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地方創生と大学発スタートアップ創出|政策トレンドをよむ 第34回

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2026.02.09

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    【政策トレンドをよむ 第34回】
    地方創生と大学発スタートアップ創出

    EY新日本有限責任監査法人FAAS事業部
    シニアマネージャー
    村岡 健太

    ※2025年12月時点の内容です。

     「地方創生」政策は2014年から始まり、10年以上が経過した。しかし、東京一極集中が是正されたとは言い難い。地方活性化には様々なアプローチがあるが、「大学発スタートアップ創出」の支援は最も有効な施策の1つであると私は考えている。

     まずはスタートアップの地域別の就業者数を考えてみたい。2024年のSTARTUP DB(1)の調査によると、スタートアップ就業者数のうち約68万人が東京都にいる。これは、東京都の就業者数全体の8%ほどであり、全国の産業別就業者数の7%が建設業(労働政策研究・研修機構(2)調べ)であることから、都内ではそれなりのインパクトがある。一方で、同調査によると全国のスタートアップ就業者数は約88万人で、その約78%が東京にいる超「東京一極集中」の状態になっている。これは起業やスタートアップでの就業を志す人だけではなく、スタートアップ支援者等も東京に一極集中している要因であると考えられる。

    〔注〕
    (1)【STARTUP DB独自調査】スタートアップ企業で働く人は日本全国の就業者数の1.3%
    https://www.forstartups.com/news/startupdb-population-202403
    (2)産業別就業者数|早わかりグラフでみる労働の今|労働政策研究・研修機構
    https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/chart/html/g0004.html

    資料 スタートアップの地域別の就業者数
    実態調査の図表
    出典:STARTUP DB

     これからの日本は少子高齢化で未曾有の人口急減状態に陥る。これは、内需に依存している状態であれば市場の急激な縮小を意味する。新しい産業を創出し、「外貨」を稼いでこなければ早晩立ち行かなくなることは明白だ。

     ただし、東京に一極集中しているスタートアップの多くはSaaS (Software as a Service)といわれるIT系スタートアップである。これらのスタートアップは海外展開が難しいものが多い。例えばマッチングプラットフォームを運営するようなビジネスモデルでは、基本的に日本の企業や日本人同士のマッチングサービスになる。グローバルに展開しようとする場合、海外企業や海外人材の登録を増やす必要があり、莫大なマーケティング(集客)コストがかかる。また、日本と海外では法律・文化・習慣が異なるため、日本のビジネスモデルがそのまま海外で通用しない場合も多い。例えばHR(ヒューマンリソース)系のSaaS企業が海外に展開している例は少ない。

     また、SaaSスタートアップのサービスを日本全国に広めることについて考えてみよう。彼らはセールスフォース・ドットコム社が米国で実施したThe Model (ザ・モデル)と言われる手法で営業活動を行っていることが多い。The Model型の営業では、一般的にはWeb広告等で顧客の個人情報を獲得し、電話やメールを行ってアポイントメントを取得し、オンライン商談によってサービス導入に繋げる。一方で、地方企業は地域の自治体・商工会・金融機関からの繋がりや紹介により、対面で営業活動を行った後にサービス導入の意思決定を行うことが多く、The Model型の営業のみでは地方に広がっていかないことが多い。

     以上により、現在の日本のSaaSスタートアップでは「海外展開」「地方展開」に苦戦することが多いのが現状だ。しかし、大学発スタートアップはどうであろうか。

    地方には相対的に多くの大学があり、ハードウェア系を含む様々な分野の優れた研究シーズを持っていることが多い。研究シーズを社会実装できれば、SaaSと異なり日本の文化・習慣との関連が弱いため、海外にも容易に展開できる可能性が高い。産業革新投資機構の調査レポート(3)にも、日本発のハードウェア系のスタートアップは世界を狙いやすいと書かれている。

    〔注〕
    (3)産業革新投資機構 日本のスタートアップの海外進出に関する現状調査
    https://www.j-ic.co.jp/jp/research/.assets/20250430_JIC_Research.pdf

     大学発スタートアップを多く創出するために、文部科学省や一部の地方自治体が予算化を行っている。大学の研究開発課題に対して事業化までのギャップを埋めるGAPファンドの創設や、大学発スタートアップの事業化後の成長を支援するアクセラレーションプログラム、大企業とのオープンイノベーションが多く行われる仕掛けが重要だ。

     また、研究者はビジネス経験が豊富でないケースが多く、大学発スタートアップをビジネスとして展開していくためには、ビジネス系のCxO人材が求められるケースが多い。前述したGAPファンドの創設や大学発スタートアップの成長支援に加えて、首都圏や大企業で修練を積んだ人材がCxO人材として雇用されるような支援ができ、地方大学発スタートアップが成長して海外展開まで行うことができる世界が望まれる。実現できれば、最大の地方創生推進施策になるだろう。なぜなら、人口減少により内需が縮小されることが想定される地方経済が、外貨を稼ぐことにより創生していくからである。

     

    #3:イノベーション・科学技術政策策定・事業運営支援
    https://www.ey.com/ja_jp/industries/government-public-sector/science-technology-and-innovation-policies

    #4:起業家・スタートアップ支援
    https://www.ey.com/ja_jp/industries/government-public-sector/support-for-entrepreneurs-and-startups

    #8:地域の人材確保・育成に向けた戦略策定・実行支援
    https://www.ey.com/ja_jp/industries/government-public-sector/secure-and-develop-regional-human-resources

     

     

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