議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第51回 本会議は「三密」から逃れられないのか?

NEW自治体法務

2021.07.15

議会局「軍師」論のススメ
第51回 本会議は「三密」から逃れられないのか? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2020年6月号

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、オンライン会議で本会議や委員会(以下「本会議等」)を行えないかとの相談を、3月あたりから複数受けた。その理由は、多くの議会の議場や委員会室では、密閉・密集・密接の「三密」回避が困難だからである。

■オンライン化に関する私見

 結論から言えば私は、議員定数の半数以上の議員の出席を定足数とする、地方自治法(以下「法」)113条の規定により、本会議のオンライン化はできないと解している。

 論点となるのは、「出席」と「議場」の概念である。出席は特定の場所に現に集まることを意味し、参集を求められる場所は議場である。実体がない仮想上のオンライン会議に参加することをもって、議場に参集していると解するには無理があり、拡大解釈と考えるからだ。

 法115条に定める議事公開の原則の観点からも、オンライン会議では不特定多数の一般市民傍聴に、現行と同等レベルで対応することは難しいという課題もある。

 委員会についても、詳細規定は条例等に委ねられているものの、本会議の下部審査機関であり、一連の議案審議における一工程であることに鑑みると、開会要件は本会議と同様であり、オンライン化し得るのは任意の会議に限ると解していた。

■行政課長通知に関する私見

 だが、この件に関して、法を所管する総務省自治行政局行政課から4月30日付で通知が発出された。その主旨は、開会要件が法定されている本会議ではオンライン会議はできないが、各々の議会に規定が委ねられている委員会では、条例、会議規則の改正等を行えば可能との見解を示した技術的助言である。

 行政課が現行の標準会議規則等と矛盾する見解を示すことは異例で、正直言って驚いた。会議規則さえ廃して条例化した大津市議会では既に「標準」とは無縁であるが、現状はこれに準拠している地方議会が圧倒的に多いからだ。

 だが実務上は、委員会だけをオンライン化しても会期日程は完結できず、メリットは限られる。また、報道によれば、新型コロナウイルス対策限定の措置とのことであるが、災害時にも適用しない合理性はないように思える。

 もちろん、当該通知に法的拘束力があるわけではないが、非常時におけるオンライン会議の必要性を国も認識したという意味では、議会BCPの観点から望ましいものであろう。

■望むべき本会議のミライ

 大津市議会においては、採決以外では議員の本会議出席は定足数に限り、他議員は控室等で中継視聴することによって、三密を回避する対策を決定した。だが、それは対症療法に過ぎず、非常時でも議会運営を継続するための根治療法とはなり得ない。三密回避だけでなく、議会内でのクラスター発生時でも、議会機能を維持できる抜本的対策が必要である。

 そのためには公開原則に適う遠隔審議手法とともに、議場での電子採決と同様に議決可能な遠隔採決の手法確立も求められよう。

 杞憂と思われるかもしれないが、庁内でクラスターが発生し、本庁の全面閉鎖にまで追い込まれた本市の苦い経験からは、参集せずに議決まで完結できる非常用手段が必要と感じる。その前提として、まずは本会議のオンライン化を可能とする法改正を切に望むものである。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

この記事をシェアする

「議会事務局に配属になった!何をするんだろう?」そんな疑問に答える1冊!

オススメ!

自治体の仕事シリーズ 議会事務局のシゴト

2017年7月 発売

本書のご購入はコチラ

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

関連記事

すぐに役立つコンテンツ満載!

地方自治、行政、教育など、
分野ごとに厳選情報を配信。

無料のメルマガ会員募集中

清水 克士

清水 克士

大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員

しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

閉じる