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第22回 カフェ発 なぞの請求 宅配便の連絡と迷惑メール(前編)
ICT
2019.06.26
迷惑メールが増える手がかりを探る
「そのスパムっていうやつ、なんだかとってもうっとうしくて。プリンセス柄を孫に自慢
したかっただけなんだけど…」
里中がスマホを触りながら言った。
「スパムフィルターを入れましょうか。」
絵美が言った。
「スパムフィルター?」
「迷惑メールを自動的にはじいてくれる機能のことです。」
「はじく?」
「他のフォルダに、なんですが…」
絵美がどもりながら言いかけたとき、加藤が口を出した。
「単純に言うと、自動的に見えなくなるようにする機能です。」
「便利そうね。是非お願いしたいわ。一日何十通もきて、消すのがとても大変で。」
里中は、絵美にスマホを差し出すためにスマホにログインしながら言った。
「でも、ネットショッピングだけでそんなに来るようになるかなぁ。」
絵美は里中のスマホを受け取りつつ言った。
「どこで買ったんですか?」
「アマゾネス、っていうサイトよ。お友達のお嬢さんがね、世界で一番有名なネットショッピングサイトだって教えてくれたの。」
「サイトを利用すると、確かにメールは増えるけど、一日に何十通にもならないはずだな。」
加藤がつぶやきながら、
「他のサイトとかも利用しましたか?」
と、尋ねた。
「ううん、スマホから個人情報を入れると怖いじゃない。よくここでも竹見先生の話を聞いているし。」
竹見は、このカフェデラクレの常連で、数年前に近所の帝都大学を定年退職していた。里中とも常連同士、よく顔を合わせていた。
そんななか、絵美は里中のスマホでメールアプリを立ち上げてスパムを見ていた。
「里中さん、アマゾネスからのメールだけじゃないですね。他にもいっぱいスパムが来てそう。確かにこれだけあると大変そう。」
「え? アマゾネスのせいじゃないの?」
「たまたま同じ時期になったようですね。」
加藤はコーヒーのドリップサーバーをきれいに洗い、水を切っていた。
「他にも何か事情がある気がしますね。アマゾネスで買い物をするころに、メールアドレスをどこかに入力しませんでしたか?」
ドリップサーバーを拭きながら尋ねた。
「そんなことないわよ。アマゾネスでの買い物は初めてだったから、何度もメールをチェックしたりしていたぐらいだわ。」
「それだけじゃあ、スパムメールが増えたりはしないですよね。」
絵美はだんだん自分の言っていることがわからなくなったようだった。
「絵美ちゃんの考えのとおりだよ。メールをチェックするためにメールアプリを立ち上げたぐらいでは、スパムメールは増えないよ。」
加藤は言った。
つづく