連載 vol.70「つながる」力 なんのためにつながるのか ── つながることは目的ではなくて手段 【倉田麻紀(広島・尾道市職員)】

地方自治

2023.06.01

目次

    本記事は、月刊『ガバナンス』2020年1月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
    所属等は執筆(掲載)時点のものです。
    ※本コラムは主に自治体職員によるネットワークのメンバーがリレー形式で執筆します。

     「つながりを作りたい、ネットワークを広げたいから申し込んだという人がいたら、参加しないでください」

     2014年に東京財団主催の週末学校(*)に参加した際、最初に言われたことだ。それはなぜだか分かるだろうか。

     私は2013年に初めて企画部門に異動し、「協働推進係」となったとき、正直言って協働とは何か何もわからなかった。だからすぐに、協働について学べると聞けば研修に参加し、近隣市町で講座があると聞けば出向いて行った。

     また、研修で学んだ事例の活動を直接見たい、知りたいと思い、現地にも行くようになった。見聞きしたことは、持ち帰って進めたいと思って、他の市町に出向いていった。そして、わが町ではどんな活動があるのか知るために、いろんなイベントにも参加した。他市の職員だけでなく、いろんな活動をしている市民の方々や団体と知り合うことができた。

     私にとって、「つながり」とはこうして動いたことにより生まれた結果である。尾道市内はもとより全国にネットワークも広がったが、一人ひとりとできた関係性それぞれがとても大切な宝物である。

     しかし、冒頭の言葉の続きは、「自分の宝物にしていただけでは意味がない」ということなのだ。その研修プログラムを通して学んだことだが、なんのためにつながるのか、例えば、基礎自治体職員として「市民自治を実現するための実践にどう活かすのか」という目的が必要なのである。

     実際の体験として、つながりやネットワークは、企画部門でも現在在職している福祉部門でも仕事を進める上で、とても役に立っている。もちろん市民活動の現場において、やりたいことを応援する際は言うまでもない。

     つながりやネットワークは、手段の一つだと私は理解している。まちづくりなど必要な場面で活かしていくことが重要だと思う。目的を見失い、いつの間にか仲間づくりを目的としてしまうことがないだろうか。宝の持ち腐れにならないよう、これからも日々精進していきたい。

     

    (広島・尾道市職員/倉田麻紀)

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