
自治体DXナビ
自治体DXナビ|自治体DX人材の確保・育成と成果を支える仕組みづくり/三上 泰地(江東区CIO補佐官)
NEW地方自治
2026.09.11
目次
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この資料は、地方公共団体情報システム機構発行「月刊 J-LIS」2026年6月号に掲載された記事を使用しております。
なお、使用に当たっては、地方公共団体情報システム機構の承諾のもと使用しております。
自治体DXナビ
自治体DX人材の確保・育成と成果を支える仕組みづくり
江東区CIO補佐官
三上 泰地
自治体DXを推進できる人材確保・育成の必要性の高まり
自治体におけるDXの推進にあたり、DX人材の重要性はこれまで以上に高まっています。人口減少や労働力不足が進行する中で、限られた人員で行政サービスを維持・向上させていくためには、業務の効率化や見直しが不可欠となっており、その手段としてデジタル技術の活用が強く求められています。こうした背景から、DXを推進できる人材の確保と育成は、各自治体にとって重要な経営課題の一つとなっています。
こうした自治体の状況を踏まえ、国においては「自治体DX推進計画」「人材育成・確保基本方針策定指針」により、地方公共団体におけるデジタル人材の確保・育成の方向性と具体的な取り組みが示されています。これらの計画や指針は、各自治体がDX人材に関する取り組みを進める上で参考となるものといえます。
人材施策と業務成果の接続の難しさ
一方で、DX人材に関する取り組みは広がりつつあるものの、それが業務の見直しや住民サービスの向上といった成果にどのようにつながっているかについては、各自治体において模索が続いている状況です。この背景には、人材の確保と育成が個別の施策として進められ、組織の中でどのように成果を出すかという視点が十分に織り込まれていない場合があります。
人材を「機能(役割)」で捉えるという視点
こうした状況を踏まえると、DX人材の確保と育成は、どのような人材を確保し、どのように育成するかに加え、その人材がどのような役割を担い、どのように組織の中で価値を発揮するのかまで見据える必要があります。例えば、スポーツチームにおいても、優れた選手を集めるだけではチームは勝てず、どの選手は外部から獲得し、どの選手は時間をかけて育成するかを見極めた上で、それぞれにポジションと役割を与え、試合の中で連携しながら力を発揮して初めて成果につながります。
まず、DX人材の「確保」についてです。デジタル分野における高度な専門性を有する人材の確保が難しい背景には、民間企業との競合に加え、技術革新のスピードが速く、求められるスキルの高度化が進んでいることがあります。また、自治体においては3年から5年程度で人事異動が行われることが一般的であり、専門的な知識や経験が組織内に蓄積されにくい構造も影響しています。
こうした状況を踏まえると、各自治体においては、求めるDX人材のモデルを複数の層で定義し、それぞれに応じた確保・育成の方策を組み合わせていくことが重要です。
外から採る人材と、内でしっかり育てる人材
具体的には、高度専門人材については外部からの登用を前提とし、CIO補佐官やシステムアドバイザーといった形で専門的知見を取り入れることが有効です。一方で、所管のDXを推進する職員(江東区ではDX推進サポーター(一般職員から公募)、DX推進リーダー(ICT職等)を設置)については、庁内人材を中心に計画的に育成していくことが求められます(図-1)。
図-1 江東区DX人材確保育成計画

また、内部人材の活用にあたっては、人材の「発掘」と「配置」が重要な視点となります。業務改善やデジタル活用に関心を持つ職員に対して適切な役割とインセンティブを設定することで、DXの担い手として機能する可能性があります。
江東区においては、こうした考え方のもと、DX推進サポーターは庁内公募を経て区長から任命しています。これにより、各部門においてDXを推進する役割を担う人材を明確化するとともに、主体的な参画を促す仕組みを構築しています。
江東区における人材育成の枠組み
ここで重要なのは、単に人材を「見つける」ことにとどまらず、その人材が活躍できる業務やポジションを具体的に設計することです。例えば、DX推進サポーターに対しては、各課の業務改善テーマを担う役割を明確にし、実際の業務の中でデジタル活用やBPRを実践できる機会を設定します。また、DX推進リーダーについては、複数部門にまたがるプロジェクトへの参画や調整役を担うなど、より広い視点での役割を付与することが考えられます。
次に、「育成」の観点です。DX人材の育成においては、研修等による知識・スキルの習得に加え、実務の中でそれらを活用する機会を設けることが重要です。知識やスキルが業務の中で活用されることにより、理解が深まり、実践力として定着していきます。
江東区においては、DX人材確保育成計画に基づき、DX人材を役割やレベルに応じて整理するとともに、それぞれに求められる能力や役割を明確化しています。また、段階的な育成の仕組みを設けることで、一般職員からDX推進サポーター、さらにDX推進リーダーへと成長していく道筋を示しています(図-1)。
業務と連動した人材育成の実践
さらに、育成を実効性のあるものとするためには、業務との接続が不可欠です。江東区では、各部門に配置されたDX推進サポーターが中心となり、DX推進課の職員と連携しながら、業務改善やデジタル活用の取り組みを進めています。これにより、各部門の課題に即した取り組みが推進されるとともに、職員が実務を通じてDXの考え方や手法を習得する機会が生まれています(図-2)。
図-2 DX人材育成の実践

おわりに
今後、自治体DXがさらに進展していく中で、人材に関する取り組みは一層高度化していくことが想定されます。その際には、確保、育成、そして成果を一体として捉える設計が、組織としての持続的なDX推進力を確保する上で重要な要素となると考えられます。
次号では、こうした人材に実際の現場でどのように活躍してもらうのか、具体的な取り組みや運用の工夫に焦点をあててご紹介します。
Profile
三上 泰地(みかみ・たいち)
大学院修了後、アビームコンサルティング株式会社に勤務し、全国の自治体向けにDX推進による「住民サービスの向上」と「行政事務のBPR」を支援している。江東区CIO補佐官として、区民にやさしく、職員が働きやすい、誰もが便利で快適に暮らせる『Smart KOTO』の実現に向けて専門的・技術的支援を行っている。また、東京都立大学の非常勤講師として、デジタル人材の育成に携わっている。
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月刊 J−LIS 2026年6月号
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