【特別企画:自治体行政改革のイマ】消耗品管理の集約・一元化で実現した「ヒト・モノ・カネ」の改革(月刊 地方財務 2026年8月号)

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2026.08.06

★この記事は、月刊「地方財務」2026年8月号に掲載されています。本誌はこちらからチェック!

月刊 地方財務 2026年8月号

月刊 地方財務 2026年8月号
別冊付録:事業別地方債実務ハンドブック 令和8年度版
編著者名:ぎょうせい/編
販売価格:3,960 円(税込み)
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はじめに

 行政課題の多様化や市民ニーズの高まり等によって自治体業務は複雑化している。国や自治体もDX化を推進しているが、現場の職員数減少などで苦労は尽きない。そうした中、定型業務のなかで消耗品の発注や管理のあり方に着眼したのが政令指定都市熊本の業務支援課だ。本庁舎の部署ごとに行ってきた業務を集約・一元化し、短期間で顕著な成果を上げて注目されている。同様の取組みを進める大阪府堺市の事例とともに紹介する。

【事例1】震災契機の市役所改革で消耗品管理を一新(熊本市)

 2016年4月の熊本地震から今年で10年。前震・本震で2度の震度7を記録するという震災により、熊本市内では熊本城の一部が崩落するとともに、死者90人(関連死含む)、重傷者は766人に上り、住家被害も全壊5764件をはじめ全部で13万6695件に達した。

 被害の大きさを前に、熊本市では「これまでのやり方だけでは行政課題に十分対応できない」という強い危機感が共有された。復旧・復興に向け、仕事のあり方を抜本的に改革しようと「市役所改革」を打ち出したのは翌2017年のことだった。当時の組織改革はコストカットに象徴される行革が主流だったが、熊本市では、職員の働き方や組織風土の改革にも挑戦。「市民満足度・職員満足度の高い市役所」を目指す姿として掲げ、持続可能な行政経営の実現に向けた先進的な施策が盛り込まれていた。当初、改革全体のしくみづくりを担ったのは改革プロジェクト推進課だったが、市民からの膨大な申請受付・処理等の定型的な行政事務の集約・一元化や物品管理をはじめとした内部事務のあり方も課題とされ、その改革を実行する新たなセクションとして2025年に誕生したのが総務局に置かれた業務支援課だった。

 同課の野口翔太主査は「定型的な行政事務を集約・一括処理する総合行政事務センターによるアウトソーシングの推進と、内部事務を集約し効率的に処理するワークステーションの管理・運営が主な業務です」と話す。

 野口さんがこれまで推進してきた取組みの一つが、本庁舎のワークステーションを活用した物品購入管理の一元化だ。それまでの全庁的な消耗品購入は、部署ごとに予算計上して発注から在庫管理まで行っていたため、事務作業の分散化による人件費コストや個別発注による振込手数料の増加、さらには各課管理による在庫過多という問題を抱えていた。この課題解決にあたり野口さんが出会ったのが消耗品を全庁規模で集中管理できるコクヨマーケティング(株)の消耗品集約化システム「サプライドック」だった。もともと同社からは執務環境整備等のオフィス改革サポートを受けていたが、モデルオフィスを視察したり、先行都市の横浜市や渋谷区の取組みの実際を見て、システムのコンセプトや詳細情報を把握。導入に向けた動きを強めていった。

野口翔太さんの写真
熊本市総務局人事部業務支援課の野口翔太主査

「ヒト・モノ・カネ」の無駄を省くサプライドック

 サプライドックは、多部署で分散管理していた消耗品をフロアごとに1か所で集中管理するしくみだ。定番品が少なくなれば「補充カード」で事前申請できるため、欠品や過剰在庫の防止につながる。こうした集約化は事務負担の軽減や支払手数料の削減を実現するとともに、その副産物として、各部署で在庫保管に使用していたスペースが不要となり、新たな執務スペースの創出にもつながっている。いうならば、「ヒト・モノ・カネ」の無駄を省ける三位一体の効率化システムといえる。

 熊本市は、2021年にコクヨ(株)と「新たなワークスタイルの実証実験に関する連携協定」を締結。二人三脚でオフィス改革を進めていくことになった。2023年度には、物品購入管理の一元化に向けた実証実験に着手。その結果、対前年度比で物品発注件数32%減、職員対応時間55%減という成果を得た。「各部署で保管していた共通事務用品を集約したところ、ひとつの会議室が埋まるぐらい集まりました。それだけ各課は過剰在庫を抱えていたということです」と野口さん。無意識が生む無駄を実感させるエピソードだ。

 ところで、サプライドックに対する職員の反応はどうなのか。野口さんによれば、各課の総務担当職員の声は概ね良好とのこと。なかには「大きな作業軽減につながっている」との評価もあるという。消耗品等の調達・管理という定型事務は、誰かがやらなければならないが、担当職員からすればコア業務に集中できないストレスがつきまとう。サプライドックは効率化のみならず、「働き方改革」にも貢献していることが証明できたことになる。

 これらの結果に好感触を得た熊本市は、2024年度に対象を4フロアへ拡大、2025年度は全9フロアへと展開させた。同年度の効果指標を見れば、支出件数は2023年度比61%減、職員人件費は約740万円減、物品購入コストは1040万円減(当初予算比)という結果につながった。このように、改革プロジェクト推進課時代から取り組んできたペーパーレスやDX化への取組みとも相俟って、熊本市はオフィス改革の先進市として注目を集め、問い合わせや視察が増えているという。

障がい者雇用とWeb発注

 実はこのサプライドック導入には、もうひとつのねらいがある。それが2025年度に設置した「ワークステーション」の活用だ。ワークステーションとは一般的に障がいのある職員が庁内の定型業務や事務補助業務を集中的に行う業務拠点を指すが、熊本市ではサプライドックによって一元化された物品購入・管理業務をワークステーションの主要業務の一つとして位置付け、そこで新たに雇用した7人の障がい者スタッフ(会計年度任用職員)が在庫管理や補充作業などを担っている。今年7月1日施行の改正障害者雇用促進法は、自治体に対して従前の2.8%から3.0%へと障害者の法定雇用率引き上げを義務付けている。本庁舎内の業務効率化に併せ、障がい者の雇用確保や活躍機会の創出を図るというアクションは、これも「働き方改革」の一環であり、これから全国に注目されることになるはずだ。

 障がい者を想定したワークステーション従事者への支援を機能面で可能にしているのは「QRコード補充システム」と「Web発注(あっとオフィス)システム」だ。ワークステーション従事者が各フロアの「補充カード」を回収し、職員がカードに記載されたQRコードを読み取り、Web上で発注する。注文された物品は早ければ翌日には納品され、各サプライドックに補充される。かつての電話やメールでその都度確認していた手間に比べ、効率には雲泥の差があり、なにより誤りの余地がない。配架品の単価は、都度見積もりではなく年1回の単価契約とすることで、手間を省きスケールメリットも期待できる。また、発注履歴がデータとして蓄積されることで、いつ、どの部署で何が購入されたかも分かり、正確な予算査定ができる。まさに導入前の課題を解決へと導くなかで、適用対象の範囲拡大が図られてきたことがわかる。

 導入を支援したコクヨマーケティングの石井敦法さんは、「サプライドックは、所属を選ばず自由な利用を可能としているため、各課や個人に紐づかせることはできない仕組みです。そのため導入当初に各課の事業消耗品費を集約してもらう必要がありますが、結果として見える化が進み、予算を必要以上に使い切ることもなく、適正なサイズでの購買に繋がっていると思います」と話す。

サプライドックの写真
庁舎内の文具や事務消耗品をQRコードで一元管理・共有化する「サプライドック」。備品の無駄なストックを防ぎスペースも有効活用できる。

小規模自治体でもまず第一歩を

 熊本市は人口73万人を抱える政令市。行政組織も予算規模も一般市や町村とは大きく異なるのが現実だ。効果が望めるとわかっても、小規模自治体は導入に二の足を踏むのではないか。だが、その点について野口さんはこう話す。「個人的には可能だと思いますし、むしろ小規模自治体の方が庁舎は集約化されていて人的リソースも限られていますから、導入のメリットはあると思います。実情に合わせて例えばサプライドックだけを置くとか、Web発注だけを入れるのもいいと思います」。

 最後に熊本市の今後の展開を聞くと、視野は本庁舎から他分野に広がっていた。「理想としては区役所など出先機関にも広げたいですね。現在は一元化の対象範囲が限定的であり、実現に向けてはさまざまな課題がありますが、この取組みを通じて業務効率化と障がいのある職員の活躍機会の創出を両輪で進めていきたいです」。

【事例2】部署別管理との決別(堺市)

 縮小する社会への対応をどう進めるか。これは地方都市共通の課題だが、堺市が策定した「構造改革の基本的な考え方について」(2025年7月)、「堺市組織人員体制の未来デザイン」(同年8月)には、将来への危機感が滲む。恒常的な収支不足等を理由に2021年2月に財政危機宣言を発出(2023年1月解除)したとはいえ、人口一人当たりの製造品出荷額等は政令市中トップの実績(2023年)。いったいどこに課題があるのか。両報告書では「職員数の減少が見込まれるなか、現行体制を維持することは困難」との認識が示され、「従来型の行財政改革に加え、組織運営面にも踏み込んだ構造改革に取り組む」としている。

 堺市総務局行政部行政総務課の宮前誠総括参事役は、それら改革を推進する立場。改革の一環である総務事務における消耗品の発注・管理の現状をこう語る。

 「堺市は課員が10人に満たない課も含め、全部で300課ほどあります。事務用の消耗品の場合、これまで300課すべてが個別に購入し管理していたのです」。

 これを長年続けることで、何が起こっていたのか。実務に携わる行政総務課の樫本綱平改革推進係長は、「今回、コクヨ社のサプライドックを導入するにあたって調べてみたら、個別発注の総件数が年間5800件もありました。抱えている在庫を確認すると10~20年前に購入したものがそのまま残っているケースも散見されたのです」と語る。

 長年の慣習のなかにいて、全体像に気づかなかったという宮前さんも、悪意なき無駄の集積を自戒する。だからこそ、大事にしたのは「購買業務も構造改革の一環であり、職員でないとできない業務以外のノンコア業務をすべて見直す」ということだった。

樫本綱平さんの写真
堺市総務局行政部行政総務課の樫本綱平改革推進係長

特定84品目に絞って標準化

 そこで、宮前さんたちは、まず自治体のオフィス改革に実績あるコクヨのサポートを受け、過去2年間の発注傾向を分析。使用頻度の高い特定84品目に絞ってフロアのサプライドックに配置した。これにより年間2000件程度の発注件数減を見込めると宮前さんは踏んだ。

 驚くのは着手の早さだ。報告書の策定から間もない2025年10月に「特定事務用品消耗品集約・再配架業務」がコクヨに発注され、短い準備期間を経て2フロアでの試行がスタートした。この事業では障がい者の働く場の拡大も位置付けられており、障がいのある職員が庁内の様々な依頼業務を担う「チャレンジオフィス」の職員にとって作業しやすいしくみを調査・研究し、提案から実施することまでが盛り込まれていたため、取組みは慌ただしかった。気になるのは職員の反応だったが、説明ツールの事前提供が効果的だったと樫本さんは振り返る。「初年度は次年度の本格始動に向けた試行でしたが、急な取組みだったため関係課にはコクヨさんがつくったマニュアルと動画を観てもらい、趣旨やしくみを理解してもらいました」。

 そのため批判的な声はなく、局の総務担当課や各課の発注担当者の仕事を減らせたと確信した行政総務課は、本格稼働に向けた準備を加速。ただ、取組みを順次拡大させた熊本市とは異なり、堺市が取った手法は本庁における全面展開だった。全フロアの120課を対象にサプライドックを設置したのである。いかにサプライドックの設置効果に期待していたかがわかる。

宮前誠さんの写真
堺市総務局行政部行政総務課の宮前誠総括参事役

3施策の同時進行で目指す構造改革

 堺市のHPには、各局長による組織の運営方針が掲げられており、2026年度の行財政・構造改革について以下の記載がある。

 「総務局の取組としては、令和7年度に試行した総務事務の一元化や共通事務の集約化を全庁展開し、適宜運用の改善を図ることに加えて、縦割り型の業務プロセスの見直し等を検討・実施します」。

 ここにはサプライドックをひとつのツールとする総務事務の一元化に加え、定型的な行政事務の集約拠点「堺スマート事務オフィス」の設置が明記され、さらに人事部運営方針にはチャレンジオフィス職員の雇用拡充とチャレンジオフィス展開の拡大による全庁的な行政事務の集約化・効率化も示されている。いわばこれらは今年度の総務局マニフェストであり、3つの取組みの同時進行による構造改革を目指していることになる。

 「消耗品の改革は小さな手段と思われがちですが、そうではありません。小さな一歩を踏み出せば、背景の大きな課題も見えてきます。自治体は職員採用も難しい厳しい時代です。一人ひとりの意識改革とともに、小さな取組みの積み重ねが必要な時代ではないでしょうか」。

 宮前さんは、自治体における改革マインドについてこう語って話を締め括ってくれた。


【企画提供】
コクヨマーケティング株式会社
ビジネスサプライ事業本部 官公庁営業開発部第1グループ
〒100-6018
東京都千代田区霞が関三丁目2番5号霞が関ビルディング18階
問い合わせ先:03-5510-3146(代表)
http://www.kokuyo-marketing.co.jp


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