危機管理の基本=多様な価値観を認めること

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2019.04.05

知っておきたい危機管理術 第30回 危機管理の基本=多様な価値観を認めること

『地方財務』2017年2月号

 2016年4月に、障害を理由にした差別を禁じ、障害者への「合理的配慮」を義務付ける内容の「障害者差別禁止法」が施行されました。自治体や学校、民間事業者を対象とした法律で、皆様の職場でもいろいろな支援や対応が行われていることでしょう。

 法律でいう「合理的配慮」は、例えば学校では、教育内容・方法(学習上・生活上の困難の改善・克服の配慮等)、支援体制(専門性のある指導体制整備、災害時等の支援等)、施設・整備(校内環境のバリアフリー化等)の3点を行う必要があります。具体的には、聴覚過敏の児童生徒等のために、教室の机や椅子の脚に雑音軽減のために緩衝材をつけること等です。ただし、体制面や財政面において、均衡を失した、または過度の負担を課すものではありません。

多様な価値観を認める

 2016年7月に、障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者19人が殺害される事件が起こりました。容疑者の行動の背景には、障害者に対する偏見・差別意識等があることが報道されています。バリアフリー、ノーマライゼーション、ダイバーシティ(多様性)、LGBT、障害者差別禁止と、社会は「共生」の方向に進化しています。しかし、それでもこうした事件が生じるのは、まだまだ社会全体に「危機管理」の概念が浸透していないからでしょう。ここでいう危機管理とは、「多様な価値観を認めること」です。

 日本での障害者教育の歴史は長く、質も高い持代が続いてきましたが、逆に、インクルーシブ(障害を特別扱いするのではなくあくまで「特別な教育的ニーズを持つ子供」とする)教育の導入が遅れてしまいました。2006年の学校教育基本法改正により、「特殊教育」から「特別支援教育」に転換したことで、現在、日本型インクルーシブ教育が進もうとしています。米国のように、障害者の95%以上が通常学級に通学している状況には及びませんが。

災害時の支援で大切なこと

 ここで、障害者とのかかわりや支援を、災害時の危機管理と絡めて考えてみましょう。

 災害があった場合に支援が必要な人のことを、「災害弱者」「災害時要援護者」と、最近では「要配慮者」「避難行動要支援者」と呼んでいます。我々は、災害時に、こうした人と共にいかに生きのびていくのか、支援していくのかを、常に意識していく必要があります。

 「災害時要配慮者」といった場合には妊産婦・乳幼児・児童等が入りますが、「災害弱者」というと、高齢者・障害者・外国人に分類されます。

 災害時には、「高齢者」は、行動の不便、体調不良、知覚が遅れる、肢体不自由、精神不安定、聴力と視力の弱さが課題になります。「障害者」は、障害の部位によりますが、瞬時に覚知することが困難、(聴覚障害の場合)音声による避難誘導を受けられない、精神的動揺や素早い避難行動の困難等が生じえます。「外国人(旅行者含む)」では、言語の問題で情報や施設利用に支障が出るでしょう。

 これらに対して、主に「行動支援」と「情報支援」を行います。「行動支援」とは、避難所まで一緒に行ったり、事前に情報を得ておくことでリヤカーや車椅子を準備しておくといったことです。「情報支援」では、視覚障害者に、言葉や身振り手振りで避難情報を伝えたり、安全な場所へ誘導したりします。また、物理面では、防災トイレや上部をはずすと竈になるベンチなど、災害弱者にかかわらず有用な備品を避難公園に備えるといったことも必要です。

まずは知識を増やし、理解をしよう!

 2020年の東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり、一人ひとりが今からできることはたくさんあります。まずは、知識を増やし、理解することです。白杖を持っている方を見たとき、その本当の立場をすぐ理解することができるでしょうか。白杖を持っていても全盲とは限りません。スマホを操作することが可能な方もいます。また、バリアフリーといっても、歩道と車道の段差は、視覚障害者に危険を知らせる重要な記号になっています。2016年に地下鉄で盲導犬を連れた視覚障害者が転落死する事故が生じましたが、声のかけ方(前から話しかける、いきなり腕を触らない等)がわからず助ける人がいなかったのかもしれません。避難所の記号を落とし穴と誤解していた(意味を知らせないと記号だけでは認知が不明確)ケースもあります。

 「サービス介助士」や「防災介助士」「障がい者スポーツ指導員」といった資格を取得したり、障害のあるなしにかかわらず一緒にスポーツや遊びを楽しむ場に積極的に参加するなども有効です。

 いざというときのために、障害者とのかかわりを通じて「多様な価値観を知り、認める」という、危機管理の基本を身につける必要があります。

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