行政大事典

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【最新行政大事典】用語集―キャッシュレス社会とは

地方自治

2020.11.14

【最新行政大事典】用語集―キャッシュレス社会

はじめに

 『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第9章 金融」から、「キャッシュレス社会」を抜粋して、ご紹介したいと思います。

キャッシュレス社会

 キャッシュレス社会(Cashless)とは、現金通貨(紙幣・硬貨)を使用しなくても人々が日常の諸支払いが済む経済社会を表す言葉である。近年は、ICTの進化を背景に登場した電子マネーやクレジットカードの利用範囲が拡大したことで、現金通貨の流通が減少傾向を辿っている。キャッシュレス化は、さらに現金通貨の流通を無くすことで事業者の出納事務を省力化すると同時に、現金通貨の破損・紛失・盗難のリスク、脱税、マネーロンダリングを防止して社会的コストの抑制も実現できると考えられる。

 世界的にもキャッシュレス化が急速に進行している。キャッシュレス化が先行したのはスウェーデン、デンマーク、ノルウェー等の北欧諸国であった。これら3か国では、クレジットカードの活用に加えてスマートフォンの支払いアプリが広く浸透している。またスウェーデンではSwish、デンマークではMobilePay、ノルウェーではVippsなど官民が共同して構築したモバイル決済・送金サービスも利用され、現金による金の受け払いを廃止した銀行や現金の受け取りを拒否する商店が登場している。中国では、インターネットユーザーの殆どが、アリババのAlipay(支付宝)、テンセントのWeChat Payment(微信支付)等をプラットフォームにモバイル端末を通じた銀行預金の振替サービス支払いを利用して実質的なキャッシュレス化が浸透している。米国でも、近年は小口代金の支払いにクレジットカードやデビットカードを利用する向きが拡大している。

 日本では、政府が2014(平成26)年6月に策定した「日本再興戦略改訂2014」において「2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催等を踏まえ、キャッシュレス決済の普及による決済の利便性・効率性向上を図る」としてキャシュレス化に取り組む姿勢を鮮明にした。さらに2017年6月の「未来投資戦略2017」では、「今後10年間(2027年6月まで)に、キャッシュレス決済比率を倍増し、4割程度とすることを目指す」として目標数値を掲げ、クレジットカードの利便性向上を通じたキャッシュレス化を進めるとしている。

 日本におけるキャッシュレス化は、Siuca、Pasmo、ICOCA、PiTaPa等の交通系ICカードによる支払いが先行し、近年はPayPay、Line Pay等のQRコードを利用したスマホ決済が後を追って広がっている。一部の銀行は、普通預金口座に直結したスマホ決済サービスを開発してサービスを開始し、国内金融機関が共同で設置した日本電子決済推進機構は2019(令和元)年10月からデビットカードを使ったスマホ決済サービスのBank Payを開始するなど、この先、日常生活のキャッシュレス化は急ピッチで進行するものとみられる。

*『最新行政大事典』2019年10月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 長谷川清)
(有償版は本文に加え、法令へのリンク機能があります)

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