保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します!

吉永公平

保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します! 第8回 ⑤個人情報の取扱い

ぎょうせいの本

2022.07.07

連載 保育者のリアルなお悩み、弁護士が解決します!

弁護士・春日井市総務部参事
吉永公平

第8回 ⑤個人情報の取扱い

保育園には個人情報がたくさん

 今回は、保育園において法律が関係する場面として第1回でご紹介した①~⑨のうち、⑤個人情報の取扱いを解説します。誰の個人情報かを意識することが、対応のスタート地点です。

個人情報に関する法的ルール

 個人情報の取扱いに関しては、私立園は個人情報保護法が適用されます。公立園は令和5年3月末までは各自治体の個人情報保護条例が適用され、同年4月1日からは個人情報保護法が適用されます。公立園はちょうど法的ルールが切り替わるタイミングですので、ご注意ください(ルールの内容は切り替わりの前後でそれほど大きくは変わりません)。

園児の個人情報

 園児の個人情報は園児のもののはずですが、まだ発達の途上ですから、保護者は自分の子どもの個人情報を知る権利があります(親権者につき民法820条)。そのため、保護者から自分の子どものことを聞かれたら、児童虐待が疑われる場合でない限り、答えて結構です。

 一方、自分の子ども以外の園児の個人情報であれば、何でも教えられるわけではありません。令和4年4月刊行の拙著『ズバッと解決! 保育者のリアルなお悩み200 園児の呼び方から送迎トラブル、園内事故まで』では②事故の関係で記載していますが、園児の障がいの情報等は、他の保護者が知らなければ支障がある情報とはいえませんので、園児のプライバシーが優先され、他の保護者には教えられない個人情報となります。一方、園児がケガをした場合におけるケガをさせた園児の名前は、様々な意見があるところですが、被害者には加害者を知る権利があると考えられますので、ケガをした園児の保護者にケガをさせた園児の名前を教えることは許されると思います。

 また、「個人情報を聞かれたから教える」という場合以外でも、園内の掲示物によって「他の人が見たら個人情報がわかる」という場合も、個人情報の取扱いとして問題がないか検討する必要があります。たとえば、園児の顔写真や、園児の名前と誕生日が書かれた誕生表を室内に掲示している場合です。園児の顔と名前は、通常は他の保護者も普段の送迎やクラス名簿等で見聞きすることができるため、他の保護者が顔写真と名前が書かれた誕生表を見ても、個人情報の取扱いとしては問題ありません。

 しかし、誕生日は他の保護者ではなかなか知り得ない個人情報です。誕生日を記載するのであれば、各保護者の同意が本来は必要です。入園時に保護者から「○○について同意します」という同意書を提出してもらっている場合は、その同意書に誕生日が書かれた誕生表の掲示も入れておくことが考えられます。また、保護者から明示的な同意を得ていない場合でも、保護者が文句を言ってこないときは、「黙示の同意」又は「推定的同意」をしている可能性もあります(文句を言われていないからといって、常に同意しているとまでは断言できません)。結果的に違法ではないケースが多いと思いますが、個人情報の取扱いの観点からは注意が必要です。保護者から「自分の子どもの誕生日は載せないでほしい」と言われたら、少なくともその園児の掲示はやめるべきでしょう。

肖像権にも注意

 顔写真は個人情報の問題以外にも、「肖像権」の問題があります。「肖像権」とはプライバシー権の一種であり、自分の容貌を勝手に撮影されない権利です。保育園のお便りや園内での掲示のためだけに、保育士が撮影するのであれば、誕生表の掲示と同様に、通常は保護者が「黙示の同意」又は「推定的同意」をしているとも考えられます。ただし、入園時の同意書に写真撮影とその掲示も加えておくことが望ましいでしょう。

保護者の個人情報

 園児だけではなく保護者の個人情報も、個人情報として大切であることに変わりはありません。保育士は守秘義務を負っていますので(児童福祉法18条の22)、ある保護者から聞いた話を他の保護者に何でもペラペラと話してはいけません。また、保護者同士で連絡を取りたいからといって、一方の保護者から他方の保護者の連絡先を教えてほしいと言われても、他方の保護者の了承を得ずに連絡先を教えることはできません。

職員の個人情報

 職員も個人情報を大切に取り扱われるべき一人です。保護者から職員の個人情報を聞かれたからといって、何でも答える必要はありませんし、適切でもありません。公立園では、職員は公務員であるため、職員の職務に関する個人情報の取扱いは私立園の職員と若干異なる面があるものの、職員のプライベートに関する個人情報は、公立園・私立園を問わず保護されます。

行政機関との関係

 警察や児童相談所からの問合せに対しては、問合せ内容が「警察や児童相談所の業務(犯罪捜査や虐待対応等)にとってたしかに必要だ」と思われるものであれば、その内容が個人情報に関わるものであっても、本人の同意なく回答して構いません。このような場合、個人情報保護法・個人情報保護条例は回答を許容しています。

 ただし、電話での問合せを受けた場合は、警察や児童相談所を語るなりすましの可能性もあります。面識のある職員からの電話以外では、既に把握している警察や児童相談所の連絡先か、代表電話にかけ直すべきでしょう。

 次回は、⑥危機管理について解説します。

[著者プロフィール]

吉永公平(よしなが・こうへい)
名古屋大学法学部卒業、名古屋大学法科大学院修了後、2012 年弁護士登録。法律事務所にて勤務した後、2014 年春日井市入庁。現在、総務部参事。職員からの法律相談や職員研修、庁内報の発行、要保護児童対策地域協議会(実務者会議)への参加等を主な業務としている。兼業として、中京大学総合政策学部(地方自治法)・名古屋学院大学法学部(情報法)・名古屋大学法学部(法曹養成演習Ⅳ実務)非常勤講師や、他の自治体や劇場での研修講師も務める。愛知県弁護士会行政連携センター運営委員会委員。1児の父として約3か月の育児休業を取得。

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『ズバッと解決! 保育者のリアルなお悩み200 園児の呼び方から送迎トラブル、園内事故まで』
吉永公平/著
(発行年月: 2022年4月/販売価格: 2,310 円(税込み))

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