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【最新行政大事典】用語集―大阪都構想

地方自治

2020.05.30

【最新行政大事典】用語集―大阪都構想

はじめに

 『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第1章 行政一般・地方自治」から、「大阪都構想」を抜粋して、ご紹介したいと思います。

大阪都構想とは

 

 大阪都構想は、大阪府と指定都市である大阪市等を、東京の都区制度をモデルに再編し、新たな大都市制度の構築により大阪の再生を目指した構想である。平成22年1月に当時の橋下徹大阪府知事が提唱したもので、同年4月には同知事が代表となり、同構想の実現を目指す地域政党「大阪維新の会」が設立された。その後、同会は関西の地方議会で議席を拡充、平成24年9月に全国政党「日本維新の会」が設立された後は大阪総支部となる。

背景

 

 大阪では100年論争と言われる府と市の長年の対立があり、近年では、「府市統合による大阪州(グレーター大阪)」(関西経済同友会2002年)や「大阪新都機構」(大阪府地方自治研究会2004年)、「スーパー指定都市構想」(大阪市大都市制度研究会2006年)など、府市の制度改革をめぐる提案が続いた。大阪都構想はこうした議論や提案を踏まえ生まれた。

新しい大都市構想

 

 大阪維新の会の「設立の趣旨」では、「広域自治体が大都市圏の成長を支え、基礎自治体がその果実を住民のために配分する」新たな地域経営モデルを実現するとしている。同構想は次の3つの要素である集権化、分権化、民営化からなる。〔1〕集権化-府と指定都市の統合により二重行政を是正し、大阪都が交通、経済など広域的・長期的な都市戦略を強化、実行する。〔2〕分権化-巨大な指定都市を人口30万人程度の特別区に分割、公選区長と議会を擁し、中核市並みの権限を持つ基礎自治体によって地域密着型の住民サービスを展開する。〔3〕民営化-水道、地下鉄、バス、ごみ処理などの広域公共サービスを別法人化し、民営化する。

大都市地域特別区設置法の成立

 

 平成23年11月の大阪市長選では、大阪都構想実現のために府知事を辞した橋下徹氏が同構想に反対する現職の平松市長を退け当選、同時に行われた大阪府知事選では大阪維新の会の松井一郎幹事長が当選した。このダブル選挙以降、大阪維新の会は関西での議席増を背景に、大阪都構想実現に向けた法制化を国会各会派に働きかけるとともに、国政進出を目指した動きを強めた。その結果、各会派から法案が提出されたが、最終的に一本化が図られ、平成24年7月に与野党7会派の共同提案による法案が国会に提出、同年8月、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」(大都市地域特別区設置法)が可決、成立した。

 この法律は、「地域の実情に応じた大都市制度の特例を設ける」ため、「道府県の区域内において関係市町村を廃止し、特別区を設けるための手続き並びに税源の配分及び財政の調整に関する意見の申出に係る措置」(同法第1条)を定めた手続法である。大阪都構想実現の後押しをするために制定されたが、大阪だけでなく、人口200万人以上の指定都市(隣接する市町村を合わせた指定都市を含む)が対象となる。

大阪都構想実現への動き

 

 こうした国政での動きと並行して、平成27年4月の「大阪都の実現」に向け、具体的な制度設計についての協議が始まった。平成23年12月には府と市による「大阪府市統合本部」が設置され、平成24年4月には大阪府知事、大阪市長のほか、府及び市議会の主要会派議員で構成される「大阪にふさわしい大都市制度推進協議会」が発足した。前者の統合本部では、広域行政の一元化や経営形態の見直しなどの大都市戦略の検討を行い、後者の協議会は、平成25年2月、地方自治法及び大都市地域特別区設置法に基づき設置された「大阪府・大阪市特別区設置協議会」に引き継がれ、法定の特別区設置協定書を作成するため、特別区の区域の再編、府市の行財政の分担などについて協議された。協定書は府と市の議会で議案として承認された後、住民投票による同意を得る必要があり、この住民投票は平成27年5月に実施された。

住民投票の結果

 

 平成27年5月17日に住民投票で問われた「大阪都構想」は、平成29年4月に現行の大阪市を廃止するとした。まず現在24の行政区を「北区」「湾岸区」「東区」「南区」「中央区」の5つの特別区に再編する、大阪市長ならびに大阪市議会を廃止し、各特別区に区長・区議会を設置する、大阪市の仕事のうち教育や福祉などを特別区に、都市計画やインフラ整備といった広域行政を府に移すと定めていた。

 有権者数は2,104,076人で投票率66.83%。そのうち賛成は694,844票、反対は705,585票で「大阪都構想」は否決された。10,741票という僅差であった。政党別にみると、賛成は大阪維新の会(維新の党)であり、反対は自民党府連、自民党市議団、公明党府本部、民主党府連、共産党大阪府委員会、社民党府連といった状況であった。この結果を受けて、橋下徹大阪市長は辞任の意向を表明し、また大阪府・大阪市特別区設置協議会は正式に廃止された。

 その後、平成27年11月の大阪市長選挙で、大阪都構想の実現を訴える吉村洋文が約60万票(得票率56.4%)をとって当選。大阪維新の会は大阪都構想の再挑戦を目指すこととなった。平成31年9月に住民投票を実施するとの案も浮上している(平成30年1月現在)。

他県の動き

 

 同様な構想として、平成23年の愛知県知事選と名古屋市長選に絡み、大村秀章愛知県知事と河村たかし名古屋市長が愛知県と名古屋市を一体化する中京都構想を提唱した。また、同時期に新潟県と新潟市が一体化する新潟州(都)構想も、泉田裕彦新潟県知事と篠田昭新潟市長から発表されている。これは新潟県全体の行政を州が行い、新潟市は分割して特別区を設置するというものである。しかしいずれもその構想の実現化の動きは沈静化している(平成30年1月現在)。

 

〔参照〕「大都市地域特別区設置法」の項

*『最新行政大事典』2019年7月より。(NPO法人 フォーラム自治研究 嶋津隆文)
(有償版は本文に加え、法令へのリンク機能があります)

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