そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室
結果に納得しないお客さまにどう対応するか|クレーム対応悩み相談室6【カスハラ対応】
NEWキャリア
2025.05.12

この記事は5分くらいで読めます。

出典書籍:月刊「ガバナンス」創刊20周年記念別冊付録『そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室』
※本書は月刊「ガバナンス」2019 年4月号〜2020 年4月号までに掲載した連載をまとめたものです(一部加筆・修正)。
Chapter6 結果に納得しないお客さまにどう対応するか
2025年4月1日、東京都などで「カスタマーハラスメント(カスハラ)防止条例」が施行されます。
これにより、企業や自治体にも適切な対応策の整備が求められています。
本連載では、月刊『ガバナンス』の連載をまとめた別冊付録『そこが知りたい!クレーム対応悩み相談室』の内容を引用して掲載。
人材教育コンサルタントの関根健夫さんが自治体でのクレーム対応術を解説しています。
今回は結果に納得しないお客さまへの対応について解説します。
カスハラ・クレーム対応の参考としてチェックしてください!
この記事で分かること
・医療事務でのクレーム対応について
・診断結果に納得しない患者への対処法
病院の事務課で患者さんからの医療相談を担当しているEさん。診断結果に納得しないお客さまに苦慮しているといいます。

人材教育
コンサルタント
関根さん

① 組織としての結論を信念をもって言い続ける ② 患者さんといえども、迷惑行為には毅然と対応する
「とにかく手術をしてほしい」
E 私は病院で医療事務の仕事をしています。患者さんやその家族からのクレームで困っています。
関根 病院はある意味で特殊な環境ですから、クレームも様々なものがあるのでしょうね。
E はい。ただ、患者さんの健康を支える、病いを克服し日常生活を取り戻してもらうという意味では、仕事に誇りを感じています。
関根 その通り、大切な仕事ですね。一方、人がいかに生きるかということに関わる仕事ですから、患者さんもいろいろでしょうね。
E 多くの患者さんやご家族は、医師や看護師の話をよく聞いてくれますし、特段のトラブルはありません。むしろ退院時などに「ありがとうございました」とお礼を言われることも多く、こちらが恐縮してしまうほどです。それでも困った患者さんもいます。
関根 どのようなケースですか。
E ある患者さんは、医師は手術の必要はないと判断したのですが、本人が手術を望んでいて「何故手術をしてくれないのか」「とにかく手術をしてほしい」というクレームを1年近く言って来ています。
関根 その方は、何故手術を希望しているのですか。
E 安心したいというのが本人の話ですが、もっとひどくなったらという不安があるかもしれません。
関根 専門的なことは、主治医の責任で説明してもらわないといけませんよね。
E もちろん、説明してもらってはいるのですが、本人が納得しないのです。主治医からは「診察は“経過観察”ということで一応の区切りはついているので、あとは事務方で対応して欲しい」と言われてしまいました。
関根 そうですか…。患者さんはどのような話をするのですか。
E いろいろなことを言ってきます。「説明しろ」というので、こちらが説明すると「そんなはずはない」、インターネットで見たということなども含めて「病院の言っていることがおかしい」などと、いろいろと主張してきます。
しかも最近は、長男だという人も出てきて、主治医に直談判して判断が変わらないと「主治医を変えろ」などとも言ってきます。
関根 どのような言い方ですか。
E 何度も来てねちっこいし、特にその方は揚げ足を取るような言い方なので話はかみ合いません。時には大声を出したりして迷惑行為も平気でやってきます。
関根 それでは大変ですね。
E 最近は月に2〜3回思い出したようにやってきて、1時間ほど居座ります。この状態がいつまで続くのか、いつまで対応すればいいのか、苦痛を感じます。
結論が変わることはない
関根 日本はどのような考えを持っても自由な国ですから、納得するかどうかは相手方の問題です。ただ、結論が決まっている以上、結論が変わることはないのだということを繰り返し主張し、あきらめていただくしかないでしょう。
E 何とか、納得していただく良い方法はないでしょうか。
関根 この場合の結論は主治医の診立てであり診断の結果です。それを信用できないと言うのなら、こちらは揺らぐことなく組織の責任ある結論として主治医の主張を、プライドをもって繰り返しましょう。それは、人を説得する方便ではなく、信念というべきかもしれませんね。それで納得がいかなければ、通院先を変えてもらうしかありません。日本の医療制度はフリーアクセスになっていますから、自治体の窓口と違って、どこのエリアの病院にも診てもらうことはできます。最近では、セカンドオピニオンも推奨されていますから、診断に納得いかなければ他で診てもらうことも一つの方法です。
E それでも納得しない場合はどうしたらいいですか。
関根 病院でも一般行政でも、明確な理由がなければ対応を拒否することは難しいところです。しかし、今回の件を伺う限りは、これ以上関わらなくても良いと思いますよ。いくら患者さんでも家族でも、言い方に迷惑行為や違法の可能性があれば話は別ですから。
E どうしたらいいでしょうか。
関根 「これ以上の対応はお断りします」「この状況は迷惑です」などと言って、それでも続くようなら「こちらとしてもしかるべきところに相談させていただきます」などと、警告することになります。
E 「しかるべきところ」とは、警察ですか。
関根 警察と言い切ると、犯罪をイメージされて角が立ちますし、多くの人は民事不介入の原則から内容にまでは踏み込めないことを知っていますので逆効果にもなります。ですから、弁護士や裁判所なども想定しながら、しかるべきところはしかるべきところと言うのです。
E ありがとうございます。主治医の診立てはこちらの結論、これは勉強になりました。
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