特別企画 趣旨から再確認する自治体債権の減免の実務 第2回 減免事由総論

地方自治

2024.01.29

3 災害減免~天災その他特別の事情がある場合において○○税の減免を必要とすると認める者~

(1) 趣旨

 天災等によって、納税者の財産について多額の損害が生じ、あるいは納税者自身が負傷し、担税力を喪失した場合に減免を行うものです。

 2011年東日本大震災及び震災に伴う原子力災害、2016年熊本地震、2018年西日本豪雨、2020年新型コロナウイルス感染などの災害により、甚大な損害が生じ、全国各地で都道府県をまたぐ広範な範囲で、納税の緩和措置を行うべき社会状況が頻出しています。

 災害は、予期することが不可能で突如発生し、瞬時に収入と財産を失い、損害を被るという結果をもたらします。災害減免は、その重要度が増し、的確かつ柔軟、迅速な対応が求められています。

(2) 要件意義・解釈

ア 天災
 「天災」とは、一般的にいえば、震災、風水害、火災その他これに類する災害をいい、具体的には、
①震災、風水害、冷害、雪害、落雷、噴火、その他の自然現象の異変による災害
②火災、鉱害、火薬類の爆発、交通事故その他の人為による異常な災害
③害虫、害獣その他の生物による異常な災害と定義されます(昭和53・6・21官総4-21(例規)「災害被災者に対する租税の軽減免除、納税の猶予等に関する取扱い要領」の全部改正について(以下、「災害被災者減免取扱要領」といいます。)。
 災害対策基本法2条1項に基づく政令では、「放射性物質の大量の放出、多数の者の遭難を伴う船舶の沈没その他の大規模な事故(災害対策基本法施行令1)」が災害として定められています(他に「災害」を定義するものとして、地税令7の10の3、48の5、「震災等」を定義するものとしては、地税法349の3の3がある)。

イ その他特別の事情がある場合
 「その他特別の事情がある場合」とは、納税者又はその者と生計を一にする親族が病気にかかり、負傷をし、あるいは盗難にあったような場合等をいいます(市町村税実務提要636頁)。

ウ 減免を必要とすると認める者
 「減免を必要とすると認める者」とは、前記アに記載した天災等により、納税者の財産(特に居住用家屋・日常生活に必要な動産類)に損害が生じ、あるいは前記イの事情により、収入の減少あるいは多額の出費があり、担税力を喪失しあるいは薄弱となり、徴収猶予、納期限の延長等によっても到底納税が困難であると認められるような者をいいます。なお、税目によっては、交通事故、盗難は、災害に含めない扱いとなります。

(3) 災害減免の手続

ア 条例の制定
 災害減免であっても、一般の減免と同じく、減免を行うにあたっては、条例の定めが必要です(地税法72の62、323等)。
 個別的ないし狭い範囲の災害の場合、災害等減免条例で、恒久条例方式に因ることができますが、災害が地方団体の区域内に広範囲に発生した場合には、その都度条例を定めて減免する(時限立法方式)こととされています(平成12年4月1日付け自治税企第12号自治事務次官通知「災害被害者に対する地方税の減免措置等について」(以下、「災害減免通知」という。)第三)。
 大災害が発生した都度、条例制定を待って減免を行うとなると、災害発生時に迅速的確な対応ができないという不都合が生じます。この点、大災害について時限立法方式をとっているのは、その都度その実態に応じて条例を設けることが減免の趣旨にも照らし適切妥当と考えられると説明されますが(市町村税実務提要642頁)、自然災害が毎年のようにどこかで繰り返されている現下においては、その説明は説得力がありません。

イ 減免対象の納期限
 災害を受けた日以後に納期限が到来する税額が、減免の対象となります(災害減免通知・第三)。なお、納期限は法定納期限ではなく、個別分割された具体的納期限をいいます。
 災害以前に納期限を過ぎている税額については、減免ではなく、滞納処分の執行停止で、納税義務消滅させることとなります。

ウ 減免申請の添付書類
 減免申請に際しては、災害等の場合は罹災証明、盗難等の場合は盗難届、被害届の警察の受理番号票、及び損害の内容・程度がわかる書面の提出を求めます。

エ 税目
 災害による税額の軽減・免除の割合は、次回以降の各税目で述べます。

(4) 災害による納期限の延長

ア 趣旨
 前記のように、災害減免を含め、減免の申請は、納期限前に行う必要があります。
 現に災害が継続している、交通手段が途絶している、通信手段(インターネット等)の使用不能、災害後の居宅・事業所の修繕、遠方への避難などの理由により、客観的に納期限までに減免申請することが不可能な場合があります。
 そこで、地方団体の長は、条例の定めるところにより、災害その他やむを得ない理由で、納入期限までに納付できないと認められる場合、納期限の延長ができることとしました(地税法20の5の2。地方税法の施行に関する取扱いについて(以下、「取扱通知」といいます)(市町村税関係)第1章54)。納期限の延長により、減免申請の手続的な保障が図られることになります。

イ 要件
(ア) 災害その他やむを得ない事情
 期限の延長の要件である「災害その他やむを得ない事情」とは、地方税法20条の5の2と同旨の国税通則法11条に関する通達によれば(国税通則法基本通達11条関係1)、「国税に関する法令に基づく申告、申請、請求、届出、その他書類の提出、納付又は徴収に関する行為(以下第11条関係において「申告等」という。)の不能に直接因果関係を有するおおむね次に掲げる事実をいい、これらの事実に基因して資金不足を生じたため、納付ができない場合は含まない。」として以下の災害をあげています。
①地震、暴風、豪雨、豪雪、津波、落雷、地すべりその他の自然現象の異変による災害
②火災、火薬類の爆発、ガス爆発、交通途絶その他の人為による異常な災害
③申告等をする者の重傷病、申告等に用いる電子情報処理組織(情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律第6条第1項《電子情報処理組織による申請》に規定する電子情報処理組織をいう。)で国税庁が運用するものの期限間際の使用不能その他の自己の責めに帰さないやむを得ない事実

(イ)減免申請をすることができないと認められること
 災害による交通、通信の途絶、遠方への避難、身体の負傷、入院等により、客観的に減免申請ができないことが、期限延長の要件となります。

ウ 期限の延長の手続期間

(ア) 延長の始期と期間
 延長期間、延長期間の始期については、条例に委ねられることになります。
 延長期間の始点ですが、災害の時からではなく、災害その他やむを得ない理由のやんだ日から2か月を超えない限度で延長することが適当とされます(災害減免通知第一、一、(1)及び(2)、国税通則法11参照)。
 「やんだ日」とは、「災害」の場合には災害が引き続き発生するおそれがなくなり、その復旧に着手できる状態となった日、「その他やむを得ない理由」の場合には、交通、通信の回復等、納付をすることが可能となった日をいいます。

(イ) 地域指定
 延長の手続の取扱いとしては、地域指定と個別申請があります。
 地域指定とは、災害により、納期限までに納付ができないと認められる者が地方団体の全部又は一部の地域にわたり広範囲に生じたと認める場合に、地方団体の長が、職権により地域及び災害がやんだ日から2月以内の期日を指定して画一的にその期限を延長するものです。納税者の申告を待つまでもなく、納付期限は延長されます(災害減免通知第一、一(1))。
 そしてこの地域指定は、「国税庁長官が地域及び期日を指定して画一的に期限を延長する場合(国税通則法施行令3①)には、地方団体の長は、その国税に係る期限の延長の措置に準じて画一的に期限を延長する」こととされています(災害減免通知第一、二)。

(ウ)個別申請
 地域指定されない個別的事例ないし、狭い範囲内の事例の災害については、納税者又は特別徴収義務者の申請に基づき、災害がやんだ日から2月以内の期日を指定してその期限は延長されます(災害減免通知第一、一(2))。

エ 納期限の延長の効果
 納期限が延長された結果として、減免申請の期限が、延長されることになります。他に、延長期間内は延滞金が発生せず、また督促をすることもできないので、滞納処分を受けることもなくなります。

 

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