住基カード時代から取り組む多目的利用のさらなる発展を目指す/青森県むつ市|case study ~わがまちのマイナンバーカード活用事例~

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2025.12.10

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この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊 J-LIS」2025年10月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。

case study ~わがまちのマイナンバーカード活用事例~
住基カード時代から取り組む多目的利用のさらなる発展を目指す

「青森県むつ市」職員写真

青森県むつ市
人口 5万720人(2025年8月31日現在)

普及への道のり

 むつ市がカード利用を検討し始めたのは、マイナンバーカードよりも前のことでした。2002年には、住民基本台帳カード(住基カード)の多目的利用を検討し、2005年の市町村合併を機に、地域イントラネット上で申請書作成、施設予約や図書館利用に活用しました。しかし、当時は利用者が伸び悩み、やがてマイナンバーカードの登場とともに、これらのサービスは一旦停止しました。

 マイナンバーカードは2016年度から導入されましたが、住基カードの衣替えというイメージもあり、普及率は低迷していました。転機が訪れたのは、デジタル改革関連法の制定と自治体DXが本格的に推進され始めた2021年のことです。交付率の高い自治体が優遇され、マイナポイントが付与される仕組みができたことを受け、むつ市でも普及に本腰を入れました。

 スーパーの一角やコロナワクチン接種会場に手続き窓口を設け、申請を促した結果、2021年4月には24.8%だった交付率が、2022年4月には41.1%にまで増加。マイナポイント第2弾が始まってからも申請窓口を継続し、さらに申請が難しい方には職員が各家庭を訪問するなどの対策も講じました。その結果、2023年4月には78.3%と、高い交付率を達成しました。

住民パスポートアプリ「むちゅぱ」の誕生

 マイナンバーカードの交付率が上がり始めた2022年5月頃、私たちは新たな課題に直面しました。多くの市民がカードを取得したものの、「健康保険証と紐づけてはいるが、まだ使い道がない」という声が多数聞かれたのです。この時期、当時の市長(現青森県知事)から「18歳までの医療費無償化を検討しているので、デジタルで簡単に証明する方法はないか」という指示がありました。むつ市はちょうど、スマートシティ化を掲げ、都市OSの実装を検討している最中でした。この三つの要素、「マイナンバーカード独自利用」「医療費無償化」「都市OS」は、必然的に結びつきました。

「むちゅぱ」の仕組みと工夫

 スマートシティ化の第一歩として、私たちは医療費無償化の資格情報をどう窓口で提示するかを考えました。ここで浮上したのが、アプリと住民情報システムの連携、そして高額な都市OS構築費用という二つの問題でした。私たちは、先進自治体の事例から、高額な都市OSは運営費や住民負担が課題となることを学び、まずはスモールスタートとして本人認証に特化したデータ連携基盤を構築することにしました。これにより、市民だけが享受できるサービスを提供できるようにしました。データの連携については、住民情報系からインターネット系へのデータの引き渡しを考慮し、一方通行でデータを渡す「データブリッジ」という仕組みを構築。さらに、RPAで日次処理を行うことで、日々の更新もスムーズに行えるようにしました。アプリは、外部の本人認証アプリ「xID」と連携することで、安全かつ迅速な本人認証を実現しました。これにより、本人認証を可能にした住民パスポートアプリ「むちゅぱ」が誕生したのです。

「むちゅぱ」イメージ画像
「むちゅぱ」の画面。名称は、アプリアイコンの「ムチュリン」と「むつ市の住民のためのパスポート」を掛け合わせたもの。

広がるカード利用の輪

 「むちゅぱ」は、医療費無償化に伴う医療受給者証の表示だけでなく、75歳以上の高齢者無料乗車証の表示、市民優待サービス、災害レポート投稿、ごみカレンダーなど、様々なサービスを提供しています。さらに、「むちゅぱ」以外にも、マイナンバーカードの利用を拡大しています。図書館では、カードのシリアル番号と図書館カードを紐づけて利用できる仕組みを導入。また、住基カード時代に断念したコンビニ交付も、2023年度から住民票や戸籍、課税証明書などの取得サービスとして開始しました。窓口では、カードを持参することで、申請書を手書きする必要がない「書かない窓口」も実現、施設予約も公式LINE上で可能となりました。かつて住基カードで試みた多目的利用が、形を変えて復活したことに感慨深いものがあります。

 さらに、今年度から公式LINEアカウントを通じて、マイナンバーカードを利用した住民票の写しや印鑑登録証明書などの郵便請求が可能となりました。

おわりに

 今後は、マイナンバーカードのスマホ搭載機能が本格的に普及していくことを踏まえ、「むちゅぱ」の新サービスとして、複数の福祉系サービスを検討しています。デジタル技術を活用して、市民の暮らしをより豊かにする挑戦は、これからも続いていきます。

お問合せ先
むつ市総務部情報・DX戦略課
TEL:0175-22-1111

 

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