議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第63回 議選廃止によって監視機能は本当に低下するのか?

地方自治

2022.03.10

本記事は、月刊『ガバナンス』2021年6月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 大津市議会では、2017年の地方自治法改正によって、議員から選任される監査委員(以下「議選」)が必置から任意になったことに伴い、2018年に議選制度を廃止した。

 今号では、廃止後3年を経て、議選廃止が議会の監視機能に及ぼした影響について総括したい。

■大津市議会での議選廃止経緯

 議選制度の存廃議論については、議会と首長が対等・独立の関係にある二元的代表制下で、議事機関の構成員である議員が、執行機関の特別職である監査委員を兼任する制度自体の是非を論ずる「制度論」と、議選制度が議会の監視機能強化に資する利益を論じる「機能論」の二つに大きく分けられる。

 筆者個人としては、両者の高い独立性を前提とする二元的代表制の根幹的理念と矛盾し、「用心棒論」と称される議選がいるからこそ監査の権威が担保できるという、法的効果ではなく政治的効果に期待した制度設計に疑問を感じており、法的に廃止すべきと考えている。

 一方で大津市議会としては、機能論の観点から議論され、議選個人として得た監査情報を、議会にフィードバックして活用するのは、守秘義務が課されている現状では事実上困難であり、監査の独立性、専門性の観点からも問題があるとして、議選廃止が決定された。

 廃止当時は、全国で3番目という圧倒的少数派だったこともあり、議会の監視機能低下を招くとの批判を想定して、監視機能強化策が検討された。だが、そもそも議選によって議会の監視機能が向上している例など本当にあるのだろうか。

 仮にあったとしても、監査委員に課されている守秘義務は、議選も識見監査委員も同じであるのだから、識見監査委員と情報交換すれば、議選と同等の監査情報が議会として得られるはずである。

■大津市議会の監視機能強化策

 そのような観点から、議選に期待されてきた役割を踏まえて、大津市議会では議会と監査委員との情報共有の仕組みが構築された。

 その一つとして、当初は全員協議会で半期に一度の定期監査の報告を受けての質疑応答のほか、全監査委員との自由な意見交換の場を設定した。その後、活発な議論のために議員数を絞るなど、改良を重ねて監査委員との情報共有や意見交換を続けている。

 それによって、議会と監査委員との接点は増え、その関係性は議選廃止以前と比して、明らかに活性化している。

■議会現場での実感

 他の観点からの議選廃止の効用としては、監査の専門性の向上があげられる。現在、大津市監査委員は、県職員OB、弁護士、公認会計士、社会保険労務士の4人で構成されている。これは2人の議選枠を廃したからこそ、結果的により多様な分野、経歴の人材が任命可能となり、実現したものである。

 少なくとも大津市議会においては、議選廃止を契機として、議員が得る監査情報はむしろ豊富化している。その意味では、机上の理論はともかく、議会の現場の実情からは、法制度上の矛盾を看過してまで議選を残す意義は感じられない。

 議選問題の本質は、監査委員を議会の機関ではなく、執行機関に位置づけている地方自治制度上の問題であるが、現行法上は議選廃止が最適解であると、廃止後3年の実践を経て確信を深めている。

 

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

第64回 2030年の地方議会に求められるものは何か? は2022年3月24日(木)公開予定です。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員

しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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