公務員が読みたい今週の3冊
公務員が読みたい今週の1冊【締め切りより早く提出されたレポートはなぜつまらないのか】
NEWぎょうせいの本
2025.09.08

この記事は2分くらいで読めます。

出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年8月号
今週、何読む?
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「公務員が読みたい今週の3冊」では毎週2~3冊をご紹介。
特別編「公務員が読みたい今週の1冊」ではたっぷりの著者インタビューとともに、おすすめの1冊をじっくりとご紹介します。
「今週読みたい図書」の選定にぜひお役立てください。
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「先延ばし」と「前倒し」のベストミックスで協働型タスク管理を

締め切りより早く提出されたレポートはなぜつまらないのか
「先延ばし」と「前倒し」の心理学
安達未来・著
光文社新書/900円+税
著者プロフィール

安達未来(あだち・みき)
1986年生まれ。2009年、広島大学総合科学部卒業。2014年、広島大学大学院総合科学研究科博士課程後期修了。博士(学術)。専門は社会心理学、教育心理学。大手前大学助教、講師等を経て、2021年より大阪電気通信大学准教授。セルフコントロールや学習支援を中心に、理論的・実践的な研究を行う。著書に『生徒指導・進路指導 (よくわかる!教職エクササイズ4)』(共編著、ミネルヴァ書房)がある。近年ではタスクマネジメントを視野に入れたセルフコントロールの研究も積極的に行っている。
「先延ばし」と「前倒し」のベストミックスで協働型タスク管理を
── 著者インタビュー
私たちの日常はマルチタスクだ。順番を決めておきながらも、重要なことをつい先延ばししたり、後でもよいことを前倒ししたり。期限やノルマに追われる中で、ふと現実逃避。そんな経験は誰にもあるだろう。
社会心理学・教育心理学を専門とする安達未来さんが、こうした身近な現象の核心に迫った。安達さんにとって初の単著だ。「タスクマネジメントは誰にとっても必要な課題。職場だけでなく、家庭においてもそう。だから、社会人の方、日々の生活を営んでいる方全体をイメージしながら書き上げた。『これ、自分のことだ』『こういう人、いるんだ』など、いろいろな捉え方ができる、複雑で面白いテーマだと思う」と語る。
本書では、内外の先行研究のほか、安達さん自身の研究成果や経験、気づきを織り交ぜて「先延ばし」と「前倒し」の仕組みを掘り下げ、効果的なタスクマネジメントの方法を提案する。先延ばしは心理学の古くからのテーマの一つで、前倒しは学術的には2014年に登場した新しい概念、ということに読者は驚かされるだろう。人のバケツ運び実験、ハトや霊長類のボノボを対象にした前倒し実験など、タスク遂行に関する先行研究は奥深い。進化のプロセスにまでその射程は及び、読み物としても楽しめる一冊だ。
書名は「明らかに早すぎるタイミングで、サクサク課題をこなして提出する学生」に対してモヤモヤした思いを抱いた安達さんの実体験から想を得たもの。
「早いこと自体は決して悪いことではない。実は私もこういうタイプ。でも、ミスをしてしまうことがあるので、書名にはその反省も込めている」
と笑う。
安達さんが強調するのは、先延ばしと前倒しは必ずしも反対の意味を持つものではないということ。
「いずれかが良い悪いというものでもない。限られた時間の中でタスクをどうこなしていくかという点においては、どちらもタスクマネジメントの一種。その点で、タスクの進め方にシフトした見方が必要では?という問題意識に研究を通して気づかされた」
と語る。その言葉のとおり、「主観的な時間的距離」「時間管理のマトリクス」「セルフコントロール喪失の予防」「タスクの具体化と抽象化」「あえての先延ばし」「協働型ToDoリスト」など、タスク遂行に関する具体的なヒントが本書には豊富に散りばめられている。
組織においては、「互いを知ることが大前提」と安達さん。
「例えば、先延ばしの人には締切を早めに伝えたり小分けに設定したり。前倒しの人にはチェック機能を果たしてあげたり見直し時間を設けたり。意見交換し、協働的な関係をつくることが大事。各々を生かせるバランスのとれた組織になれば、働きやすさにもつながるのでは」
と力を込めた。
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