最新法律ウオッチング
最新法律ウオッチング―特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法の一部を改正する法律(2022年3月末施行)
自治体法務
2022.04.06
※2022年2月時点の内容です。
最新法律ウオッチング 第116回 半導体製造基盤確保法
(『月刊 地方財務』2022年3月号)
2021年の臨時国会において先端半導体の製造基盤確保のための関係法律の一部改正法が成立した。
デジタル化が急速に進展する中、先端半導体は、パソコンやスマートフォンといった情報端末のみならず、自動車や医療機器等のあらゆる分野に使われており、その安定供給体制の構築は非常に重要となっている。他方、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によるデジタル需要の増大により、半導体不足が顕在化している。また、昨今では、地政学的な事情により、半導体に関するグローバルサプライチェーンが影響を受けるリスクが高まっている。このため、我が国で先端半導体の安定供給体制を構築することは、我が国における産業基盤の強靱化に資することに加え、我が国が半導体産業における戦略的自律性、不可欠性を確保する観点からも重要となっている。
こうした中、半導体の製造拠点の整備には巨額の投資が必要となるため、諸外国では、半導体製造基盤の確保に向けて、これまでとは異なる強力な政策支援が展開され、我が国でも他国に匹敵する取組を早急に進め、我が国における先端半導体の製造基盤の確保に向けた企業の投資判断を後押しすることが必要となっている。
政府は、こうした状況を踏まえ、法案を国会に提出し、成立した。
半導体製造基盤確保法
●半導体生産施設整備等計画の認定
「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」(5G促進法)を改正し、特定高度情報通信技術活用システム(5G情報通信システム)に不可欠な大量の情報を高速度で処理することを可能とする半導体で、国際的に生産能力が限られている等の事由により国内で安定的に生産することが特に必要なものとして政令で定める性能を有するものを「特定半導体」と定義した。
その上で、特定半導体やその材料・生産装置の生産施設の整備や当該生産施設における生産を行おうとする事業者は、これに関する計画について、経済産業大臣の認定を受けることができることとした。
そして、経済産業大臣は、計画の内容が経済産業大臣の作成した指針に照らし適切である、特定半導体等の生産が継続的に行われると見込まれる、生産施設の整備等が円滑かつ確実に実施されると見込まれる、特定半導体等の需給がひっ迫した場合における増産等の取組が行われると見込まれる、技術情報の適切な管理体制が整備されている、といった要件に適合すると認めるときは、認定をすることとした。
●認定計画に係る支援措置
日本政策金融公庫は、指定金融機関に対し、計画の認定を受けた事業者が計画に従って特定半導体等の生産施設整備や生産を行うために必要な資金の貸付けに必要な資金を貸し付ける業務を行うことができることとした。
また、中小企業投資育成株式会社は、中小企業者が認定を受けた計画に従って特定半導体等の生産施設整備や生産を行うために資本金額が3億円超の株式会社を設立する際に発行する株式の引受け・保有等ができることとした。
さらに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、計画の認定を受けた事業者が特定半導体等の生産施設整備や生産を行うために必要な資金に充てるための助成金の交付や、必要な資金の貸付けを行う金融機関に対する利子補給金の支給等の業務を行うこととした。
●NEDO法の改正
「国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法」を改正し、助成金の交付等をNEDOの業務として位置付けるとともに、助成金のための基金を設けることとした。
●施行期日
この法律は、2022年3月末までに施行される。
国会論議
国会では、この法律による措置が他国に匹敵する内容になっているかについて質問があり、政府から、今後、ステップ1として、半導体の国内製造基盤の整備に取り組み、ステップ2として、2025年以降に実用化が見込まれる次世代半導体の製造技術開発を国際連携で進め、ステップ3として、2030年以降をにらみ、ゲームチェンジとなり得る光電融合などの将来技術の開発などにも着手していくこと、また、2021年度の補正予算には政策パッケージとして7740億円を盛り込み、官民合わせて1兆4000億円を超える投資を行っていくとの説明がされた。
また、海外資本が入った企業における技術流出等のリスクについて質問があり、政府から、計画の認定に当たり、外為法、不正競争防止法等の国内法令の遵守、技術情報の管理のための体制整備などの技術流出の防止策等を審査するとの説明がされた。