
議会局「軍師」論のススメ
なぜ「議会局」であるべきなのか?|議会局「軍師」論のススメ 第110回
地方自治
2025.12.11
この記事は3分くらいで読めます。
出典書籍:『月刊ガバナンス』2025年5月号
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本記事は、『月刊ガバナンス』2025年5月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
全国に1800弱ある自治体議会で、議会を補佐する機関を「議会局」と称する議会は、20弱しかない圧倒的少数派である。
だが、「議会事務局」のままで本当に良いのか?今号と次号で議会の補佐機関(注1)とのあり方について、あらためて考えてみたい。
注1 自治法上の補助機関である職員で構成する組織を総称する。
■疑問の原点
執行部でも組織論が議論されることはあっても、補佐機関のあり方そのものが議論になることはほとんどない。その意味からは、未だに議会では重要な論点とされていること自体が、自治体内部でも遅れている証と言えるだろう。
論点は、ほとんどの議会で補佐機関が「議会事務局」と称されていることに象徴される。執行部では補佐機関を「首長事務局」や「執行機関事務局」などとは称されないのに、議会の補佐機関は、なぜ「議会事務局」なのであろうか。
■脆弱な補佐機関の歴史的背景
終戦時からの経緯を俯瞰すると、GHQ(注2)は占領下の日本の民主化を推し進めるため、日本国憲法の原型となったマッカーサー草案で、地方では議会と首長を独立・対等の関係とする二元的代表制とした。しかしながら、当時の日本政府は中央集権体制を維持するために、地方自治法(以下「自治法」)に機関委任事務制度を定めて自治体議会の関与を排除するなど、中央から地方を統制しやすくするため、事実上の「首長優位」の体制が構築された。
注2 連合国軍最高司令官総司令部。
議会の補佐体制についても、国では国会議員700人強を約4000人の国会職員が支えるが、自治体では議員数よりも局職員数が多い議会は東京都議会しかないなど、脆弱な体制となっている。これは世界的に見ても普遍的な体制ではなく、米国統治下の沖縄の立法院では、議員定数32人、職員定数122人の体制(1972年時)であったが、本土復帰後の沖縄県議会への再編時には、本土並みに事務局体制も縮小されている。
そもそも1947年の自治法施行当初には、議会の「事務局」に関する条項すら欠如している。これらの事実からは、中央集権のために議会の力を削ぐ一環で、必然的に補佐機関も軽視されてきたと言えるだろう。
したがって、自ずと執行部の補佐機関とも差別化され、議会では「受動的姿勢で定型業務をこなすだけの議員のお世話係的組織」で十分との意図が「議会事務局」の名称からは透けて見えるのである。
だが、平成の時代にようやく、都道府県議会制度研究会中間報告(2005年3月18日・大森彌座長)において、「議会事務局の機能が、単なる議会運営の補助や庶務だけでなく、議会の政策提案機能、監視機能及び調査機能等を補佐する機関であることを明確に位置付けるためにも、地方自治法138条の規定中の『庶務』の文言を『事務』と改めるべきである」と議会事務局の地位向上に資する提言がされた。
こうして改正前の自治法138条7項で議会事務局の業務は「庶務」とされていたものが、2006年の自治法改正でようやく「事務」へと格上げされたのである。自虐的かもしれないが、法改正前の議会事務局の存在は、法的には「議会事務局」ですらなく、「議会庶務局」として扱われてきたと言えるだろう。
さらに一歩進んで「議会事務局」から「議会局」に名称変更する意義と、そのあり方に関する私見については、次号で述べたい。
第111回 続・なぜ「議会局」であるべきなのか? は2026年1月22日(木)公開予定です。
著者プロフィール
早稲田大学デモクラシー創造研究所招聘研究員
議会事務局研究会 共同代表
元大津市議会局長
清水 克士 しみず・かつし
1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長、局長などを歴任し、2023年3月に定年退職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。
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