
公務員が読みたい今週の3冊
公務員が読みたい今週の1冊【遠野カッパの独り言】
ぎょうせいの本
2025.11.15
この記事は2分くらいで読めます。
出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年10月号
今週、何読む?
読書の習慣をつけたいと思いながら、まだ始められていない…。
日々読書を嗜んでいるが、そろそろネタ切れ…「次は何を読もうか」検討中。
そんな公務員の方はいませんか?
「公務員なら読んでおきたい」業務に役立つ必携図書や、「公務員の皆様が楽しく読める」おすすめ図書をガバナンス編集部がピックアップ。
「公務員が読みたい今週の3冊」では毎週2~3冊をご紹介。
特別編「公務員が読みたい今週の1冊」ではたっぷりの著者インタビューとともに、おすすめの1冊をじっくりとご紹介します。
「今週読みたい図書」の選定にぜひお役立てください。
【公務員が読みたい今週の3冊】バックナンバーはこちら
遠野“まちづくり”物語

遠野カッパの独り言
菊池新一・著
無明舎出版/1,800円+税
著者プロフィール
菊池新一(きくち・しんいち)
NPO法人遠野山・里・暮らしネットワーク会長。東北まちづくり実践塾塾長。1949年岩手県遠野市生まれ。1968年、遠野市役所入庁。福祉事務所、営農振興課、商工観光課(社団法人遠野ふるさと公社事務局長)、商工観光課長、総合産業振興センター所長、産業振興部長、地域経営改革担当部長等を歴任。地域活性化伝道師(内閣府)、ボランタリープランナー(農水省)、農商工連携伝道師(経産省)。主な著書に『遠野まちづくり実戦塾』(2007年、無明舎出版)、『保健・医療・福祉の連携とネットワーク形成への挑戦』(1991年、北土社)ほか。
遠野“まちづくり”物語
── 著者インタビュー
「前例踏襲は仕事とは言わない。それは、単なる事務作業。本当の仕事とは、今まで誰もやったことのないことをやることだ」
思わず、ドキリとさせられた。
長年、岩手県遠野市職員として活躍し、現在は自らが設立したNPO法人で遠野のまちづくりに奔走する菊池新一さん。50年以上にわたる、菊池さんのまちづくりの実践の歴史をまとめたのが本書だ。
冒頭の言葉は、1968年に入庁して間もないころ、先輩職員の千葉富三さん(全国初の文化行政推進複合施設「遠野市市民センター」を建設するなど、遠野市のまちづくりのキーマン。自治体学会名誉会員)から言われた言葉だ。
菊池さんは
「この言葉は、カルチャーショックだった。以来ずっと頭から離れず、『誰もやったことのないこと』を目指してやってきた」
と振り返る。
約40年間の市役所職員時代のエピソードを記した第1章「タガを外したはみ出し公務員」、2007年に立ち上げたNPO法人遠野山・里・暮らしネットワークの東日本大震災の後方支援と現在に至るまでのまちづくりをつづった第2章「タガが外れてNPO法人立ち上げ」の大きく2章で構成され、時系列でたどっている。
特に、職員時代を記した第1章では、社会教育兼消費生活担当時代のコミュニティづくりの原点となった郷土芸能や市民創作舞台「遠野ファンタジー」、そしてサラ金対応。福祉行政・高齢者福祉担当時代の事業の発想の転換。出向した第3セクターでの「道の駅」開業準備、商工観光担当としての中心市街地の活性化──地域に飛び出し、住民とともにまちづくりに奮闘してきた様子が、当時のエピソードとあわせて軽妙に語られる。
菊池さんは言う。
「自治体職員は、朝から夕方まで自分の好きなまちのまちづくりに関わることができる。こんなに恵まれた職場はどこにもない」。
そして、
「現場の最前線、人々の暮らしの歴史やあるべき姿が手にとるようにわかるからこそ、現状維持の『対策』ではなく、その先の『夢』を考えることが大事」
と説く。
今回筆を執ったのは、この20年ほど「自治体職員の元気が感じられなくなってきたと感じたから」だそうだ。「ハラスメントやコンプライアンスなど前を向く姿勢にブレーキがかかっているのではないか」と危惧している。
菊池さんは
「難しい時代かもしれないが、やりようでは不可能なことはない。楽しんで諦めないで続けて欲しい」
とエールを送る。
時代背景は違っていても、まちや住民と向き合うその心の持ちようや姿勢は変わらない。多くの学びがあり、勇気をくれる“独り言”に耳をそばだてたい。
月刊『ガバナンス』では、おすすめ書籍6冊を毎月まとめてご紹介!

月刊 ガバナンス 2025年10月号
特集1:地域を支える技術系職員
特集2:自治体現場の「質問力」 編著者名:ぎょうせい/編
販売価格:1,320 円(税込み)
詳細はこちら ≫





















