行政大事典

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【最新行政大事典】用語集―暗号資産とは

地方自治

2020.11.08

【最新行政大事典】用語集―暗号資産

はじめに

 『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第9章 金融」から、「暗号資産」を抜粋して、ご紹介したいと思います。

暗号資産

 暗号資産(Crypto Asset)は、従前、仮想通貨(Virtual Currency)と呼ばれていた財産的価値で、インターネット上のコミュニティで機能するブロックチェーンを活用して取引される。暗号資産は、改正資金決済に関する法律(令和元年6月7日、法律28号)において次のように定義されている。〔1〕物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの。〔2〕不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの(改正資金決済に関する法律第2条5)。

 暗号資産の出発点になったのが2009年に誕生した仮想通貨のビットコイン(Bitcoin)である。ビットコインは、世界各国が法律に基づいて発行している法定通貨のように銀行システムを利用することなく、インターネットに接続されている交換所を利用して送金・決済が可能な新機軸のツールとして注目され、取引が拡大するとともに価格が急騰した。これに刺激され、イーサリアム(Ethereum)、リップル(XRP)、ビットコインキャッシュ(Bitcoin Cash)、ライトコイン(Litecoin)、ネム(NEM)、リスク(Lisk)など多くの仮想通貨が誕生した。仮想通貨は、あくまでネットワークコミュニティで流通する電子データであるが、交換所を経由して法定通貨に換金できることからマネーロンダリングの手段として活用され、法定通貨の信頼を脅かす懸念も惹起された。

 これに危機感を持った各国政府は、2018年にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開催されたG20サミットの共同声明にて「仮想通貨(暗号通貨)は通貨としての特性を欠く」として仮想通貨を暗号資産と呼称を変更し、通貨性を否定した。これを踏まえて日本政府も、法令上の呼称を仮想通貨から「暗号資産」に変更すること等を定めた「改正資金決済法(情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律案)」を2018(平成30)年度通常国会に上程、同法は翌2019(令和元)年5月31日に可決、成立した。

 こうした中、2019年8月にSNS最大手のFacebook社が、ブロックチェーン技術を活用しながら主要国の法定通貨を裏付けにした1単位1米ドル相当のデジタル通貨Libraを発表した。Facebook社は、Libraを開発した目的を銀行サービスが享受できない途上諸国の人々を支援するためとしているが、金融システムのインフラが貧弱な発展途上国ではリブラの利用が広まると、自国通貨の地位が低下して為替レートによる国際収支の調整が困難になって経済運営の自立性を失う懸念がある。また米国にとっても基軸通貨であるドルの地位を揺るがす恐れもあり、各国政府は極めて慎重な姿勢で臨んでいる。

*『最新行政大事典』2019年10月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 長谷川清)
(有償版は本文に加え、法令へのリンク機能があります)

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