【リレー連載】「自治体×デジタル」を考える 東西南北デジデジ日記

千葉大右・多田 功・山形巧哉・今村 寛

東西南北デジデジ日記 vol.56 今週の担当:【西】多田功

地方自治

2022.11.10

「自治体×デジタル」を多彩な切り口からゆるっと考えてみる、現役&元自治体職員4名によるリレー日記。vol.54からはお題なしのフリートークで進行中。「あるといい」と「便利」の関係って深いですね。(※本連載は毎週木曜更新です)

―――――2022年11月10日 Thu.―――――――

 

お題はないんだ

vol.37の特別編から順番が入れ替わり、山形さん、千葉さん、多田、今村さんの順で回って1クールというルールがほぼ定着してきました。

特別編以降のvol.38からは、「業者」「推進」「外部人材」「公務員とお金」といった「天の声」という名の編集担当からの無茶振りをもらう形で、それぞれがコメントしてきましたが、本クールからはその天の声が途絶えるという別の意味での無茶振り状態となってます。

 

よくよく考えると

何かお題があれば、テーマの絞り込みができ、書きやすくなるということを体感しましたが、急にお題がなくなると「何書こう」とテーマ探しからスタートするので、準備にものすごく時間がかかります。
ただでさえ書くのが遅い僕にとっては、ネタ探しに相当時間を費やすこととなります。

講演やインタビューにおいても、「『自治体DX』『スマートシティ』について話してください」と漠然と依頼されると、話す内容にものすごく困ってしまうわけです。

「加古川市のスマートシティの取り組みについて話してください」となると、やっていることについて話ができるのですが、自分の経験談を交えないとリアリティがない抽象的な話になってしまい、聞いている側も「この人、何言ってんだろ?」みたいなことになります。

また、地域情報化アドバイザーの依頼を受けた際によく聞かれる質問が、「他市の事例を教えてくれませんか」というものです。

こちらの経験不足で申し訳ないのですが、加古川市の事例しか知らないんですよ。。。
そんなもん知らんがな!!! ってやつです。

加古川市の職員にそんなこと聞いちゃだめです(笑)。

「加古川市だったらどのようにやってますか」だったら答えることができるかもしれません。
いや、自分が担当したことがない業務は答えることができません(笑)。

そうやってネタ探しをしているのは、まるで「自治体DX」にも似た感じがしませんか?

 

テーマを探す

手段と目的が逆転しないことは当たり前の話ですが、デジタルを使うことが目的になっている話がよくあります。

スマートシティ界隈では、
「データ連携基盤を入れるにはどうすればいいですか」
「市民参加型合意形成プラットフォームをどうやったら入れることができますか」
といった問い合わせがしょっちゅうあります。

そんな時、「お金があれば買えますよ」とつれない返事をしたい気持ちを抑えながらも、「どういった課題がありますか」とか「○○を導入して、どういったことをやりたいですか」とこちらから聞き取りをすることもあります。

そこでハッキリとした答えが相手から返ってこない場合、予算化するときに必ず問題になるでしょうから、実現可能性が低いものになることは誰でもわかることと思います。
きっと周りから「スマートシティをやらないのか」とか、「市民参加型合意形成プラットフォームをいれないのか」なんて質問を投げられているんでしょうね。

そういった意味でも、テーマや課題を明確にすることは重要なことです。

 

不便益

話は変わりますが、最近、スマートシティについて大学生からインタビューを受けた際に、「不便益」という考え方を教えてもらいました。
端的に言うと「不便で良かったことや不便でないとダメなこと」だそうで、デジタル視点で考えるとこの観点は大事にしないといけないなと感じたので紹介します。

「不便益システム研究所」(http://fuben-eki.jp/whatsfuben-eki/)のページには、不便益の例として以下のようなものが挙げられています。

●富士山の頂上に登るのは大変だろうと、富士山の頂上までエレベーターを作ったら、どうでしょう? よけいなお世話というより、山登りの本来の意味がなくなります。 ●ヒットを打てるように練習するのは大変だろうと、だれでも必ずヒットの打てるバットを作ったら、どうでしょう? これも同じですね。 ●私が子どもの頃、遠足のおやつは300円以内でした。もし、自由に好きなだけおやつを持ってきても良かったとしたら、どうでしょう? 遠足前日に半日をつぶしてスーパーをうろつき、自分ならではの組み合わせを考え抜いたのは、今思えば楽しい思い出です。
そういえば、「おやつ300円」という制限がなくなると、「バナナはおやつですか」といったお決まりの質問が出なくなる(笑)。
これは不便益とは関係ないか…。

最近ではサブスクリプションサービスで音楽が聞けるようになったおかげで、昔のようにレコード屋を一日中回ってみたいなことはしなくなりました。

一日かけて買いたいレコードを探すといった行動をするなかで、思いも寄らないレコードに出会いジャケ買いみないことがあったりしましたが、今や「あなたが好きな音楽はコレですよね」、「あなたの周りではこんな音楽が聞かれています」とレコメンドされるようになりました。
はたして、こういった機能は本当に便利な機能と言えるんでしょうか。

*レコメンド
ウェブサイトへのアクセス履歴などの膨大な情報を取集し、利用者と類似した商品やカテゴリに関心を持っている他の利用者を関連づけ、グループ化し、類似した利用者がよく見ているが、利用者がまだ見ていない商品を表示させる仕組み。

 

便利じゃなくてもいい

デジデジ日記を書きながら、この日記を自動で書いてくれるサービスがあったらいいのに〜と思ったりしないでもないですが(笑)、それに意味があるのかどうかを考えないといけないですよね。

山形さんが書く、千葉さんが書く、今村さんが書くといったことに価値があるので、何が書かれたか(話したか)というよりも誰が書いたか(話したか)が重要なことだと思います。

「便利な体験」によって、あなたにどんな利益があるのか。
コロナ禍によって移動制限がかかり、リモートワークが急激に普及しましたが、移動することによって得られる体験や直接会って話すことはもはや「利益」と言えないのかもしれません。

何をするにも利便性やスピードが求められ、それによって効率よくすることが「豊か」とされてきたものとは全く逆の発想となりますが、黒電話の時代(古っ!!)やポケベルの時代(これまた古っ!!)に不便を感じながらも遠くにいる人に情報を伝達する仕組みは、今となっては非常に貴重な体験だったのかもしれません。

検索エンジンで何でも調べることができるようになった便利さと、その反面、デジタル化によって失われた体験についても考えないといけないかもしれませんね。

それでは、また来週デジデジ!

 

~次回の日記は11月17日(木)に更新予定です!~

 

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