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【最新行政大事典】用語集―地方税の税率とは

地方自治

2020.07.19

【最新行政大事典】用語集―地方税の税率

はじめに

 『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第6章 国税・地方税」から、「地方税の税率」を抜粋して、ご紹介したいと思います。

1.地方税の税率には様々な種類がある。現行の地方税法が定める税率には、標準税率、制限税率、一定税率及び任意税率の4つの種類がある。

〔1〕標準税率

 地方団体が課税する場合に通常よるべき税率でその財政上その他の必要あると認める場合においては、これによることを要しない税率をいい、総務大臣が地方交付税の額を定める際に基準財政収入額の算定の基礎として用いる税率である(地税1〔1〕V)。

〔2〕制限税率

 地方団体が税率を定めるに当って、それを超えることができない税率である。

〔3〕一定税率

 地方団体が税率を定めるに当って、それ以外の税率を定めることができない税率である。

〔4〕任意税率

 地方税法において税率を定めず、地方団体に税率決定を委ねている税率である。

 注:税目により標準税率と制限税率、任意税率と制限税率の組合せがある。

2.地方税法の税率の規定例

〔1〕標準税率で制限税率のない場合

 ・不動産取得税の標準税率は百分の四とする(地税73の15)。

〔2〕標準税率で制限税率のある場合

 ・法人税割の標準税率は百分の五とする。ただし、標準税率を超える税率で課する場合においても、百分の六を超えることができない(地税51)。

〔3〕一定税率の税

 ・地方消費税の税率は百分の二十五とする(地税72の83)。

〔4〕任意税率で制限税率のない場合

 宅地開発税の税率は、宅地開発に伴い必要となる公共施設の整備に要する費用、当該施設による受益の状況等を参酌して、当該市町村の条例で定める(地税703の3)。

〔5〕任意税率で制限税率のある場合

 ・都市計画税の税率は百分の〇・三を超えることができない(地税702の4)。

3.課税自主権、即ち地方団体が地方税の税目や税率設定などについて自主的に決定し、課税するという見地から見れば、税率の設定の如何は大きな意味をもつ。

〔1〕超過課税

 標準税率とされている税目については、その税率と異なる税率を条例により設定できる。標準税率を上回って課税することを超過課税という。

 平成22年4月1日現在、超過課税実施団体は、道府県で、住民税の個人均等割30、所得割1、法人均等割30、法人税割46、法人事業税8、自動車税1、計116団体、市町村で、個人均等割3、所得割2、法人均等割404、法人税割1,003、固定資産税162、軽自動車税33、鉱産税34、入湯税2、計1,643団体となっている。

 ちなみに超過課税額は平成21年度決算で合計4198億円、うち86%をいわゆる法人2税が占めている。

〔2〕標準課税未満の課税

 標準税率未満で課税している地方団体は、平成22年度分で4団体、名古屋市は個人法人の住民税、他3団体は個人住民税である。

4.税率に関する様々な考察

 総務省に設置された「地域の自主性・自立性を高める地方税制度研究会」では「税率についての課税自主権の拡大」について様々な角度から検討を行なっているが、同研究会等の報告等によれば、

 制限税率については、その設定の意義として、地方団体間の税負担の不均衡化の抑制、国税・地方税を通じた税負担の適正化、国や他地方団体の税収に大きな影響を与えることの抑制、特定地域の経済活動への過度の負担を与えることの抑制等が考えられるが、今日では全国的に負担の均衡が要請されていた時代と異なり、歳入・歳出それぞれについて地域が独自に工夫し、これを住民が求める水準でバランスさせることが地方自治の基本であるとすれば、従来よりはその意義が低下しているのではないか、一方法人など投票権を有しない納税者の税負担が過重となることを抑制することも、制限税率を設定する意味があるのではないかという意見も紹介している。同報告では見直しの方向として、制限税率の設定は前述のような意義はあるものの、「税率の自由度を制限するものであるから、社会経済情勢の推移等も踏まえつつ、地域の自主性・自立性を高める観点から、緩和する方向で不断に検討されるべきであると考える」と 述べられている。

 また、一定税率についても、意義として、経済活動をゆがめないこと、国・地方を通じた税負担の適正化、課税技術上の問題、同一権利に対する同一負担等があげられるが、制限税率で述べられたような意見も有り、制限税率見直しと同様の方向で検討されるべきであると述べられている。

 今後、新政権の政策、さらに地域主権の確立、道州制への動向等を考えれば、一層の検討が進められていくものと思われる。

*『最新行政大事典』2018年11月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 花輪宗命)
(有償版は本文に加え、法令へのリンク機能があります)

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