議会局「軍師」論のススメ
議会局「軍師」論のススメ 第41回 「チーム議会」が局職員に求めるものは何か?
地方自治
2020.12.31
議会局「軍師」論のススメ
第41回 「チーム議会」が局職員に求めるものは何か? 清水 克士
(月刊「ガバナンス」2019年8月号)
■選挙結果と議会の普遍性
統一地方選挙組の議会では、初の定例会も終わり、安堵している局職員も多いだろう。選挙は立候補者にとっては、政治生命をかけた闘いであり、その心境としては、自分が議員となってこその議会であろう。したがって、議会活動の方向性も任期単位で考えられがちだが、議会は誰が議員であるかにかかわらず永続する議事機関である。
もちろん、選挙の結果として議員構成が変わることによる機関意思の変化は、民意の反映として真摯に受け止めるべきものである。だが、二元的代表制における議会の普遍性に関する部分での後退までもが、許容される変化ではないだろう。
既に全国の議会においても、普遍性の後退に関しては、問題意識が共有されており、議会基本条例を必要とする理由の一つとされている。
改革派議員の引退によって、成し遂げられた改革が一気に後退することが、全国ではままあり、議会基本条例に改革内容を明記することによって、後退への抑止力として機能することが期待されている。そして議会改革に限らず、機関としての理念や活動方針の継続性を維持することは、議会にとって大きな課題である。
■大津市議会の取り組み
その答えの一つとして、大津市議会では、議会基本条例の理念を具現化する通任期の実行計画である「大津市議会ミッションロードマップ」を策定している。これは議会活動の見える化を図るとともに、任期末には有識者による外部評価を制度化し、議会の政策サイクルを確立したものである。その評価結果は、次期議会への申し送りとして取りまとめられ、培われた文化の継承と、任期を超えた議会活動の継続性の維持に資している。
これまで、4年の任期を超えた議会活動の継承に着目されることは少なかったが、市民視点からは機関としての切れ目などはなく、活動を任期単位で区切って考えることは内部視点でしかないだろう。
■任命職としてすべきことは何か
一方、選挙を前にして、次期議会への展望は、選挙に立場を左右されない任命職たる局職員の方がしやすい面もある。局職員は組織で仕事を進めるため、人が変わることによるブレは、公選職で構成される議会本体より少ない。その特性を活かし、任期を跨ぐ議会活動の成果の継承に、局職員はより積極的に取り組むべきではないだろうか。
議員は市民の代表であるが、公選職であるため選挙への影響を無視できず、自分の集票基盤に配慮した個別最適を追求せざるを得ない面があることも否定できない。したがって、議員個人が必ずしも全体最適性や普遍性を最優先に考えた行動をとるとは限らない。
その意味からは議会のために、あえて任命職である局職員が俯瞰した意見を述べなければならない局面もあろう。局職員は全体の奉仕者として、市民のために仕事をすることが法で義務付けられており、強固な身分保障は、全体最適な市民福祉向上の実現のためにこそあると考えられるからだ。
そして、議員と立場の違いはあれど、局職員にも議会による市民福祉の向上に積極的に関与しようとする意識があってこそ、議員や市民からも「チーム議会」に欠かせない存在として信頼を得られるのではないだろうか。
*文中、意見にわたる部分は私見である。
Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。