【自治体の皆様へ】 日々情報が変化する事態において、市民へわかりやすい情報発信をするための3つの心得

NEW地方自治

2020.05.14

【自治体の皆様へ】 日々情報が変化する事態において、市民へわかりやすい情報発信をするための3つの心得

 現在、新型コロナウイルス感染症対策は、まさに情報の洪水状態が続いています。感染症対策に関連して行政に寄せられる情報ニーズもまた、自分や家族が罹患した場合の窓口から、休業協力金の申請方法まで非常に多岐にわたります。

 ここでは、2015年から2018年にかけて電通(現在は退社、独立)から内閣広報室に出向、2018年4月から「つくば市まちづくりアドバイザー」(広報)として活躍するなど、国と地方で情報発信に関わってきた大瀬良 亮(おおせら りょう)氏に、非常時における「行政」発の情報発信が成功する3つの心得について解説いただきます。(編集部)

行政なのに「ユニバーサル」に逆行?!不親切なウェブ設計

 日々刻々と状況が変わるコロナ時代を迎える中で、政府のみならず、県や自治体もその対応に追われる毎日を送っているものと思います。

 行政の情報発信については、部署ごとの縦割りになっていて、自治体のウェブサイト内に部署ごとに存在するページにPDFをペタッと貼ることで「情報発信しています」ということで広報完了ということになりがちです。いくら「自治体向け」・「専門家向け」とはいえ、あまりに多すぎる文字量――いざウェブサイトのページにリーチしたところで、どこに、何の情報があるのかわかりません。もっともユニバーサルでなければならない行政のウェブデザインだけが、世の中のウェブデザインから取り残されているという悲しい事実に直面します。

 私には、2015年から2018年にかけて広告代理店から内閣広報室に出向していた期間がありました。着任して1年経った2016年4月に、熊本地震は突然訪れます。1つ目の地震のときはちょうど室の歓迎会をやっていたのを覚えています。緊急対応のスタッフが1人、2人と慌ただしく帰り、その日の夜から、室は不眠不休の日々がスタートしました。そのときの経験が、今また皆様に役立つのではと思い、まとめることにしました。

【執筆者が手掛けたウェブサイト】
熊本地震被災者の皆さまへ 政府応援情報 | 首相官邸ホームページ

熊本地震に関する首相官邸ホームページを見る

外出時でもアクセスできるリモート体制を構築する

 これは内閣広報室において当初から整備されていた体制なのですが、室には「日直」があり、24時間緊急事態に駆けつけられる状態を作っています。かつ駆けつける時間さえない時は、その場で作業ができるスーパーリモート体制が整っていました。北朝鮮がミサイルを打った時も、災害の状況に変化が会った時も24時間対応できる体制で、かつリモートも可能という状況をまず作ることは緊急事態においてこそ力を発揮します。

 「通勤を控えてほしい」とお願いをする行政側が、緊急事態宣言が出た今も通常出勤(あるいは時差出勤)を行っていることが多いと聞きます。しかし、いま行政に必要なのはこのような「令和時代に合わせたリモートワーク整備を」ということに尽きると思います。

 こうしたリモートワーク体制において緊急事態に対応していることを前提にしつつ、さらにポイントとなることを「一元化した情報をニーズに合わせてカテゴリ化する」「紙に落として配布できる仕組みをつくる」「SNSで災害専用のアカウントを作り発信する」の3つの心得に分けて説明していきたいと思います。

【心得 その1】 一元化した情報をニーズに合わせてカテゴリ化する

 まず当時やったのは、情報の一元化です。各部署がバラバラに収集した情報をバラバラにあげるのではなく「ここを見れば全て必要な情報がまとまっている」というポータルページを作ることです。ここでは各部署から情報を吸い上げ、正確で迅速な情報を発信することが肝要です。通常にない情報連絡網を構築となるのですが、これがまた企業以上に行政では難しく、トップのリーダーシップにかかります。トップの強いオーソリティさえあれば、指示に従順なのは行政のいいところでもあり、すぐ形になります。

 現在、地方自治体のページを覗くと、多くの自治体でコロナウイルスに関する情報を1つのページにまとめているところまではいたっているようです。すなわち、対策本部ができ上がり、特設ページを設けて、情報をまとめてはいます。しかし、ここからが問題で「時系列順」に縦にズラっと更新してしまうのがほとんどなのです。これでは見つけたい情報を見つけるストレスが止まりません。この状態にもかかわらず、「わかりやすくまとめています」(!)と広報しているのが現状です。

 最新情報が更新されているのは、当然のことです。それ以上に、人々がこのウェブサイトにたどり着いたのにはワケがあります。そのワケとはどういうものでしょうか。「休業手当」なのか「家賃保証」なのか「罹患したと思ったらどうすればいいか」なのか。このように目的別(ワケごと)にカテゴライズしてこそ、ユーザーストーリーベースの(サイト訪問者の情報収集の順序に沿った)ウェブサイトになります。

令和元年台風第19号等で被災された皆様へ | 首相官邸ホームページ。

 その点でいえば、上掲の「台風19号」の情報ページでは、「ファーストビュー」(サイト訪問して最初にみえる場所)からスクロールしてすぐの位置に、「住まい」「お金」「医療・健康」などのカテゴリを色で分け、必要な情報をみつけやすくしています。ちなみに、私自身も熊本地震に関する情報発信の際には、このカテゴリの別を作り、実際に分類するのに徹夜しました。相当苦労する作業でしたが、その苦労が、国民の皆さんへの理解につながるので、とても達成感のある作業でしたし、一方でこれでわかるのかと不安もありましたが、今も続いているならば、少しは当時の苦労も報われます。

 さらにいえば、「台風19号」の情報ページにおいて、文字ではなく画像で「一瞬でわかる」工夫を用意しているのも重要です。このようにわかりやすいウェブサイトを作るにはピクトグラムの活用が有効です。行政には「画像は著作権がある、お金がかかるから使えない」という誤解がありますが、今やインターネットにはフリー素材があふれていて、それを利用するだけでも、サイトは劇的に見やすくなります。当時利用したのは、こちらのウェブサイト「HUMAN PICTOGRAM2.0」です。ぜひ利用規約を確認した上で、活用してみてください。 

ピクトグラム(絵文字・視覚記号:情報や注意を示すために表示される)を並べたイメージ。

【心得 その2】 紙に落として配布できる仕組みをつくる

 「情報を一元化し、カテゴリ化しオンラインで発信する」ところまで行けば、いったんはゴールです。オンラインにアクセスできる人たちは、この段階が達成されていれば、ある程度わかりやすく情報を収集できます。自治体のウェブサイトでできる限界と戦いながら、最低限のデザインを施すだけで喫緊の情報収集を大いに支援できるとすれば、できることはやったほうがいいのは明らかでしょう。ぜひ多くの自治体にトライしていただきたいです。ただし、実際にはオンラインにアクセスできない人がいて、「オフライン」メインの情報収集を行う方々もたくさんいることを忘れてはならないのも、自治体広報の難しいところです。

 新聞や、回覧板、チラシやポスターのほうが普段目に入る方々も多いでしょう。オンラインだけで伝えたい情報を伝えるのは難しく、特に地方はその傾向が強くあります。熊本地震の際は「避難場所」にどうやって情報を届けるかという課題がありました。テレビを置いてデジタルサイネージにしながら、各避難場所に掲載されている避難場所に掲示、配布できるオフラインの情報発信まで構築してあげることも、行政の緊急事態広報に不可欠なことを忘れてはいけません。

 当時の私が作ったのは、上記のような現地で印刷して配布できる冊子型PDFでした。つまり、表紙があり、目次があり、中身があるもので、「ホームページの内容を冊子で配れる」ようデザインに落とし込みました。全部Keynote(要はパワポ)で作っています。画像は確か全て上記の「HUMAN PICTGRAM2.0」にお世話になったと記憶しています。色分けもホームページと同じにしています。こちらの制作も1人で背負ってしまったので相当時間がかかりましたし「フォントの優しさ」「フォントの大きさ」「色使い(時間の切迫する中で「この色使いはユニバーサルか」みたいな指摘を受けつつ試行錯誤しながら)」には気を使いました。また、Yahoo 電子書籍に無料掲載するなどの試みも行いました。最新情報の発信はオンラインにかぎりますが、携帯電話の充電もままならない場所においてオフラインは重宝します。

 さらに、毎日熊本の避難場所に届く「政府からのお知らせ」も、あえて学級通信のような「ちょっと古く感じるデザイン」で制作した一枚もののポスターも用意しました。見慣れているデザインで、何の情報が政府から届いているかわかる形で発信するです。こちらはデザインは二の次で、避難場所に届けたい情報を届けること優先で発信しました。当時現場でご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

 なお、ここで大切なことを1つ思い出しました。行政あるあるのNGパターンなのですが、こうした「すぐ読んでほしい」内容を住人の皆さんに広報するときは「何を言いたいのか」「何をして欲しいのか」を明確に書いたほうが、しっかりと伝わります。次の2つの表現をみれば、効果の違いは誰の目にも明らかだと思います。

NG: 臨時休業期間終了後の学校の対応について
   (↑何を言いたいのかわからない)
GOOD:臨時休校期間終了後もご家族の判断で通学しなくてOKです
   (↑つまり言いたいのはこういうこと)

 

 もう1つ、今回の新型コロナウイルス関連の発信として、良い事例を示したいと思います。それが次に示すポスターです。つくば市は日本語と英語で何を言いたいかを明確に示していると思いませんか。こちらが今市内に掲示されているようです。このポスターであれば、赤字と黒字で緊急感も伝わります。とにかく伝えたいことは明確にがコツになります。

緊急事態宣言発令に伴う つくば市の重要なお知らせ(2020年4月)の事例。

【心得 その3】 SNSで災害専用のアカウントを作り、発信する

 最後に、こうした情報を発信するには、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の専用アカウントを設けることをお勧めしたいと思います。当時はTwitterをそのメインにしましたが、今はLINEも重宝します。

 たとえば、首相官邸では専用アカウントを設けて、官邸からの情報を迅速に発信しています。私の出身地である長崎県では、医療政策課というセクションがSNSで日々情報をアップデートしています。またLINE株式会社が各自治体にサポートアカウントを提供しているようです。こういったプッシュ型の(受け身のユーザーにも積極的に伝えていく)情報発信もするところまで構築して、ようやく広報体制が整ったと言えるかと思います。

情報をまとめるプロフェッショナルが必要

 単に、PDFをウェブサイトの奥底に格納するのではなく、「どうやってまとめて、どうやってリーチするか」まで情報発信のルートをデザインすることが広報のあるべき姿ということも申し上げておきたいと思います。市民目線に立ち、市民の悩みに合わせた広報をデザインするには、相応の専門知識と経験の蓄積によって得られる感覚(センス)が必要で、行政内にこういった感覚(センス)を持つ人はけっして多くありません。

 ひとつ言えるのは、「餅は餅屋」ということです。庁内の人材だけで無理をせず、プロフェッショナルに頼むことも生産性をあげる上では大事な判断かと思います。多くの自治体には、広報アドバイザーが外部から入っているので、ぜひ今こそそういった外部アドバイザーを駆使して、正しい情報を、正確に、そしてわかりやすく届けることに務めてもらいたいと思います。

 なお、私はnote(ウェブサービス)を通じて、行政側からの情報発信について、さらなる考察(コロナ下における、行政PR事例8選)を公開しています。ぜひ本稿と併せてご覧ください。

 

執筆:大瀬良 亮(おおせら りょう)
Founder, Evangelist(起業家・エヴァンジェリスト)

1983年、長崎県生まれ。2007年に筑波大学を卒業後、電通入社。在京若手県人会「しんかめ」を主宰、原爆の実相を伝える「Nagasaki Archive」発起人として、文化庁メディア芸術祭に出展等。2015年から内閣広報室に出向し、SNSを中心に情報発信の整理に関わる。2018年4月から、つくば市まちづくりアドバイザー(広報)に就任。2018年11月、「世界を、旅して働く。HafH」をリリース。2019年9月、電通退社。

*本稿は2020年4月に執筆者がnoteで発信した記事を当サイト向けに編集したものです。)

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