行政大事典
【最新行政大事典】用語集―消費税(国内取引に係るもの)とは
地方自治
2020.07.05
【最新行政大事典】用語集―消費税(国内取引に係るもの)
はじめに
『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第6章 国税・地方税」から、「消費税(国内取引に係るもの)」を抜粋して、ご紹介したいと思います。
1 消費税の課税対象
国内取引に係る消費税の課税対象は、「国内において事業者が行つた資産の譲渡等」(消税4〔1〕)である。「資産の譲渡等」とは、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」をいう(消税2〔1〕VIII)。すなわち、消費税の課税対象は、〔1〕資産の譲渡、〔2〕資産の貸付け及び〔3〕役務の提供の3つである。
「資産の譲渡等」は、「事業として」行われるものに限られる。したがって、事業としてではない、個人間の取引(例えば、中古自動車や骨董品の譲渡など)には、消費税は課されない。
「資産の譲渡等」は、「対価を得て」行われるものに限られる。したがって、無償譲渡は、法人が資産をその役員に対して贈与する場合を除き、原則として課税対象とはならない。
「資産の譲渡等」の範囲には、代物弁済による資産の譲渡が含まれるほか(消税2〔1〕VIIIかっこ書)、負担付き贈与による資産の譲渡、金銭以外の資産の出資なども含まれる(消税令2参照)。その性質上、事業に付随して対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供も含まれる(消税令2〔3〕)。
個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費し、又は使用した場合には、消費税の課税対象となる(消税4〔4〕I)。また、法人が資産をその役員に対して贈与した場合にも、消費税の課税対象となる(消税4〔4〕II)。
消費税が課される上記の〔1〕資産の譲渡、〔2〕資産の貸付け及び〔3〕役務の提供が国内で行われたかどうかの判定が必要な場合が生じることがある。この場合の判定は、原則として、資産の譲渡又は貸付けにあっては、資産が所在していた場所であり、役務の提供にあっては、役務の提供が行われた場所である(消税4〔3〕)。ただし、船舶又は航空機にあっては、船舶又は航空機の登録をした機関の所在地であるなど、詳細な定めがある(消税令6)。
2 納税義務者
国内取引の納税義務者は、国内で課税資産の譲渡等を行う事業者である(消税5〔1〕)。
事業者とは、個人事業者及び法人をいう(消税2〔1〕IV)。
課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、消費税が非課税とされるもの以外のものをいう(消税2〔1〕IX)。
国や地方公共団体が一般会計に係る業務として行う事業、あるいは、国や地方公共団体が特別会計を設けて行う事業については、消費税の課税対象とされ、国や地方公共団体も納税義務者となる(消税60)。
人格のない社団等も、法人とみなされて、消費税の納税義務者となる(消税3)。
法律上資産の譲渡等を行ったとみられる者が単なる名義人であって、その資産の譲渡等に係る対価を享受せず、その者以外の者が対価を享受する場合には、その資産の譲渡等は、その対価を享受する者が行ったものとして、消費税の納税義務者とされる(消税13)。
信託の受益者は、信託財産に属する資産を有するものとみなされ、かつ、信託財産に係る資産等取引は受益者の資産等取引とみなされ、消費税の納税義務者となる(消税14)。また、法人課税信託の受託者は、各法人課税信託の信託資産等及び固有資産等ごとに、それぞれ別の者とみなされ、それぞれの立場で消費税の納税義務者とされる(消税15)。
3 非課税
国内において行われる資産の譲渡等のうち、次のものは、消費税は非課税とされている(消税6〔1〕、別表第1)。
〔1〕土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け
〔2〕有価証券及び外国為替等の譲渡
〔3〕利子を対価とする貸付金等の資産の貸付け、信用の保証としての役務の提供等
〔4〕郵便切手類、地方公共団体の証紙、物品切手等の譲渡
〔5〕国又は地方公共団体等が法令に基づき登記、検査、公文書の交付及び裁判等の事務に係る役務の提供
〔6〕健康保険法等の規定に基づく療養の給付等
〔7〕介護保険法等の規定に基づくサービス等
〔8〕医師等による助産
〔9〕埋葬料又は火葬料
〔10〕身体障害者用物品の譲渡等
〔11〕教育に関する役務の提供のうち、授業料、入学金、施設設備費、入学試験の検定料、在学証明等の手数料
〔12〕教科用図書の譲渡
〔13〕住宅の貸付け
4 課税標準
課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額である(消税28〔1〕)。
対価の額とは、対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額をいう。課税資産の譲渡等に課されるべき消費税額及び地方消費税額は、含まない(消税28〔1〕かっこ書)。
法人が資産をその役員に譲渡した場合に、その対価の額が譲渡の時の価額に比して著しく低いときは、その価額に相当する金額が、その対価の額とみなされる(消税28〔1〕ただし書)。また、法人が資産をその役員に対して贈与した場合には、その贈与の時における資産の価額に相当する金額が、対価の額とみなされる(消税28〔2〕II)。
個人事業者が棚卸資産又は棚卸資産以外の資産で事業の用に供していたものを家事のために消費又は使用した場合には、その消費又は使用の時における資産の価額に相当する金額が、対価の額とみなされる(消税28〔2〕I)。
5 税率及び税額控除
消費税の税率は、6.3%である(消税29)。
ただし、令和元年10月1日以後の消費税の税率は7.8%に引き上げられる予定である。
なお、消費税の標準税率7.8%への引き上げと同時に、
〔1〕飲食料品の譲渡(食品表示法に規定する食品(酒税法に規定する種類を除く)の譲渡をいい、外食を含まない。)
〔2〕定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡
については、6.24%の軽減税率が適用される。
*『最新行政大事典』2019年7月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 花輪宗命)
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