行政大事典
【最新行政大事典】用語集―集落とは
地方自治
2020.09.27
【最新行政大事典】用語集―集落
はじめに
『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第1章 行政一般・地方自治」から、「集落」を抜粋して、ご紹介したいと思います。
集落
「集落」とは、住戸がまとまり社会生活を営む最少単位の地区をいうが、もともとは農林水産業など生産活動における共同関係、生活における相互扶助関係や氏神等祭祀関係などを通じて歴史的に形成された、共同意識や領域認識等による結びつきの強い地域社会であり、「むら(村、邑)」と呼ばれていた。
明治中期の町村制の施行により、複数の「むら」をまとめて、行政単位としての「町・村」がつくられたことから、市町村の区域内の最小の生活圏域を「字」として位置づけ、その「字」を新設、廃止、変更したり名称を変更するためには、市町村長が議会の議決を経てこれを定め、都道府県知事に届け出なければならない(自治260〔1〕)。届出を受理したときは、都道府県知事は、直ちにこれを告示しなければならない(自治260〔2〕)。字の区域の変更等の議案は、市町村長のみが提出できる(行実昭22・9・12)こととされた。(「集落」と「字」は必ずしも同一ではないが、空間的に合致するケースが多い。)また、政策や行政サービスを検討する基礎資料となる各種の統計における「統計区」も、この「集落」と空間的に合致するケースが多い。
地域生活における基礎的な単位である「集落」は、地縁社会としての共同関係、相互扶助関係や祭祀関係などが薄まりつつあり、その一方で統治や行政サービスの対象である行政空間領域としての面が強くなっているが、歴史的に形成されてきた共同意識や領域認識等による結びつきを軽視することはできない。
2007年(平成19年)頃から、中山間部や漁村部において、過疎化に加え少子高齢化が進むなか人口が大きく減少するとともにその過半数を高齢者が占めるようになり、地域生活の維持機能が低下し、今後「集落」として存続していくことが危ぶまれる地区が増加していると指摘し、政策的対応が求められると提起した「限界集落論」が注目を浴びてきた。(本書{限界集落}の項を参照)
この問題を考えるに当たっては、単に人口や高齢化率などの量的数値だけでなく、共同意識、領域認識や地域文化なども考慮していく必要がある。また、地域生活維持機能の低下に着目すれば、問題は「限界集落」が論議されている中山間部や漁村部だけではなく、地域との関わりの希薄化や単身高齢者率の増加が進んでいる大都市及びその周辺地域においても深刻な問題となっており、地域再生が大きな課題となっている点は共通している。
「集落」は、その規模や生成過程、地域内外との関係性など千差万別であり、課題対応を検討するに当たっては、それぞれの個性・特性を考慮するとともに、地域での支え合いの機能を誰がどのように担い、また継承していくかといった観点も重要であると言えよう。
[参考文献]
・大野晃 「山村環境社会学序説 — 現代山村の限界集落化と流域共同管理」 農山漁村文化協会 2005年
・大野晃 「限界集落と地域再生」 デーリー東北新聞社 2008年
・徳野貞雄 「農村の幸せ、都会の幸せ — 家族・食・暮らし」 NHK出版 2007年
・山下祐介 「限界集落の真実」 ちくま新書 2012年