議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第36回 法が求めることを諦めていいのか?

NEW自治体法務

2020.11.26

議会局「軍師」論のススメ
第36回 法が求めることを諦めていいのか? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2019年3月号

 前号に引き続き、札幌市における「議会研究会合同フォーラム」で議論された「自治体規模と議会改革」について、議会立法の機能発揮の観点からの具体論を述べたい。

■小規模議会の課題

 議会立法の補佐を、町村議会における平均2.5人程度の局職員だけでこなすのは、現実には困難であろう。

 望まれる対応としては最低、議員数の半数程度までの局の増員強化が正攻法だが、現実的な次善の策としては、事務局機能の広域化が考えられる。だが法定された事務局の共同設置は、その適用例が未だないことからも、机上の空論であることは明白である。「チーム議会」として議員との協働に必須となる信頼関係や、執行部との実務上の調整がポイントであることを踏まえれば、必要時だけ外部に依存して成果を得るのは難しいだろう。

 あくまでキーマンは各議会事務局の職員であり、専門的知見の活用を制度として組み込んだ「軍師ネットワーク」(詳細は1月号参照)のような持続可能性が担保された実務レベルでの広域連携で、必要となる政策法務力を補完することが、現実的選択肢ではないだろうか。

■大規模議会の課題

 一方、大規模議会では、議会としての合意形成プロセスが課題となる。多くの場合、規模が大きくなるほど会派中心の意思形成となり、議会全体で合意形成しようとする意識が希薄になるからである。

 しかし、会派は有権者が投票行動を示し得ない存在のため民主的正統性に欠け、自治法上も政務活動費の交付単位としての任意集団でしかない。会派活動を公務とみなす法的根拠がない以上、会派視察への職員同行が違法と認識されていることと同様、局職員が会派における条例案策定に関与することには、法的疑念が生じる。もちろん、会派議員だけで完結すれば問題はないが、局職員の関与なしに制定を目指すのは現実的ではないだろう。会派の存在意義を否定するものではないが、機関としての立法スキームの根幹にはなり得ないのである。

 したがって、議会総体としての立法活動を支える制度整備に注力することが必要となる。大津市議会では、会派を超えた議論を促進するために、「政策検討会議」を制度化している。これは政策立案テーマの提案会派から座長を選出し、非交渉会派を含む全会派から1人ずつ選出された議員間で討論する制度である。委員会提案と異なるのは、全会派が最初から議論することによって、原案策定段階で、概ね議会としての意思となることである。議会総体としての提案を目指して、合意形成に資する仕組みであるところに意義がある。

■できないから諦めていいのか?

 議会立法には、それぞれに課題が多いのが現状である。しかし、機関としての本質的任務に関して、首長が「現状では難しいから諦めた」と開き直ったら、議会は許容するだろうか。任務を完遂する努力を求めるのではないか。

 立法機能は二元代表制における議会の本質的機能である。機関に与えられた権限は最大限活用することを法は前提としており、各々の判断で放棄することを許容する法的根拠はない。

 規模にかかわらずそれぞれの課題を克服し、本来の機能発揮ができるよう、思考停止せず不断の努力をすべきではないだろうか。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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