行政大事典
【最新行政大事典】用語集―争議行為の制限・禁止とは
地方自治
2020.12.06
【最新行政大事典】用語集―争議行為の制限・禁止
はじめに
『WEB LINK 最新行政大事典 全4巻セット』(ぎょうせい)は膨大な行政用語の中から、とくにマスコミ等で頻繁に使用されるものや、新たに登場したテーマ、法令などから選りすぐった約3,000の重要語句を収録。現場に精通した執筆陣がこれらの行政用語を簡潔にわかりやすく解説します。ここでは、「第1巻 第3章 総務・人事・給与」から、「争議行為の制限・禁止」を抜粋して、ご紹介したいと思います。
争議行為の制限・禁止
憲法が保障している基本的人権の行使については公共の福祉による制限を受けているが、憲法第28条が保障している争議権の行使についても、公共の福祉の見地から諸法律によって一定の制限や禁止が行われている。争議行為の制限及び禁止は次のとおりである。
非現業の国家公務員及び地方公務員は、国民全体又は住民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、かつ職務の運行に当たっては、全力を挙げてこれに専念しなければならない性質のものであるから、一般の勤労者とは異なり、争議行為を禁止されるとともに、そのような行為を企て、共謀し、そそのかし、又はあおることも禁止されている(国公98〔2〕、地公37〔1〕)。これに違反して争議行為を行った者は、法令に基づいて保有する任命又は雇用上の権利をもって対抗することができない(国公98〔3〕、地公37〔2〕)。また、何人たるを問わず争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあおり、又はこれらの行為を企てた者は3年以下の懲役又は100万円以下(地方公務員は10万円以下)の罰金に処せられる(国公110〔1〕XVII、地公61IV)。
なお、国家公務員制度改革基本法(平成20年法律第68号)は自律的労使関係制度を措置するものとしているが(同法第12条)、仮に具体化が進んだ場合には、非現業の国家公務員及び地方公務員の争議に関する権利に大きな変化が生じることが予想される。
特定独立行政法人及び国有林野事業を行う国の経営する企業、また地方公営企業においては、その事業の高度の公共性の面から、その職員及び組合は一切の争議行為が禁止され、また、職員並びに組合の組合員及び役員は、これを共謀し、そそのかし、又はあおる行為をしてはならないこととされており、これに違反する行為をした職員は解雇されるものとされている(行法労17〔1〕、18、地公労11〔1〕、12)。これに違反してなされた争議行為は、正当な争議行為としての民事上の免責又は不当労働行為の救済の保護を与えられないこととなる。ただこのような違法な争議行為も、労働組合法(昭和24年法律第174号)第1条第1項の目的を達成するためのものであり、かつ単なる罷業又は怠業等の不作為が存在するにとどまり、暴力の行使その他の不当性を伴わない場合には、同条第2項の刑事上の免責規定が適用されるものと解されている。また、使用者側も作業所閉鎖をすることを禁止されている(行法労17〔2〕、地公労11〔2〕)。
船員については、海上労働の特殊性及び人命、船舶の保護の面から、船舶が外国の港にあるとき、又は人命若しくは船舶に危険を及ぼすようなときには、争議行為をしてはならないとされている(船員30)。
電気事業及び石炭鉱業においては、その企業の特殊性及び国民の日常生活に対する重要性にかんがみ、その争議行為の方法の一部が規制されている(スト規制)。
工場事業場における安全保持施設においては、人命の安全保持の見地から、争議行為を行うことが禁止されている(労調36)。
公益事業については、事業の公共性から、争議行為をしようとする日の少なくとも10日前までに、関係行政機関にその旨を通知しなければならない(労調37〔1〕)。
緊急調整の決定があったときは、その事態の特殊性から、その公表の日より50日間は争議行為を行うことが禁止されている(労調38)。
労働委員会における調停において調停案が出され、当事者双方に受託された後、その調停案についての解釈や履行について疑義が生じ、関係当事者が調停委員会に見解を求めている場合には、調停委員会は15日以内に見解を示さなければならないが、関係当事者はその見解が示されるまで、又は申請した日から15日経過するまでは、当該問題について争議行為を行うことが禁止される(労調26)。