電子化が進む預貯金調査の理想的な業務フローを実現 ~LGWAN-ASPサービス「財産調査ワンストップサービスPiMS」~ 『月刊 税』2024年7月号

地方自治

2024.07.09

電子化が進む預貯金調査の理想的な業務フローを実現
~LGWAN-ASPサービス「財産調査ワンストップサービスPiMS」~
(特集 地方税務行政DX化のミライ 業務改善事例


北日本コンピューターサービス株式会社

(『月刊 税』2024年7月号)


 北日本コンピューターサービス株式会社は行政機関と金融機関の間で行われる口座照会に電子照会サービスが登場したことを受け、正確な照会依頼ファイルの作成や回答情報のクレンジングを支援する「財産調査ワンストップサービスPiMS」を開発しました。

アジャイル開発で環境変化に柔軟に対応

 電子照会に対応したのち、仕様書が改編される金融機関も多数ある中、支援システムを提供するにあたり、アジャイル開発を採用しています。

 金融機関の仕様への対応面だけでなく「より簡単に、より効率的に電子照会を行うための機能・処理・UI」についてユーザーの声を大切にするためにも有効です。近日中に予定しているリリースでは、住所情報を検索条件にしている金融機関とそうでない金融機関への照会依頼ファイル数を自動的に最適化する機能を盛り込みます。

現場から小さなDXを

PiMSを利用した紙と電子の照会依頼作成と回答情報の処理~活用イメージ

 預貯金照会の情報が、電子データであることを前提に事務作業、情報活用、情報管理の再構築が検討できます。例えば、照会帳票の場合、印刷〜封入封緘は、郵便発送のタイミングに合わせ金融機関別にまとめることで効率化を図り、発送数を管理しやすくしていましたが、電子になってもなおこの業務フローとサイクルに沿っている必要は必ずしもありません。電子照会サービスを利用することで、滞納者との面談予定などに合わせたタイムリーな預貯金調査が可能になります。PiMSがあれば回答情報が電子データであることを活用し、知りたい情報を簡単に検索できます。PiMSによって電子照会サービスの利点を最大限に生かすことは現場単位での小さな規模のDXといえるかもしれません。

導入事例 市民税等の徴収率向上へ向けて “誰にでも、すぐに、簡単に”行える預貯金照会サービスを導入 ―東京都羽村市―

東京都羽村市
面積9.91㎢、人口約5万4,000人。東京西部に位置し新宿からは約1時間。市域の一角に米軍横田基地がある。基幹産業は製造業、歳出予算は244億円余で、市税の近年の課税額は100億円前後で推移。市町村税の主な構成比は、土地・家屋の資産税が約39%で最も高く、次いで個人の住民税の特別徴収分が約25%、個人の住民税の普通徴収、償却資産の資産税と都市計画税が約8%となっている。国民健康保険税の課税額は10億円前後、後期高齢者医療保険料の賦課額は7億円前後、介護保険料の賦課額は9億円前後の推移している。

 市民税等の徴収率が低下していた東京都羽村市は、効率的・効果的な徴収業務の推進に向けて徴収組織体制の是正と業務の電子化に着手。預貯金照会業務の電子化の機能を高めるため、北日本コンピューターサービス株式会社のLGWAN-ASPサービス「PiMS(ピムス)」を導入している。会計年度任用職員など誰でも預貯金照会業務が行える環境を整備し、滞納整理の強化・効率化によって徴収率向上を図るのがねらいだ。

安定的な歳入確保に向けて徴収率向上を図る

 羽村市の市税課税額は100億円前後で推移し、土地・家屋の資産税が約39%、個人の住民税の特別徴収分が約25%、個人の住民税の普通徴収、償却資産の資産税と都市計画税のそれぞれが約8%を占めている。また、国民健康保険税課税額は11億円前後、後期高齢者医療保険料賦課額は7.5億円前後、介護保険料賦課額は9億円前後で推移している。

 そのような課税状況にあって羽村市では、市民部納税課で市税、国民健康保険税、後期高齢者医療保険料及び介護保険料の収納と徴収事務を分掌し、賦課決定と申告後の収入管理から滞納処分、事務分掌科目の不納欠損計上までを一括して担任。現在、「第六次羽村市長期総合計画」の下、安定的な歳入確保に向けて、東京多摩地域26市の徴収率平均水準と全国市区町村の3分の1上位の平均水準の確保と、滞納事案数の1000件未満への削減を目標に掲げて業務を進めている。

「多摩地域26市の徴収率平均水準との比較では、平成23年度までに0.7ポイント余り上位となったが、それ以降後退し、平成30年度には1.2ポイント余り下位となっていました。その要因は、徴収組織のマネジメント能力の低下と徴収現場の分析力・セルフマネジメント力の低下にありました。特に、徴税吏員である一般職員とそれを補佐する会計年度任用職員の業務が明確に切り分けられておらず、一般職員が現場で滞納処分や分析・評価などのコア業務に臨む時間が不足していることが課題となっていました」と納税課機動整理グループの横山拓史さんは振り返る。

預貯金照会業務の強化と電子化を推進

 そこで徴収組織体制の是正とともに、ノンコア・セミコア業務の電子化に着手。預貯金照会業務の強化と電子化を図るため、行政機関と金融機関をつなぐNTTデータの預貯金照会電子化サービスpipitLINQ」を令和2年2月に導入した。その結果、令和2年度の預貯金照会件数は4万1000件余となり、対策強化前の平成30年度1万7000件余から大幅に増加した。成果の一方、①貯金照会データに用いる文字制御コードの変換作業、②金融機関毎に異なる預貯金照会ルールへの対応、③金融機関からの回答データの正答率の低下といった業務処理上の新たな課題も生じた。

「それら課題の解決策を検討する中、ICT関係の記事でPiMSのことを知りました。預貯金照会業務における照会書の作成・発送や回答書の開被・分類・入力作業はノンコア業務であり、徴税吏員以外の会計年度任用職員や事務委託先の従事者が担うものと考えていたのですが、預貯金電子照会サービスの中間処理を行うPiMSを使えば誰でも作業できるようになります。一定の品質を確保しつつ、“誰にでも、すぐに、簡単に”預貯金照会業務が行えるのがPiMSの大きな利点であり、北日本コンピューターサービスに連絡して導入を検討しました」と横山さん。


東京都羽村市納税課の横山拓史さん

滞納事案全体の戦術的な処理が容易に

 PiMS導入にあたっては、「徴税吏員のコア業務時間の確保により、組織の徴収能力を超える滞納事案の中長期的な処理能力の向上」をテーマに掲げて、令和4年8月から助成等の所管部署と協議して合意形成を図った。そして、令和5年度当初予算にPiMS使用料132万円を計上し、導入試験などを行った上で、令和5年4月に導入して本運用を開始した。

 PiMS導入の結果、令和5年度の預貯金照会件数は13万件に増加。業務フローが改善されて作業の平準化が進み、文書照会並みの正答率と安定化も図られた。同時に、預貯金照会件数増加に伴うデータ量の増大に対応するため、より迅速に処理できる業務フローを現在検討中で、「特に、業務整理・リスク管理・業務項数削減の改善に努めています」と横山さんは話す。

 PiMSの導入経費については、「年間使用料132万円をはじめ、預貯金電子照会業務全体で年度当たり190万円程度を要し、小規模自治体には高い費用と感じるかもしれません。しかし、預貯金照会業務の電子化による業務フロー改善によって照会量は電子化前に比べ5.9倍となり、物件費や人件費のメリットだけでも投下コストを上回っています。なによりも、徴収業務の基盤である資力・担税力の把握状態が変わったことが導入の最大のメリット」と強調する。

 羽村市では現在、滞納事案全件の預貯金照会が行えるようになっており、従来からの所得の申告資料や給与報告書といった公簿に加え、一定程度の預貯金の状態も把握できるようになった。つまり、収入、資金動向と資産がある程度分かっている状態から滞納整理を進められるので、滞納事案全体を戦術的に処理することが容易になったのだ。しかも徴税吏員以外の戦力で対応可能なことから、徴収業務におけるPiMSのコストパフォーマンスは極めて高い。北日本コンピューターサービスのサポートは導入前・導入後ともに手厚く、PiMSの機能改善が迅速に行われている点に対しても横山さんは高く評価している。

ワンストップの徴収・滞納整理業務支援に期待

 一方、大量処理への対応や、pipitLINQとのデータ連動が課題とした上で、今後に向けては、「同社の滞納整理EBPM支援サービス『OneDrip』と連動させ、類似する属性の事案に対して預貯金照会が行えるようになれば、滞納事案処理がより効率化されると思います。預貯金のみならず、生命保険の照会に係る中間処理など、今後のガバメントクラウドとも連携した、データ変換のないワンストップの徴収・滞納整理業務支援サービスの展開を期待しています」と話す。

 他自治体でのPiMS導入に対しては、“誰にでも、すぐに、簡単に”預貯金照会業務を行え、業務品質の均質化と業務水準の均一化に寄与することから、自治体規模の大小に関わらず利便性は高いと見る。

 限られた人員で効率的・効果的に滞納整理業務を進めることは自治体共通の課題。その解決にICTは不可欠で、PiMSは徴収事務DXの契機になると横山さん。「導入に際しては、滞納整理業務支援のノウハウを有する北日本コンピューターサービスに預貯金照会業務フローの改善も相談しながら進めると、より効果的な結果が得られると思います」と語っている。

 

図1 預貯金照会業務フロー

 

図2 預貯金照会作業フロー

 

<問合せ先>
会社名:北日本コンピューターサービス株式会社
資料請求専用ダイヤル:050-3385-5116
Email:PiMS-mrkt@kitacom.co.jp

「財産調査ワンストップサービスPiMS」の詳細はこちらから
https://pims-for-lg.com/

 

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