「自治体の獣害対策」を特集―「自治体法務研究」2024年夏号

時事ニュース

2024.06.13

目次

  1. 特集内容

「自治体法務研究」2024年夏号の特集は、「自治体における獣害対策を考える」です。
近年、気候変動や環境変化により、野生鳥獣の市街地等への出没が増加しています。
クマなどに襲われる被害も相次いでいますが、こうした野生鳥獣による農作物被害や地域住民への人身被害は全国的に深刻な問題です。
住民が安心安全な暮らしを送るために、自治体は獣害の防止に向けて、どのように有効な対策を講じていけばよいかについて特集しました。

特集の内容を紹介します。

特集内容

①鳥獣による被害防止に関する法律のポイント
富山大学学術研究部社会科学系教授/神山 智美

 野生鳥獣による農作物被害や、地域住民の安心安全な暮らしへの脅威が深刻な問題となる中、鳥獣による被害防止に関する法体系を概観し、自治体職員が知っておきたい各法律のポイント、関連する法律について解説。その上で、国際的な動向も踏まえた今後の被害防止に向けた課題を考察しています。

②獣害の解決に向けた市町村レベルの計画策定
岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域教授/九鬼 康彰

「鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律」に基づく鳥獣被害防止計画を作成した市町村数は、1517市町村(2023年4月時点)。これまで農村の集落から市町村という範囲で被害状況を調査し、対策の改善や検証を行ってきた筆者が、被害防止特措法とそれに基づく被害防止計画について考察しています。

③野生鳥獣による農作物被害をどう防ぐか
東洋大学経営学部マーケティング学科教授/室山 泰之

 野生鳥獣による農作物被害金額は、平成22年度の239億円をピークに令和4年度は156億円と減少傾向にあるものの、営農意欲の低下や耕作放棄地の増加につながっています。なぜ農作物被害が発生するのか、被害を軽減するにはどうすればよいのかについて概説しています。

④クマによる人身事故をどう減らすか
特定非営利活動法人日本ツキノワグマ研究所理事長/米田 一彦

 近年、クマの生息域の拡大と生息数の増大によって、全国各地でクマの出没情報が数多く寄せられ、人身事故が多発して深刻な問題となっています。クマによる人身事故を減らすためには、どうすればよいでしょうか。被害の傾向を見ながら、山中のほか、開けた耕作地や市街地に出没したクマへの対応法について解説しています。

⑤野生鳥獣の捕獲に係る地域人材の確保~鳥取県の事例を踏まえて~
鳥取県鳥獣対策センター副所長/西 信介

 鳥獣害対策においては、野生鳥獣の捕獲に係る人材の確保・育成が重要です。しかし、担い手の高齢化が進み、全国的に人材不足が課題となっています。鳥取県の例を紹介しながら、狩猟者への様々な支援策など、人材の確保・育成にどのように取り組んでいけばよいかについて考えます。

⑥これからの地域社会のための獣害対策~地域連携を政策として可能とするには~
兵庫県立大学自然・環境科学研究所教授/山端 直人

 全国の農村で「獣害」が問題となっていますが、正しく対策を講じれば被害は確実に減らせます。獣害という社会課題解決に向けて、どのように地域社会の仕組みづくりを進めていけばよいでしょうか。「自助」、「共助」、「公助」の課題、地域での合意形成のステップなどを踏まえて、これからの地域社会のための獣害対策について考察します。

〔自治体の取組事例〕
①北海道札幌市
「さっぽろヒグマ基本計画」策定と札幌市のヒグマ対策

 札幌市では、平成29年に「さっぽろヒグマ基本計画」を策定し、「ゾーニング管理」を導入して、区分に応じたヒグマ対策に当たってきました。しかし、市街地に出没したヒグマにより市民が負傷した事例を踏まえて、令和5年、これまでの計画を大幅に見直した「さっぽろヒグマ基本計画2023」を策定し、より効果的な対策を推進しています。

②島根県美郷町
獣害対策は手段、その先に見る地域振興「美郷バレー構想」

 美郷町は、町の勝ち残りのための最重要戦略として、鳥獣対策版シリコンバレーを目指す「美郷バレー構想」を掲げ、イノシシによる獣害を逆手に取った山クジラ地域ブランドの取組を強みとしています。獣害対策で培ったノウハウを生かして産官学民で連携して新たな町の魅力、持続可能な地域振興につなげていきます。

③南アルプス食害対策協議会
様々な関係機関が連携してシカの食害から高山植物を守る

 国、長野県、信州大学、伊那市を始めとする4自治体から成る「南アルプス食害対策協議会」では、シカの食害から貴重な高山植物を守るため、防鹿柵の設置やシカの個体数調整などの対策を行っています。これらの取組によって、少しずつ高山植物の植生回復が見られるようになり、効果を上げているところです。

 

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特集:自治体における獣害対策を考える

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