最新法律ウオッチング

月刊「地方財務」

最新法律ウオッチング―法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律(2022年12月16日から起算して20日を経過した日から施行)

自治体法務

2023.04.13

※2023年2月時点の内容です
最新法律ウオッチング 第122回 寄附不当勧誘防止法
(『月刊 地方財務』2023年3月号)

法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律

 2022年の臨時国会において法人等による寄附の不当な勧誘の防止等に関する法律が成立した。

 宗教法人による高額の寄附の勧誘等の実態が明らかになり、これへの対応を求める声が高まっていたところ、政府は、法人等からの寄附の勧誘を受ける個人の権利の保護等を図る観点から、法人等による不当な寄附の勧誘を禁止し、当該不当な寄附の勧誘を行う法人等に対する行政上の措置等を講ずるための法案を国会に提出し、成立した。

寄附不当勧誘防止法

●寄附の不当な勧誘の防止
 この法律では、法人と、法人でない社団・財団で代表者・管理人の定めがあるものを「法人等」とした。また、「寄附」については、契約による寄附に加え、契約ではない寄附(単独行為)も対象とした。その上で、法人等は、寄附の勧誘に当たっては、①個人の自由な意思を抑圧し、勧誘を受ける個人が寄附をするか否かについて適切な判断をすることが困難な状態に陥ることがないようにすること、②寄附により、個人やその配偶者・扶養義務を負う親族の生活の維持を困難にすることがないようにすること、③勧誘を受ける個人に対し、勧誘を行う法人等を特定するに足りる事項を明らかにするとともに、寄附される財産の使途について誤認させるおそれがないようにすること、に配慮しなければならないこととした。

 また、法人等は、寄附の勧誘をするに際し、①個人がその住居やその業務を行っている場所から退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず、退去しないこと、②勧誘をしている場所から個人が退去する旨の意思を示したにもかかわらず、退去させないこと、③個人に対し、寄附について勧誘をすることを告げずに、個人が任意に退去することが困難な場所であることを知りながら、個人をその場所に同行し、その場所で勧誘をすること、④個人が勧誘を受けている場所で、個人が寄附について相談を行うために電話等で当該法人等以外の者と連絡する旨の意思を示したにもかかわらず、威迫する言動を交えて、連絡することを妨げること、⑤個人が、社会生活上の経験が乏しいことから、勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、勧誘を行う者も個人に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、寄附をしなければ勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げること、⑥個人に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、個人やその親族の生命、身体、財産その他の重要な事項について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避することができないとの不安をあおり、又はそのような不安を抱いていることに乗じて、その重大な不利益を回避するためには、寄附をすることが必要不可欠である旨を告げること、により勧誘を受ける個人を困惑させることを禁止した。

 さらに、法人等は、寄附の勧誘をするに際し、借入れ、居住用の建物等や生活の維持に欠くことのできない事業用の資産で事業の継続に欠くことのできないものの処分により、寄附のための資金を調達することを要求することを禁止した。

 そして、内閣総理大臣は、法人等が不特定又は多数の個人に対して禁止行為をしていると認められる場合に、引き続き当該行為をするおそれが著しいと認めるときは、法人等に対し、当該行為の停止その他の必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができ、勧告を受けた法人等が、正当な理由がなくてその勧告に係る措置をとらなかったときは、法人等に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命ずることができることとした。この命令違反については、罰則を設けた。

●寄附の意思表示の取消し等
 不当な勧誘により困惑して寄附の意思表示をした場合の取消しについて定めた。

 また、子や配偶者が婚姻費用・養育費等を保全するための債権者代位権の行使に関する特例として、被保全債権が扶養義務等に係る定期金債権(婚姻費用、養育費等)である場合に、この法律や消費者契約法に基づく寄附(金銭の寄附のみ)の取消権、寄附した金銭の返還請求権について、履行期が到来していなくても債権者代位権を行使可能とした。

●施行期日等
 この法律は、一部を除き、公布の日(2022年12月16日)から起算して20日を経過した日から施行された。

国会論議

 国会では、被害者救済と被害の再発防止の見地から、法人等が寄附の勧誘を行うに当たっての配慮義務について、「十分に」配慮しなければならないとするとともに、配慮義務の遵守についての内閣総理大臣による法人等への勧告と、法人等がこれに従わない場合の公表について定める修正が行われた。

 

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