学校改革の新定石Ⅱ

西留安雄

学校改革の新定石Ⅱ[第7回]委員会活動の見直し

トピック教育課題

2019.08.27

学校改革の新定石Ⅱ
[第7回]委員会活動の見直し

新教育課程ライブラリII Vol.7 2017年7月

 敎育課程の編成や、学級の諸事務が3月から4月に集中し、教師に過度の負担がかかる。そこで、12月までに学校評価と新年度計画を終えるようにするとよい。4月から3月の教育課程サイクルの常識を崩し、1月より新年度の教育課程を新しい学校運営組織で行うように改める。教育課程を「12月決算」とするのである。そのことにより、クラブ活動や委員会活動も1月より発足し、3月4月も他の月と同じように活動を行うことができる。そのため、教師も子供もゆとりの中で教育活動ができるようになる。

クラブ活動

 平成〇年12月20日の放課後、全員が集まる。クラブ活動の設立用件として、①5年生が自分たちの作りたいクラブの計画を立てる、②教師側のアドバイスも参考にする、③現3年生、4年生、5年生で編成する等とする、④5年生7人以上で、原則として3年、4年各学年に希望者がいる、⑤原則としてクラブの人数は15名以上とする、⑥活動計画が実施可能なもの(計画案段階でチェックする)等とする。スケジュールは、12月2日に5年生が計画案を出し、12月9日に体育館でクラブを決定した。活動時期は、前期は、①1/25、②2/1、③2/15、④3/8、⑤4/26、⑥5/17、⑦5/24、後期は、①6/14から12/20としてみる。

新委員会の発足

 委員会活動のねらいは、学校の課題を解決することにより、子供の主体性、自治能力を育成することや、愛校心を育成する等だ。委員会活動も教育課程の12月決算に伴い、活動を1月から12月とした。その委員会活動は従来からの定番の内容であってはならない。かつての勤務校では、学校課題を子供と教師がワークショップで出し、新委員会を発足することを常に行っていた。運動会を参考にした「年間応援団」、習熟学習のための「図書・ドリル委員会」、子供の善行を称える「金メダル委員会」、ノートや言語活動を高めるための「学習のわざ委員会」等の新委員会等があった。その中で特徴的な委員会を紹介する。

「学習のわざ委員会」

 委員会活動は、子供の主体性・自治能力・問題解決力を育てるためにある。これまでその活動に「学習活動」へ直接影響するような委員会がなかった。授業は教師が行うという強い考え方があったからだ。かつての勤務校は、子供自身が学びを創ると考え、「学習のわざ委員会」を設置した。①ノートコンテストの推進、②「授業進行係り」の設置、③学習言語わざの状況調査等を主な活動内容とした。

〇ノートコンクール

 ノートコンクールは、子供にノートの取り方や学び方のモデルを示し、ノート作りの意欲を高めるための活動だ。そのノートコンクールは、担任と学習のわざ委員会が担った。組の代表児童を選出し、委員会で選考する仕組みだ。選考基準として低学年は、後で読んでも分かる字で書いていることとした。中学年は、理由をつけて自分の考えを書いたり、友達の良い考えを書いたりしていることとした。高学年は、分かったことや考えたこと、友達の考え等を生かした振り返りを書いてある等であった。ノートコンクールの運営を子供が担ったことにより、学校全体の子供のノートが良いものとなった。

〇授業進行係り

 授業力は、誰が付ける力だろう。これまで教師が付ける力ととらえていた。だが、教師主体の授業は、「子供同士が学び合い、自ら考え表現しながら本質的な学びを生み出す授業」とはならない。子供が教師を頼らず仲間と協働して創る授業ができたとき、はじめて授業は成立する。現行学習指導要領総則にも「指導に当たっては、(中略)自主的、自発的な学習が促されるよう工夫すること」とある。授業力とは、案外、教師より子供が身に付ける力ではないだろうか。そこで、かつての勤務校では、学習のわざ委員会の事業として、これまでの「教科係り」を「授業進行係り」として各学級に位置付けた。教師の独壇場の授業を止める一つの方策として導入した。最初は、「授業進行係り」に多くは望まなかったが、子供は、「授業進行係り」に慣れるにしたがい、自分たちで授業運営を一層行いたいという思いが強くなってきた。そこで、「授業進行係り」に多くの授業運営を任せるようにした。

 「授業進行係り」の仕事は、①号令係り(始め終了の挨拶)、②タイマー係り(問題解決学習段階のタイマー)、③司会係り(全体司会者・各学習段階の司会)、④板書係(意見や考察を板書)、⑤言語わざ係り(本時で進める言語活動の言葉の伝達)、⑥机配置係り(前向きか班会か教室の真ん中を向くのかの指示)、⑦本時の教材掲示係り(資料や学習問題の掲示)、⑧前時の振り返り発表係り(前時の振り返りを発表する)、⑨見通し確認係り(子供全員が学習課題解決が可能かどうか、解決できない場合の対応の指示)、⑩教科指導係り(課題解決ができない仲間への指導を担当)、⑪授業内班長会(班会で話し合う内容や発表方法の伝達)、⑫班会(班内の係りの指示と解けない子から発表の指示)、⑬ノート・ワークシート係り(ノート展覧会やノート回しの指示)、⑭参観者への対応係り(お礼の言葉)等だ。

 研究授業が終わった時、泣いた子供がいた。その理由を尋ねると、「普段はもっと上手な司会ができたのに」との言葉が返ってきた。授業に責任を負う姿に感動した。

 教科の専門性を出す授業は、教師が光る。だが、子供には受け身となりやすい。教師が仕切る授業となりやすいからだ。そこで、「子供が進める学習活動」へ転換するとよい。それには、従来の子供の委員会を見直し、授業改善に関係する委員会を設置するとよい。

 

Profile
西留安雄
にしどめ・やすお 東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。大岱小では校長在任中に当時学力困難校といわれた同校を都内トップ校に育てた。現在、高知県・熊本県など各地の学力向上の指導に当たり、授業・校務の一体改革を唱える。主著に『学びを起こす授業改革』『どの学校でもできる!学力向上の処方箋』など。新刊『アクティブな学びを起こす授業改革』が好評刊行中。

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清瀬富士見幼稚園長

東京都東村山市立東萩山小学校長、同大岱小学校長を経て、東京都清瀬市の清瀬富士見幼稚園長。

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