時事問題の税法学

林仲宣

時事問題の税法学 第12回 配偶者控除

地方自治

2019.07.05

時事問題の税法学 第12回

配偶者控除
『月刊 税』2016年10月号

配偶者控除改廃

 消費税の軽減税率論議の影響で先送りされていた所得税・住民税における配偶者控除の検討が与党税調で始まった。来年度の税制改正の目玉とされている。

 この配偶者控除の改廃について最初に考えさせられたのは、全国婦人税理士連盟(現在の全国女性税理士連盟)が編集・出版した「配偶者控除なんかいらない!?」(日本評論社・平成6年)を読んだときだから、四半世紀近く前のことになる。同書は配偶者控除が女性の社会進出を阻害していると指摘していた。

 今般の改正目的は、いうまでもなく安倍政権が掲げた、「働き方改革」の一環であり、女性の働き方を制限していると従来から議論されてきた配偶者控除を見直し、女性の社会進出を後押しする狙いがある。

 与党幹部は、「女性の社会進出が強く望まれる時代になっていることから、配偶者控除の見直しは、税制改正の一つの柱となる」と述べ、社会や家族のあり方が変化する中で見直しの必要性を強調した、と報じられている。共働き夫婦には夫婦控除などの新制度の導入も視野に入っているともいわれる。

 しかし、専業主婦世帯によっては、税負担の増加につながるという反対論もある。慎重な対応を望む声も政府・与党内にあり、調整は難航するという指摘もある。いわゆる103万円の壁が崩されるか興味深い。またこの控除対象配偶者の有無が、家族手当等の算定基準としている企業もあり、給与体系にも影響を及ぼす可能性もある。

 確かに、コンビニエンスストア、ファミリーレストラン、ファストフード店はもちろん中小零細企業でもこの103万円の壁に泣かされてきた経営者や管理者は多い。そのため、受給者名を借名、仮名などの手段で、分散するという不正行為も横行していたが、このような借名、仮名による給与計算は、マイナンバー制度の普及により今後は、消滅するだろう。

正規雇用と非正規雇用

 もっとも103万円の壁がなくなっても、女性の社会進出が促進されるか疑問もある。ここでいう社会進出とは、家庭間における経済格差の解消ではなく、男女間の給与格差の是正がなければ、女性の地位向上はない。毎年、国税庁が発表する民間給与統計をみれば男女間の格差は歴然としている。

 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律、いわゆる男女雇用機会均等法(昭和47年7月)は、平成11年4月の改正で女性差別の禁止を定めた。留意すべきことは、この改正時には、主婦のパートや学生アルバイトはともかく、雇用関係において、非正規雇用による就労という考え方は、日常的ではなかったはずである。

 女性進出を促進するための配偶者控除廃止の提言は、当初からパート雇用の拡大が目的であったわけではない。女性が進出すべきは、男女協働・共働の社会であり、当時は、いわば正規雇用が当たり前の話だった。

 予定される配偶署控除廃止が、女性の社会進出を促進する施策とすることで、パート主婦の就業時間が広がりやすいことは理解できる。しかし結局、非正規雇用における女性就業者が拡大するおそれもでてくる。もちろん非正規雇用であっても女性の社会進出が図られれば良しとすべきかもしれない。

 ただ、既婚女性の就労には、「働きたい」のではなく、「働かざるを得ない」場合も少なくない。一方、大学卒業後、総合職として就職した女性であっても結婚、出産を期に専業主婦として家庭に専念する人も多い。「働く必要がない」とか「働きたくない」というケースである。女性の社会進出といっても女性を取り巻く環境と嗜好は混在化している。

 もっとも女性の社会進出を阻むのは、税制ではなく社会保険制度にあるという指摘も忘れてはならない。社会保険加入の限度額である、130万円の壁の存在である。しかしながら、仮に130万円の壁が取り壊される結果となっても、その程度の収入金額は、やはりパート収入の領域であり、正規雇用はおろか非正規雇用を根底とした就労であることは変わりない。

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