
包括外部監査の分析と評価
【令和7年度 包括外部監査】AIと監査実務者が選ぶ優秀報告書を番付で発表!
地方自治
2026.07.21
最終回(第4回)は、47都道府県の令和7年度包括外部監査結果報告書について、合規性及び準拠性、公正性及び透明性、有効性、経済性、効率性の着眼点を踏まえつつ、①監査の結果・意見の活用度、②監査手続・考察の深度の2つの観点からAI評価と実務者でもある筆者による評価作業を行いました。今回、番付形式でお届けいたします。なお、本稿では、北海道・東北・関東・甲信越・東海を東、北陸・近畿・中国・四国・九州・沖縄を西として整理しました。
AIによる評価
AI番付
| 東 | 西 | ||
|---|---|---|---|
| 横綱 | 青森県 | 横綱 | 愛媛県 |
| 大関 | 愛知県 | 大関 | 大分県 |
| 関脇 | 埼玉県 | 関脇 | 長崎県 |
AI配点基準
| ①監査の結果・意見の活用度:50点 | ②監査手続・考察の深度:50点 |
|---|---|
| ・横断的な整理・体系化 ・改善提案の具体性・実装可能性 ・優先順位・効果測定の明確さ ・一覧性・可読性・措置へのつなげやすさ |
リスクに基づく対象選定・サンプリング 閲覧、質問、現地調査、比較、再計算等の証拠の多様性 定量分析・原因分析・将来影響の考察 合規性・準拠性、公正性・透明性、有効性、経済性、効率性のバランス |
※採点結果上位より横綱、大関、関脇の順
AI番付の評価理由は次のとおりです。
(青森県「青森県警察に係る事業管理及び財務事務の執行」)
指摘・意見をPDCAや内部統制、情報開示などに体系化し、監査後の改善に最も使いやすい。
(愛知県「工業用水道事業に関する財務事務の執行」)
財務分析、他県比較、料金再計算まで行い、監査手続と考察の技術的深度が突出している。
(埼玉県「子育て支援の充実に関する事業の管理及び財務事務の執行」)
KPIや業務時間削減効果など改善後の成果を具体的に測定できる意見が多い。
(愛媛県「産業振興政策に係る財務事務の執行及び管理」)
契約、ルール化、KPI、資料管理という共通課題を横断整理し、実装可能な改善策まで示している。
(大分県「県単独事業(補助金及び委託料)に係る財務事務の執行」)
多数の補助金・委託事業を、合規性、透明性、3E、公平性の共通基準で網羅的に検証している。
(長崎県「人口減少対策に関する事務の執行」)
人口減少という政策目的に対し、アンケートやデータ分析を用いて施策効果まで踏み込んでいる。
監査実務者(筆者)による評価
監査実務者でもある筆者が報告書を読んで採点、番付した結果は次のとおりです。AIと全く異なる結果となりました。
実務者番付
| 東 | 西 | ||
|---|---|---|---|
| 横綱 | 栃木県 | 横綱 | 福井県 |
| 大関 | 山梨県 | 大関 | 山口県 |
| 関脇 | 岩手県 | 関脇 | 岡山県 |
筆者の位置付けた自治体について、理由を含め特徴的な部分をご紹介します。
東の横綱は栃木県(指摘36意見35)とさせていただきました。監査テーマ「公の施設の指定管理事務の執行」では、透明性と有効性の観点が際立っています。指定管理者ごとの事業報告書の作成基準の曖昧さや、SPC(特別目的会社)契約による複雑な運営体制に起因する不透明な実態に鋭く切り込み、情報開示や指定管理料の算定プロセスにおける透明性を強く求めています。また、PFI事業での県民利用の低迷を指摘し、施設の設置目的に対する事業の有効性を指摘しています。
監査人の懐疑心と監査の深度が、表面的なルールの遵守(合規性)の確認にとどまらない点に表れているところが最大の評価ポイントです。現場の帳簿や備品管理の不備を見るだけでなく、実質的に誰が運営を担い、県の監督・監査権限が本当に機能しているかという制度の構造的リスクにまで深く踏み込んでいます。
大関には、「環境保全対策に関する財務事務の執行」をテーマにした山梨県(指摘18意見49)を挙げました。単なる計算の正確性を追うのではなく、行政の価格設定プロセスや制度、指標に潜む非合理性を指摘するなど報告書には他の都道府県には少ないユニークで深い洞察が見られます。環境指標の評価において、県が基準値より改善していると順調さを示すのに対し、監査人は最終目標に至るまでの推定目標値(線形推移)を算出し、実際の進捗が大きく遅れている事実を可視化しています。
関脇は「観光の振興に関する施策に係る財務事務の執行」をテーマとした岩手県(指摘9意見43)にしました。観光施策の効果測定において、単なる前年度比での評価を退け、全国的な需要動向など外部要因と内部要因の切り分けを求めている点を評価しました。利用率の低い事業の予算維持に対しても実績に基づく見直しを迫っています。
西の横綱は、指摘・意見の数が全国最多となった福井県(指摘39意見177)となりました。監査テーマは「障がい福祉事業に係る財務事務の執行」です。指摘・意見数の多さのみで評価したわけではありません。単なる計算ミス等の指摘にとどまらず、担当課が抱える業務の多岐性や書類提出の時期的な集中といった根本的な組織課題に踏み込んでいます。紙ベースの審査からDX化(データ提出や自動照合など)への転換や、事業期間の変更による事務負担の平準化を提案しており、行政運営全体に応用可能な汎用性の高い提言です。
委託先や再委託先における個人情報取扱の報告漏れを多数の事業において指摘し、情報漏えいリスクへの警鐘を鳴らしています。さらに、補助対象財産の処分制限期間の管理体制の構築や、消費税の仕入税額控除に伴う二重利得の排除など、精緻な検証もなされています。全庁的なルールの標準化やマニュアル改訂を促す波及効果の高い監査内容と評価しました。
大関には山口県(指摘46意見100)を選びました。「人口減少を克服する産業・地域振興関連施策に係る財務事務の執行」の報告書から伝わる熱量は横綱級です。福井県が広さと緻密さであれば、山口県は深さと執念の監査といったところでしょうか。人口減少(社会減)という全庁的課題に対し、対象の31事業を3つの視点からマッピングし、施策間の連携不足や弱い部分を可視化する体系的なアプローチが秀逸です。参加者数などのアウトプット指標にとどまらず、人口動態への波及効果を測るアウトカム指標への転換を強く求めています。変化に対応する適応力の維新という横断的な概念を提言し、その場限りの事業実施ではなく、中長期的な視点に立った政策マネジメントの抜本的な高度化を促すなど有効性、効率性の提言がなされています。
関脇の岡山県(指摘24意見53)は「特別会計に関する財務事務の執行」がテーマです。各事業の特性に応じて監査の視点や手続きが巧みに使い分けられており実務的な精度の高い指摘が多く見られています。
AIと筆者の番付を見ても明らかですが、報告書の見え方は、読み手の知識や経験、関心度等により大きく異なるものといえます。毎年夏から秋にかけて全国市民オンブズマン連絡会議でも包括外部監査の通信簿が公表されています。また違った番付が見られると思います。





















