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J-LIS編集部

1月末から従業員の 約9割・4,000人が在宅勤務を実施! GMOインターネットグループに聞く テレワーク導入の秘訣(月刊J-LIS2020年5月号より)

NEW地方自治

2020.04.28

1月末から従業員の 約9割・4,000人が在宅勤務を実施!
GMOインターネットグループに聞く テレワーク導入の秘訣
月刊「J-LIS」2020年5月号


※この記事は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊J-LIS」2020年5月号に掲載された記事を使用しております。なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大や緊急事態宣言発令に伴い、多くの企業や自治体でリモートワークやテレワークの導入が喫緊の課題となりました。そうした一方で、「自治体での利用イメージがわかない」「どう始めればよいかわからない」といった声もよく聞かれます。

 そこで、今年1月末という非常に早い段階で、国内従業員の9割弱にあたる約4,000人が在宅勤務体制に移行したGMOインターネットグループの中核である、GMOインターネット株式会社災害対策本部の福井敦子取締役と、同社システム本部情報システム部の新藤隆造部長にテレワーク導入・活用のポイントやメリットについて伺いました。

東日本大震災を受け、在宅勤務の訓練を毎年実施

 インターネット黎明期である1995年にインターネット事業を開始したGMOインターネットグループは、GMOインターネット株式会社を中心に上場9社を含むグループ114社から構成され、約6,000人(2019年末現在)の従業員を抱えています。同グループでは、インターネットインフラ事業を中心に、インターネット広告・メディア事業、インターネット金融事業、仮想通貨事業と幅広いビジネスを世界22か国以上で展開。特にインフラサービスの複数が国内で高いシェアを誇り、そのサービスを利用する法人・個人の顧客は1,126万人を超えています。

 またGMOインターネットグループでは、その事業の性質上からも緊急時におけるサービスの継続・安定運営の実現を重要視しており、2011年3月11日の東日本大震災発生以降、BCP(事業継続計画)の構築に積極的に取り組んできました。その象徴的な取り組みが、毎年定期的に実施している全従業員による在宅勤務訓練です。訓練では、感染症などによる緊急事態・自然災害が発生したことを想定して、災害対策本部を立ち上げ、全従業員に一斉に通知して在宅勤務体制へと移行します。このようにして、セキュアな環境下で社内システムにアクセスする手段の整備や、電話・インターネット・衛星回線等を介した複数の手段を用いた社内外のコミュニケーションを平常時より確立してきました。

国内での感染者発生を受けて すぐに災害対策本部を設置

 ここでは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に備えて、GMOインターネットグループが具体的にどのような対応をしたのか、その経緯からみていきます。

 まず、中国の武漢に渡航した男性から国内で初めて新型コロナウイルスが検出された2020年1月16日、その日のうちに災害対策本部を立ち上げて、全従業員に向けた注意喚起メールを配信。災害対策本部は、熊谷正寿代表取締役会長兼社長・グループ代表と2人の副社長をトップに据えた小さな組織で、意思決定が素早く行える体制でスタートしています。

 福井取締役は、「1週間後の1月24日より春節を迎えることからも、中国など新型コロナウイルス感染症の発生地域から大勢の外国人が訪日することが予想されるため、災害対策本部を立ち上げて対応していくこととしました」と振り返ります。

 1月20日には感染症発生地域への渡航禁止および注意喚起メールを配信し、中国とタイ全土、韓国のインチョン(仁川)地区からの帰国者を対象に在宅勤務を指示しています。そして1月26日に、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に備えた在宅勤務体制への移行を全従業員向けに通知するとともに、対外的にも発表し、翌27日より東京都渋谷区、大阪市、福岡市の拠点に勤務する従業員4,000人を対象にした在宅勤務体制を開始しました。また、それ以降の海外出張は原則取りやめとし、海外出張中の場合には速やかに帰国し、帰国後2週間は在宅勤務とすることを命じています。

 その後は在宅勤務を継続するとともに、業務上やむを得ず出社が必要な場合のみ、感染予防対策を講じた上で一部出社を認める体制をとっています。出勤する場合にも、公共交通機関の利用を禁止し、代替として自家用車やタクシーの利用を許可することに加えて、外出時や来客対応時には、備蓄品より配布されるN95マスクや手袋などの「緊急時対策キット」を着用することとしました。昼食についても外食は禁止とし、社内カフェを使用するよう指示しています。また、1月27日以降、全従業員の勤務状況の把握は、安否確認ツールを用いて行っていると、福井取締役は話します。

(在宅勤務の様子)

 2月10日からは、より長期化に備えた体制へと移行することを決定。具体的には、在宅勤務体制を継続するとともに、業務上やむを得ず出社が必要な従業員には、身を守るための感染予防グッズを配布して通勤時における感染リスクを回避するほか、執務スペースへの入室前に手洗い・うがい・検温の「入室前チェック」を行うなど、出社時・在社時の予防策を徹底することで一部出社を認める体制となっています。

 「やむを得ず出社する従業員」については、本人の体調・健康状態が良好であることを前提として次のように定義しています。
 ①法令対応や顧客対応など、業務内容により出社が必要な場合
 ②在宅での業務の遂行が困難で、所属するグループ企業・組織が出社を許可した場合

 ただし、糖尿病などの持病があったり、妊娠していたりするなど、十分な健康配慮が必要な従業員、および同居する家族に同様の人間がいる場合には、健康状態を問わず出社の対象外としています。

とにかく会社に“つながる”ことと セキュリティを重視

 GMOインターネットグループでは、在宅勤務を行う従業員が会社のネットワークに接続してパソコン(PC)で作業する方法として、大きく分けて3つの形態を採用しています。

 1つは、会社支給のノートPCを自宅に持ち帰り、SSL-VPNで暗号化された回線を介して社内ネットワークに接続する形態です。この場合には、社内のファイルサーバー等に置かれた各種業務ファイルの処理が、暗号化など情報漏洩対策の施された会社支給のPC上で行われることになります。

 一方、会社でデスクトップPCのみを使用している場合には、自宅にある個人のPCから①リモートデスクトップゲートウェイを利用して社内の自席にあるPC、もしくは②会社側で用意したサーバーベースのVDI(デスクトップ仮想化)で提供される仮想デスクトップに接続します。この2つのケースでは、会社のPCやリモートデスクトップから個人のPCへは画面転送だけが行われ、業務書類などのデータを個人PC側に保存できない仕組みです。

 新藤部長は、このネットワーク接続について、「とにかくまずは“つながる”ことに特化して、そこにいかにセキュリティを確保するかに重きを置いています。またクライアント環境については、働き方改革を推進していく中で、物理デスクトップから仮想デスクトップへとシフトするプロジェクトをちょうど昨年から進めているところで、現在3分の1ほどが仮想デスクトップ環境へと移行しています」。

 在宅勤務における社内でのコミュニケーション手段としては、テキストベースではビジネスチャットツールを使用し、映像・音声ベースではWeb会議システムが中心となっているとのこと。後者については、今回の在宅勤務体制になる以前から、地方拠点との連携や海外出張時を含めて利活用されており、かなり浸透しているといいます。

9割近くの従業員が在宅勤務を プラスに評価

 在宅勤務体制へと移行してから約1週間が経過した2月3日、GMOインターネットグループでは全従業員宛に在宅勤務状況に関するアンケートを送付しました。その結果、2,401名(うち在宅勤務対象者2,218名)から回答を得、87.2%にあたる2,105名が今回の在宅勤務体制について「とても良かった」もしくは「良かった」と肯定的な評価をしています。また、「在宅勤務体制となっても自身の業務に支障はなかった」と考えている従業員の割合は70.1% にのぼりました。

 一方、業務に支障があったとする約13%の回答の内訳を見ると、職種別では「一般事務・ 管理部門・営業管理部門」が、グループ会社別では「金融系グループ各社」が目立って多くなっています。また、支障の内容は、「作業の環境面(設備面)」と、「コミュニケーション(意思疎通)」「業務面」「営業・対外活動面(対お客様)」 に大きく分けることができます。このうち設備面については、「リモート環境が遅い/アクセスできない」「椅子・机とPCサプライがないことによる作業効率低下」、コミュニケーション面では「コミュニケーションの減少」、業務面では「紙ベースの業務に支障」「業務上、在宅では対応が難しい」といった課題が浮き彫りになりました。

 この結果について、新藤部長は「在宅勤務体制の重要なバックボーンであるネットワークについては、『問題なく利用できている』との回答が8割未満に留まった点は、まだ改善の余地があると見て取り組んでいます。ただ、自宅のネットワーク環境というのは個人によって異なってくる上、マンションでは共有回線を使っていて変えようがないなど難しい側面もあります。また、社内のネットワークが自宅から利用できない理由として『対応するデバイス(ノートPC等)がない』というコメントが上がっていますが、ここは順次PCを貸与しているためすぐに改善できると見ています」と話します。

 続けて福井取締役は、「契約書や請求書をはじめ、社内ではビジネス書類等の電子化を徹底してはいるものの、対外的にやり取りする関係上、どうしても紙ベースのものが残ってしまいます。業務上そうした書類を多く扱う職種・部門ほど在宅勤務に支障を感じるでしょう。この点に関しては、今回の新型コロナウイルス感染症感染拡大への対応で全国にペーパーレス化の流れが加速していることなどから、改善が進むと期待しています」。

 そのほか、アンケートの自由記述欄には様々なコメントが寄せられました。以下が代表的なものです。

 ・朝晩の移動が想像以上に体力の負担になっていると改めて感じた。

 ・週末夜の場合、お客様への事前周知がしづらいため、グループ各社においてもプレス等の会社としての正式見解を提示し、普段の業務が行える環境であることをお伝えすることで安心していただく必要があると感じた。

 ・家庭内で仕事をする場合の環境整備や家族との話し合いの必要性を感じた。

 ・遅延が多い公共交通機関を利用する部下が 遅延ナシで出社できるので、とても喜んで いた。また、自分は定時に上がれて、すぐに育児ができるのがとても良かった。

 ・管理職のためメンバーの就業状態を直接目で確認できない不安がある。Web会議システムを利用し顔を見ながらコミュニケーションは取れるが、決まった時間だけになる。

 「比較的BCP感度が高いグループであるという認識が従業員の間に根付いていると感じられました。アンケート以外でも、総じて『自分たちの安全を第一に考えてくれてありがたかった』といった声が多く聞かれるのは嬉しいですね」と福井取締役は、アンケートから今後の手ごたえをつかんでいます。

(在宅勤務体制に入ってからの社内の様子)

テレワークの成果と課題

 これまで全面的な在宅勤務を実施してきた中で浮き彫りになった課題として、福井取締役は自身の体験から設備面を挙げます。

  「オフィスで働いていた頃より腰痛を感じることが増えました。やはりオフィスのデスクや椅子といった働くためのファシリティと、ダイニングにあるテーブルや椅子など家でゆっくりと過ごすためのファシリティというのは違うものだというのを実感しています。今後の在宅勤務の定常化に向けて、出社人数が減少した分、浮いたオフィスの電気代や家賃、従業員に支給しているランチ代などを還元することを決定したことに加え、家のファシリティや在宅での仕事のやり方などを考えていくための体制整備についても議論しているところです」。

 ICTに関しても、課題となるのはやはり設備面のようです。新藤部長は次のように話します。「アンケートでは『ノートPCの画面では小さいので大きなモニターが欲しい』といった声も見受けられますね。また、これは課題というよりも苦労した点ですが、今回、個人所有のPCも利用対象としなければならなかったので、例えばサポートが終了したWindows7を使っていたり、すでにサポートが終了しているMacOSやLinuxを使っていたりといった際に、問題に一件一件対処しなければならず、全体的に安定接続できるまでには2週間ほどかかりました」。

 一方、全面的な在宅勤務実施により得られた成果について、新藤部長は、「当社にはエンジニアをはじめとした“つくる人”が多く、在宅だとより集中できるといった声が非常に多くあがっています。加えて、在宅勤務ではあくまで成果で評価されるため、マネジメント面のストレスから解放されたといった声も数多く寄せられています。このように、働く上での問題が技術的な側面にほぼ限られてきているのは、とても大きな成果だと言えるのではないでしょうか」。

 福井取締役も次のように述べます。「まず、会社としての立場から言うと、業績的に問題なかったことが大きいです。次に従業員に関しては、感染が全国的に拡大していく中でも不安な思いをあまりせずにいられることや、通勤時間がなくなったことを喜んでくれている声を多く耳にして、在宅勤務体制に移行してよかったと強く感じています」。

 東日本大震災以降、毎年訓練として実践してきた在宅勤務を全面的に実践するようになって約2か月半を経た今、GMOインターネットグループではこれまでの順調な経緯と効果を検証できたことを受けて、新型コロナウイルス感染症対策が終了した後にもリモートワークを継続していくことを決定しています。

 「在宅勤務を組み合わせながら、より生産性を上げつつ、ワークライフバランスも実現できるグループへと変化していけるのは、大きな果実だと捉えています」と福井取締役は力強く語ります。

自治体もまずは第一歩を

 制度面やICT面などにより、多くの自治体にとっては、在宅勤務をはじめテレワークを導入する際の障壁が一般企業よりも高いといえます。このことについて、新藤部長は、今回は従業員の命にもかかわることから必然的にできたと前置きしながら、「オフィスの外でもきちんと仕事をするだろうかといったマネジメント視点で考え出すとキリがないので、まずは安全にできるところからやってみることでしょう」とこれから始める組織にアドバイスします。

  続けて福井取締役も、「まずは紙ベースの文化をデジタルベースに変えて効率化するだけでも大きな効果が得られるはずです。マイナンバーカードの普及率が100%に近づくほど、ICT化による恩恵が受けやすくなるでしょうからまずは一歩を踏み出して、今後に向けて地道に取り組んでいくことが大事だと思いますね」。


「長期化する在宅勤務における課題について」アンケート結果から
実施日:2020年3月4日(水)~5日(木)
対象者:GMOインターネットグループの全パートナー(従業員)
https://www.gmo.jp/news/article/6713/





 *「感染しない!広げない! 自治体業務に役立つデジタルサービス」もあわせてご覧ください。

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