月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2022年7月号 特集:地域スポーツのミライ

地方自治

2022.06.29

●特集:地域スポーツのミライ

コロナ禍が世界を覆う中、1年延期、無観客など異例づくしで開催された昨年の東京2020オリンピック・パラリンピック。開催の賛否や、ホストタウンや文化プログラム、関連イベントの縮小・中止などにより首都圏以外の地域にも多くの影響を与えたが、選手たちの姿が人々を魅了したのも確かだろう。自治体や地域にはそのレガシーをどう活かしていくかが問われるが、その一方で地域スポーツを取り巻く環境は厳しさが増している。人口減少、少子高齢化、財政逼迫、価値の多様化などの社会課題の影響はスポーツにもさまざまな形で及んでいるからだ。例えばこれまで子どもたちの運動機会の核となってきた、部活動も地域への移行が本格的に始まろうとしている。他方、コロナ禍で外出機会が減った高齢者の心身の健康維持も喫緊の課題といえる。こうした中で、地域スポーツにはこれから何が求められるのか、自治体の役割も含めて考えたい。

■地域スポーツの現在位置/二宮清純

「地域密着」の理念を掲げて発足したJリーグが誕生して30年。全国100クラブの構想は「大風呂敷」ともとらえられていたが、すでに40都道府県の58クラブまでに拡大している。そして、その動きは他のプロスポーツにも波及しつつある。

■これからの地域スポーツをどう描くか
~東京大会のレガシーと第3期基本計画/結城和香子

2020年東京オリンピック・パラリンピック大会の開催は、コロナ禍による変容や賛否の論議にさらされたが、中長期的に見れば、日本という国でのスポーツの社会的な位置づけを変え、これからの地域スポーツを考える端緒を残したとも言える。スポーツ庁が3月に策定した第3期スポーツ基本計画には、その方向性に沿った施策が盛り込まれている。

結城和香子 読売新聞編集委員

2020年東京大会の開催は、コロナ禍による変容や賛否の論議にさらされたが、中長期的に見れば、日本という国でのスポーツの社会的な位置づけを変え、これからの地域スポーツを考える端緒を残したとも言える。第3期スポーツ基本計画には、その方向性に沿った施策が盛り込まれている。

■地域スポーツと共生社会/師岡文男

スポーツは、本来、性別、国籍、年齢、人種、言語、宗教、職業、貧富の差、障がいの有無などの違いを、用具、場所、ルール、競技方法などを柔軟に変えることで、多様な人々が安全に共に楽しめる「共生社会」を創造する知恵に満ちた文化である。スポーツのとらえ方の柔軟性も重要で、幅広いスポーツのとらえ方、認識は必須である。

■地域スポーツとジェンダー/小笠原悦子

スポーツ界における男性と女性の両方のリーダーに、世界規模でのジェンダー平等に向けた改革の動きに対する理解が必要だと感じている。ジェンダーだけではなく、性指向に対する差別もスポーツ界(IOCを含む)では禁止されている。リーダーの知識のアップデートが最も重要な課題であり、これは中央組織だけの問題ではなく、地方組織や地域スポーツ組織にも直接関連してくる内容である。

■子どもとスポーツへの新しい視点/中小路 徹

スポーツにおいて、勝利は価値の一つに過ぎない。まず楽しみがあり、居場所としての価値がある。そして、スポーツを通じて自分で考え、判断し、発言する力をはぐくむには、重視したいのは結果よりもプロセスだ。それには、子どもが主役でなければならない。

■部活動の地域移行をどう進めるか~地域SCから見た課題/小野崎研郎

6月6日、スポーツ庁「運動部活動の地域移行に関する検討会議」の提言がスポーツ庁長官に提出された。インターネットで中継もされ、現在もアーカイブが閲覧できるので、視聴された方もいらっしゃるかと思う。筆者の所属する浦和スポーツクラブ(SC)では、2002年頃から中学生年代のスポーツ環境づくりに関わり、19~20年度にはスポーツ庁「運動部活動改革プラン事業」を受託し、いくつかの取組みを試行してきた。本稿では、これらの経験に基づき、今回の提言に関連して、地域SCの立場からいくつかの論点について整理したい。

■SDGsの視点から見た地域スポーツ/神谷和義

地域スポーツを地域住民の生活圏におけるスポーツライフと捉えれば、自治体とスポーツ団体、関係者のパートナーシップに基づく地域に根差した取組みとSDGs視点を盛り込んだ社会公益的な活動が、結果として地域スポーツを支えるスポーツクラブやスポーツ団体の持続可能性を高め、地域住民のスポーツライフを充実させることにつながる。

■スポーツ施設のストック活用をどう進めるか/南 学

公共施設のあり方が問われるようになってきているが、現在、多くの市町村にとって、大きな課題となっているのは、公共施設の総量抑制である。高度経済成長期に多くの公共施設などが整備されたものの、大規模修繕や建て替えが必要となった現在、財源不足のために、施設投資と維持管理を十分に行うことができない。そして、施設への投資や維持管理の経費の抑制をするために、施設面積の総量を減らさざるを得ないが、「総論」では賛成できても、「各論」レベルでは、合意形成は容易ではなく、多くの自治体では、総量抑制への取り組みは鈍い段階にある。

〈取材リポート〉
◆官民連携で保育園を含む多機能型の「フットボールセンター」を整備
──熊本県フットボールセンター(仮称)(熊本県嘉島町)

まもなく熊本県嘉島町に「熊本県フットボールセンター(仮)」がオープンする。一般社団法人熊本県サッカー協会(KFA)と嘉島町が連携して都市公園内に整備する、人工芝のサッカーフィールドに、保育園やカフェ、コインランドリー、活動交流拠点、芝生広場などを併設した多機能型の複合施設で、管理運営を株式会社熊本フットボールセンターが担う。資金調達に社会的投資の仕組みを取り入れ、幅広い参画を試みているのも大きな特徴だ。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
地域通貨の新展開

地域通貨に再び注目が集まっています。
地域通貨はNPO活動の隆盛などとともに2000年代に広がりましたが、その後、廃止されたものも少なくありません。
そうした中、近年のデジタル化の進展の中で、デジタル地域通貨が出現。利便性も機能性もアップし、キャッシュレス決済の普及などとともに各地で導入が進んでいます。地域コミュニティの活性化などの面からも新たな可能性が広がる地域通貨について考えます。

■デジタルで広がる地域通貨の新たな可能性と課題/藤井靖史

一括りに地域デジタル通貨と言っても幅が広い。最初に押さえておくべきは「この道具を何のために使うか?」である。重要なのは地方が中央からお金をもらうことではなく、自律的な地域運営ができるか。通貨という道具は不幸を減らし幸せを増幅させる道具であるべきだ。

〈取材リポート〉
◆信用組合が運営する飛騨地方限定の地域通貨を行政も支援
──さるぼぼコイン

今ではすっかり一般的となったスマートフォンによるQRコード決済。その先駆けとなったのが、岐阜県飛騨地域(高山市・飛騨市・白川村)限定の電子地域通貨「さるぼぼコイン」だ。PayPayより1年早い2017年12月にサービスを開始した。誕生から4年が経過し、ユーザー数の人口割合は約24%に達している。運営主体は飛騨信用組合(ひだしん)で、地域内の経済循環が目的だ。行政とも連携協定を結び、現在では市税や窓口の手数料などをさるぼぼコインで支払えるようになっている。

◆地域の経済活性化と課題の解決へ向けて電子地域通貨を活用
──埼玉県深谷市

産業ブランディングを推進している埼玉県深谷市は、取り組みの一環として電子地域通貨を導入している。地域内経済循環を高め、また地域課題の解決に役立てることで、持続可能な地域経営を実現するのがねらいだ。ポイントバックキャンペーンなどで利用拡大を図るとともに、様々な行政事業と連携させ、効率的な行政運営と市民生活の向上をめざしている。

●連載

■管理職って面白い! 逆ハラスメント/定野 司 ■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
ワクチン接種からの気づき──非常時の人員配置と兼務職員の取扱い/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇 ■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/田村彩子 ■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭 ■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人 ■キャリアを拓く!公務員人生七転び八起き/堤 直規 ■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫 ■宇宙的公務員 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介 ■次世代職員から見た自治の世界/椋田佳奈 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/小澤誠一 ■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子 ■自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ/関東学院大学地域創生実践研究所 ■にっぽんの田舎を元気に!「食」と「人」で支える地域づくり/寺本英仁

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
金田英樹・熊本県大津町長
「世界で一番住みたいまち、住み続けたいまち」の実現を

町議時代からマニフェスト・サイクルを回していた熊本県大津町長の金田英樹氏。21年1月に行われた町長選では、住民との対話を基に作成した政策冊子「101の具体策」(マニフェスト)を掲げて圧勝した。それから約1年半。マニフェストを基軸に「世界で一番住みたいまち、住み続けたいまち」の実現を目指した挑戦が加速している。

金田英樹・熊本県大津町長(39)。県と熊本県出身の漫画家・尾田栄一郎氏が描く人気漫画『ONE PIECE』とが連携した復興プロジェクトの一環で今年1月、大津中央公園に設置されたゾロ像の前にて。「特に休日は親子連れでにぎわいます」と金田町長。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝
伊達政宗(二) 一匹の奥羽の山猿

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
シンボルはなくなるのか──福島県大熊町、町立図書館の解体決定
[原発事故、続く模索]

被災前の福島県大熊町は人口増加の自治体だった。「住みたい」という人が多かったからだ。その理由の一つとなっていたのは県内トップクラスの蔵書数を誇る町立図書館である。独特の建物のデザインも加わって、町のシンボルになっていた。だが、町民に広く知らされずに解体が決められ、「壊さないで」という署名が出される事態となっている。人々の喪失感はまた深まるのか。

□現場発!自治体の「政策開発」
未来人になりきった提言で持続可能な社会を構築する
──フューチャー・デザインによるまちづくり(岩手県矢巾町)

岩手県矢巾町は、まちづくりなどにおける新たな住民参画や意思決定の手法として「フューチャー・デザイン」を導入している。仮想将来世代の視点から現世代のまちづくりや社会のあり方を考える試みで、持続可能な社会づくりをめざすのがねらいだ。まち・ひと・しごと創生総合戦略や総合計画後期基本計画の策定に向けた住民ワークショップをはじめ、庁内の研修や会議などでも活用し、未来志向の行政運営を展開している。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
議会改革推進会議で議会基本条例を検証し、議会行動計画を策定──秋田県横手市議会

秋田県横手市議会の議会改革推進会議は2021年6月、4回目となる議会基本条例の検証結果を議長に報告した。今回は新たに活動評価シートを用いて、実績を洗い出し、課題を抽出、数値化する方法を導入。2023年9月までの議会行動計画も策定した。同会議を中心に改革を進め、広報広聴活動の充実も図っている同市議会を取材した。

●Governance Focus

□本音トークと他地区情報で“命の決断”
──球磨川洪水の教訓で「報道連携会議」/葉上太郎

50人もの犠牲者が出た2020年7月の球磨川洪水。事前にもっとできることがあったのではないかという反省から、流域12市町村、熊本県、国の九州地方整備局・熊本地方気象台、報道機関が「危機感共有と命を守る災害報道連携会議」を組織した。定期的な勉強会のほか、危機が迫ればオンラインで臨時会議を開いて本音で話し合い、避難情報を出す判断材料にする。市町村の対応は即座にテレビで文字情報として流され、全国でも例のない画期的な取り組みだ。

●Governance Topics

□総合計画策定にAIシミュレーションを活用──長野県
/生田洋平・須藤一磨・広井良典

EBPM(根拠に基づく政策策定)の重要性が指摘される中、AI(人工知能)を活用して地域の未来シミュレーションを行い、それを県の総合計画策定に役立てようとする試みが長野県で進められている。同県はこのたび「AIを活用した長野県の未来に関するシミュレーション」をとりまとめ、知事会見及び長野県総合計画審議会にて発表した。ここではその概要を紹介する。

□議員報酬のあり方やハラスメント防止策などを学ぶ
──全国町村議会議長会、町村議会議長・副議長研修会

全国町村議会議長会(会長=南雲正・新潟県湯沢町議会議長)は5月30日、都内の東京フォーラムで町村議会議長・副議長研修会を開催した。町村議会の議員報酬のあり方やハラスメント防止策など喫緊の課題について学んだ。

□シティプロモーション全国調査から見る現状と課題/牧瀬 稔

シティプロモーション自治体等連絡協議会(https://www.citypromotion.jp/)が全国の自治体を対象にシティプロモーションに関するアンケート調査を実施した(名称は「全国シティプロモーション実態調査」であり、調査期間は2021年9月21日~同年12月8日)。筆者は2008年に同協議会の立ち上げに関わり、現在は顧問という立場である。アンケート調査は1718自治体を対象に実施した(都道府県、特別区は対象外である)。有効回答数は475自治体であった(回答率27.6%)。42設問ある。シティプロモーションに力を入れていない自治体は調査票を返信しないと推測するため、実質の回答率はより高まると考えている。本稿は調査結果の一部を紹介する。数年前から、筆者に「シティプロモーションの成果があがらない」という相談が届くようになった。本調査は、成果の上がらない理由を探る意図もある。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人 □自治・分権改革を追う/青山彰久 □新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之 □市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照 □地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚 □“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □公務職場の人・間・模・様/金子雅臣 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □From the Cinema その映画から世界が見える
『ガザ 素顔の日常』『パレスチナのピアニスト』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『スポーツ毒親』島沢優子]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
技術とともに人間関係をつないでいくことが大事
──炭焼き職人・物部徳明さん(和歌山県田辺市)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
全域がエコパークの豊かな自然と先進的な挑戦が共生する/三重県大台町
□山・海・暮・人/芥川 仁
「漁師になったのは洗脳やな」──福井県小浜市宇久
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
伝統的な海女漁と世界に誇る真珠養殖の技術
──鳥羽・志摩の海女漁業と真珠養殖業(三重県鳥羽・志摩地域)
□人と地域をつなぐ─ご当地愛キャラ/メルギューくん・メルモモちゃん(富山県小矢部市)


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【特別企画】

□シリーズ・LPガスが変える地域のミライ
分散型エネルギーのLPガスと
停電対応型ガスコージェネが変える地域の災害対応

※「もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク」は休みます。

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「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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