月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2022年6月号 特集:次期統一選と首長・議員

地方自治

2022.05.30

●特集:次期統一選と首長・議員

2023年4月の次期統一地方選挙(第20回)の実施まで1年を切った。新型コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵攻、そしてDXの推進や、ひたひたと押し寄せる本格的な人口減少……。不確実性・危機が増す中で自治体の公選職はいかにあるべきか。また、有権者(住民)はいかに公選職を育てていけばいいのかを考えてみたい。

■次期統一地方選と公選職/大森 彌

公選職たるものは、日々の暮らしの平穏無事を願っている住民にとって「災難」をもたらさないように注意深くなければならない。まずは、住民のひんしゅくを買うような不祥事を起こさないことである。また、自分と自治体職員の住民対応を感度のよい、すがすがしいものにしていることである。そして、「権力の座」の居心地の良さに決して慢心しないことである。

大森 彌 東京大学名誉教授

公選職たるものは、日々の暮らしの平穏無事を願っている住民にとって「災難」をもたらさないように注意深くなければならない。また、自分と自治体職員の住民対応を感度のよい、すがすがしいものにしていることである。そして、「権力の座」の居心地の良さに決して慢心しないことである。

■現代に求められる首長像──コロナパンデミックと新たな首長像/富野暉一郎

地方自治体の首長は、コロナ禍で図らずも露呈した日本の情報戦略の欠陥を奇貨として、電子情報システムが本来持っている多様な可能性(特に時間・空間距離の超克)を地方自治の強化や地域社会の課題解決に具体的に活用するための新たな情報戦略に取り組むことが求められているのではないか。真の情報化が機能するために首長の強力なリーダーシップが発揮されることを期待したい。

■現代に求められる議会・議員像/廣瀬克哉

あらゆる政策選択には、利害得失がともない、現実の政策選択はどうしてもデメリットの部分もともなう。その際に、行政の危機対応の足を引っ張るようなことしかできない議会なのか、危機のさなかだからこそ見落としてしまいがちな問題点に気付いて、改善を促す契機となるような議会なのかが問われている。

■DXと業務改革のバランサーとしての首長/牧原 出

そもそもDXとは試行錯誤の繰り返しである。現場では様々な混乱が生じる中、混乱を鎮めつつDXを進めざるを得ない。そこで首長に必要なのは、DXを進めながら、混乱を可能な限り小さくすることである。一方で改革を加速することが望ましいが、他方で拙速なDX推進は職員の過剰な負担となる。もろもろの要請の間で適切なバランサーとなることがこれからの首長には求められるのである。

■「政策に強い議員」をめざす──議員生活4年間をデザインする/礒崎初仁

少子化と人口減少の下で、地域には様々な課題が山積している。「まち・ひと・くらし創生」第2期の取り組みも進められているが、コロナ禍も加わって、地域の活力は低下している。こうした状況で、自治体が地域運営の主体として政策責任を果たすには、首長のリーダーシップだけでなく、もうひとつの代表機関であり、熟議民主主義を体現する議会が「政策に強い議会」に変貌し、地域課題の解決に取り組む必要がある。来年4月の統一地方選挙に向けて、新人・現職を問わず議員選挙に挑戦する方々には、政策力を高めて地域の課題解決に取り組んでいただきたい。そんな志を抱く議員・議員候補者に期待をこめて、立候補から任期満了まで、「政策に強い議員」になるために何ができるか、何をなすべきか、考えてみよう。

■過疎地域の現状と公選職に求められる資質/作野広和

もはや過疎問題は地方や中山間地域に限らず、国全体で検討すべき課題であるといえる。過疎地域の首長に求められる資質として、自地域の将来像を明確に打ち出せることが挙げられる。首長は過去をしっかりと学び、未来を予測しながら、時空を超えて現在の立ち位置を客観的に見いだす力が必要となる。さらに議員に求める資質としては、地域内において「水の人」としての役割を担うことが期待される。

■議員のなり手不足解消への道──住民自治の空洞化からの脱却/江藤俊昭

議員のなり手不足問題解消は、一朝一夕には達成できない。正攻法を着実に進めるしかない。住民と歩む議会は立候補者の掘り起こしにも役立っている。危機状況だからこそ住民、議員、首長等の総力戦が不可欠であり、それを創出する場がフォーラムとしての議会である。住民自治の空洞化から脱却し、住民自治を充実強化する機会にしたい。

■議会の多様性をなぜ目指すべきか?どのように実現できるか?/三浦まり

議員の性別・年齢という意味での多様性が求められる背景には、男女や世代では異なるニーズがあり、問題視する課題にも違いが見られることがある。全ての政策課題において差異があるわけではないにせよ、身体に関わる政策、社会保障や環境問題において、あるいはジェンダー平等や気候正義という価値観において、性別・年齢において少なからず意見や関心の違いが見出せる。

■公選職の育て方と有権者/吉田利宏

長も含め自治体において公選職を育てる方法はひとつしかない。地域の課題を共有し解決してゆくことだ。シンプルだがこれに尽きる。議員と有権者についても、啐啄同時を生かすことができれば、「卵が先か、鶏が先か」という問題も生じない。地域に無関心な有権者の下ではよい公選職は育つわけがないし、その逆もまたしかりである。

【キャリアサポート面】

●キャリサポ特集
 オンライン時代の会議術

コロナ禍による"新しい日常"とデジタル化の進展で、急速に普及したオンライン会議。
当初、自治体ではパソコンの性能やインターネット回線の問題などで乗り遅れ気味でしたが、今では通常の会議から研修、イベントなど幅広い場面で使われるようになってきました。とはいえ、実践は始まったばかりで、まだまだ試行錯誤中でしょう。
今月はオンライン時代の会議術について考察します。

■自治体オンライン会議の可能性/小林 隆

オンライン会議の役割は、情報通信技術を用いて、送信者と受信者によるコミュニケーションを活発化し、効率化することにある。現代社会において、人材、財源などの限られた公的資源を分配するためには、社会における有用性や正しさを効率的に判断しなければならない。自治体オンライン会議のとりわけ重要な役割がここにある。

■オンライン時代の会議とファシリテーション/加留部貴行

コロナ禍以降、2年余りで急速に普及した「オンライン会議」。一つの画面に複数のメンバーが集って情報や意見、想いなどを交わし合う場は、身近なものから国境を越えた首脳会議まで多種多様だ。随分と慣れて長けてきた人もいれば、未だに苦手意識を持って躊躇している人もいるだろう。このオンライン会議にもファシリテーションは必要である。

■オンライン会議のポイントとプレゼン術/前田鎌利

リモートワークの普及で私たちの働き方は大きく変わり、多様性を帯びてきた。1日3回の打ち合わせがあれば、そのうちの1回はリモート会議。これが現時点でのスタンダードであり、おそらく今後も変わらない。そうなってくると会議のスタイルが異なるということは、会議自体の進め方、やり方を変える必要がある。

●連載

■管理職って面白い! 神様たちのチームワーク/定野 司 ■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
ワクチン接種で感じた「国と地方の関係性」に関する課題/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇
■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/西 陽子 ■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭
■働き方改革その先へ!人財を育てる“働きがい”改革/高嶋直人 ■キャリアを拓く!公務員人生七転び八起き/堤 直規 ■そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室/関根健夫 ■宇宙的公務員 円城寺の「先憂後楽」でいこう!/円城寺雄介 ■次世代職員から見た自治の世界/三宅将太郎 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/栄羽武史 ■誰もが「自分らしく生きる」ことができる街へ/阿部のり子 ■自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ/関東学院大学地域創生実践研究所 ■にっぽんの田舎を元気に!「食」と「人」で支える地域づくり/寺本英仁

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
森 章浩・奈良県田原本町長
子育て施策の充実が町を活性化させる!

「子どもから高齢者まで誰もがいきいきとした暮らしを楽しむまち たわらもと」の実現をめざしている奈良県田原本町の森章浩町長。そのために取り組むのが「3つの未来」の創造だ。特に「子育てしやすい未来」については前職・保育園園長の経験も活かして子育て施策を充実。人口の社会増減がプラスとなるなど子育て施策の充実が町を活性化させることに確信を抱いている。

森章浩・奈良県田原本町長(46)。庁舎前にて。田原本町は、弥生時代の大遺跡「唐古・鍵遺跡」で知られる。「そこから出土した遺跡のモニュメントです」と森町長。

●連載

□童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝
伊達政宗(一)奥州探題の姓は留守氏

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
相次ぐ災害に心と資金が折れる──福島県相馬市、2年連続で震度6強の地震
[原発事故、続く模索]

3月16日深夜、福島県沖を震源とする地震が発生した。最大震度6強を記録した同県相馬市では、東日本大震災、台風19号と集中豪雨、昨年の福島県沖地震と災害続きだ。しかも、地震そのものによる被害はどんどん酷くなっている。「せっかく直したばかりなのに、また壊れた」と落胆する人々。復旧の資金が続かず、事業継続へのめども立たない。心が折れかけたまちは、深刻な危機に陥っている。

□現場発!自治体の「政策開発」
子育て世代の転入促進に加え 大学生等を地域に呼び込む
──守谷シェアハウス事業(茨城県守谷市)

茨城県守谷市は、つくばエクスプレス(TX)開業に伴って東京都心へのアクセスが向上したことから人口が伸び続けている。特に教育環境の良さが子育て世代に支持され、子どもの人口増加率は沿線1位を誇る。そのような中、「守谷シェアハウス事業」を実施している。高齢化が進む地区の空き家をシェアハウスとして学生に家賃無償で提供し、居住学生に町内会活動等に参加してもらって地域活性化を図る試みだ。

□議会改革リポート【変わるか!地方議会】
多様な議員によって「デジタルで広がる・つながる・深まる」議会改革を
──全国地方議会サミット2022

都内の早稲田大学大隈講堂で5月12~13日、「多様な議員、参画、政策形成」「デジタルで広がる・つながる・深まる議会改革」をテーマに全国地方議会サミット2022が開催された。サミットには、現地とオンライン合わせて約550人の自治体議員・職員などが参加。次期統一地方選を来年4月に控え、議会に多様な議員が参画する必要性や男女共同参画推進、DX導入など多角的な議論を展開。地方議会におけるオンライン本会議の導入に向け、法改正の必要性も強調された。

●Governance Focus

□「賛成」「反対」で揺れる遊水候補地
──熊本県・球磨川、流域治水での住民合意とは/葉上太郎

2020年7月4日に起きた熊本県の球磨川洪水からもうすぐ2年が経つ。国の主導で「流域治水」の事業が進みつつあり、例えば建設計画が「休止」とされていた支流の川辺川ダムが“穴あきダム”として復活する。田んぼダムも試行が開始された。だが、突如として持ち上がった遊水地案に翻弄されている地区もある。やっとの思いで住宅を修繕した後で迫られる移転。「賛成」「反対」で住民の分断も深まり、地域に傷を残しかねない。

●Governance Topics

□選管や教育委員会にも呼びかけ、投票率向上をテーマとした議員研修会を開催
/東京都東村山市議会

東京都東村山市議会は5月10日、投票率向上をテーマとした議員研修会を開催した。研修会には議員に加え、選挙管理委員や教育委員会の職員も参加。市議会の政策総務委員会では今年12月までに政策提言をまとめる予定だ。

□建築物への再生可能エネルギー導入をどう進めるか
/WWF「シリーズ自治体担当者に聞く!脱炭素施策の先行事例集」オンラインセミナー

脱炭素社会の実現に向け、さまざまな取り組みを進めているWWF(世界自然保護基金)ジャパンは4月28日、「シリーズ自治体担当者に聞く!脱炭素施策事例集 オンラインセミナー編」を開催した。今年3月に同団体が、自治体の脱炭素施策の先進事例を取材し、とりまとめた事例集の中で関心が高かったテーマについて、より深めるために担当者を招いて行うものだ。

●連載

□ザ・キーノート/清水真人
□自治・分権改革を追う/青山彰久
□新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之
□市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照
□地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚 □“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □公務職場の人・間・模・様/金子雅臣 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □From the Cinema その映画から世界が見える
『オードリー・ヘプバーン』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『映画を早送りで観る人たち』稲田豊史]

●カラーグラビア

□技・匠/大西暢夫
和紙の原料を生産する農家の気遣い
──三椏農家・右手忍さん、幸江さん夫妻(岡山県美作市)
□わがまちの魅どころ・魅せどころ
小さな町の大きな挑戦
~ゼロ・ウェイストと人づくりで彩のあるまちづくり/徳島県上勝町
□山・海・暮・人/芥川 仁
自然に沿い、応じて従い、任せる──熊本県水俣市月浦
□生業が育む情景~先人の知恵が息づく農業遺産
刈った草を肥料として味わい豊かな茶を生み出す
──静岡の茶草場農法(静岡県掛川周辺地域)
□クローズ・アップ
災害復興を先導できるか──熊本県球磨村、球泉洞が営業再開


■DATA・BANK2022 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!

 


【特別企画】

□デジタル技術によって誰一人取り残さない社会の実現へ②
多言語通訳と手話通訳で“誰一人取り残さない”窓口対応を目指す──東京都足立区

※「もっと自治力を!広がる自主研修・ネットワーク」「人と地域をつなぐ──ご当地愛キャラ」は休みます。

 

 

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株式会社ぎょうせい

「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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