関する議論を深めなければ話が進まない場合はこだわることも重要だが、議論が煮詰まった時に一度、立ち止まり、「今、この項目について決定しなければならないのか」ということを考えてほしい。「決定」せずとも、前に進める場合は、保留事項として挙げておき、決まられるところから決めていくという進め方を推奨する。そして、保留事項は必ず、「更新」の際に丁寧に議論を繰り返し、「決定」へと近づけていくことに留意してほしい。

(2)人の意見を受け入れることの重要性
 二つ目に重要なポイントは、作成段階で「人の意見を受け入れること」である。計画を作成するうえで、一人ひとりが学び、知識が増えていくだろう。しかし、「知識」だけを意識しすぎて、臨機応変な会話ができない場面はないだろうか。人の意見を聞かず、一方的に知識を押し付けてしまうことはないだろうか。計画に絶対はなく、正解もない項目も多い。計画を作成するメンバー同士の意見が集約して、計画は作られていく。一人の意見を踏襲して計画にするのであれば、「地区」の防災計画とは言えない。「個人防災計画」となってしまう。よって、メンバー同士の意見を受け入れ、話し合い、一人の意見が大きくならないように進めることが二つ目に重要なポイントである。

 

3.多くの協力者を募るステップへ

 さて、ここまで進めてきた作成メンバーは、「一旦、まとめる」ことで出来上がった計画で、「地区防災計画は完成した」とは決して言わないであろう。それは、まだ未確定や保留の内容があること、状況や環境の変化に合わせて「更新」を行わなければならないことに気づいているからである。ここで「完成」したと思っているメンバーは魂を込めて、計画を作成したとは、まだまだ言えない。もう一度、作成したメンバーで計画を見直し、「更新」の方針(頻度や時期)を決めることが初版の策定の打ち合わせで決めるべき事項である。
 次回は、ここまで進めてきたメンバーがより多くの協力者を募っていくための「様々な世代の巻き込み方」について提示していきたい。

 

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