〈災害時の法律家の支援〉災害ケースマネジメント

地方自治

2024.01.16

法律のひろば2021年3月号
特集:東日本大震災から10年
〈災害時の法律家の支援③〉災害ケースマネジメント
岩手弁護士会災害対策委員会委員長・弁護士 吉江 暢洋

※本記事は2021年3月に「法律のひろば」で掲載されたものです。

 

一 災害ケースマネジメント

 災害ケースマネジメントとは、被災者一人ひとりに必要な支援を行うため、被災者に寄り添い、その個別の被災状況・生活状況などを把握し、それに併せて様々な支援策を組み合わせた計画を立てて、連携して支援する仕組みをいう。
 これは、災害が発生した後、被災者に対してどのように支援をしていくべきかという支援の方法に関する考え方であるが、更に言えば、「復興」というものをどう捉えるかという問題にも関わる考え方であると言える。

 これまで発生してきた数々の災害において、「復興」とは、災害によって被害を受けた住宅の再建、公的な施設の再建を含めた、種々のインフラの整備を指していた。被災者に対する支援がないとは言わないが、現状として、「復興」と捉えられているのは、住宅やインフラの再建を指していることは否定できない。
 しかしながら、真の「復興」とは、一人ひとりの被災者が、その生活を取り戻すこと、生活再建をいうのではないか。
 生活再建とは、被災前の生活に戻るということに限られず、被災前とは異なる場所、異なる形であっても、新たに自立した生活を営んでいくことができる状態に戻るということである。
 災害ケースマネジメントとは、「復興」というものを、建物や町の再建ではなく、被災者一人ひとりの生活の再建と捉える考え方でもある。

 本稿では、現行の災害法制について概観し、その問題点に触れた上で、被災者支援の現場において生じる問題を整理し、あるべき被災者支援について検討していきたい。

 

二 現行の災害法制について

 現在は、災害対策基本法を中心として、多数の法制度が存在する。
 その内容は、財政措置に関するもの、被災地の土地の利活用に関するもの、許認可の更新の届出期間延長に関するものまで多様であるが、直接的に被災者を支援することを内容とする法律は、災害救助法、被災者生活再建支援法、災害弔慰金の支給等に関する法律の3種類程度しか存在しない。

2 災害救助法について

(1) 災害救助法は、災害に対して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下、応急的に、必要な救助を行い、被災者の保護と社会秩序の保全を図ることを目的としている。
(2) 具体的な救助の内容としては、①避難所・応急仮設住宅の設置、②食料・飲料水の供与、③被服・寝具等の給与、④医療・助産、⑤被災者の救出、⑥住宅の応急修理、⑦生業に必要な資金・器具・資料の供与又は貸与、⑧用品の給与、⑨埋葬、⑩死体の捜索・処理、⑪住居・その周辺に運ばれた土石・竹木等で日常生活に著しい支障を及ぼしているものの除去が挙げられている。
 そして、これらの運用に関しては、内閣府防災による「災害救助事務取扱要領」において、法による救助の原則として、①平等の原則、②必要即応の原則、③現物給付の原則、④現在地救助の原則、⑤職権救助の原則の五つの原則が定められている。

(3) 災害救助法の問題点
 例えば、被災した建物について、応急修理を利用しようと思い、自ら修理業者を探して修理を行い、その後、応急修理費を得ようと思っても、依頼した業者が市町村の指定業者でなければ、応急修理費を得ることはできない。応急修理は、現物支給の原則から、あくまでも「修理」の提供であり、修理費の提供はできないことから、被災者は、応急修理を利用するに当たっては、事前に行政に問い合せ、指定業者を確認し、指定業者に修理を依頼し、応急修理の対象となる修理の範囲で修理を行わなければならない(実際には、全体の修理のうち、応急修理の対象となる修理に対しては行政から修理費用が業者に支払われることになる。)。
 こうしたことを知らずに、急いで修理を行ってしまうと、応急修理として認められず、修理費用全額を負担しなければならなくなってしまう。
 さらに、応急修理を利用した場合には、一定の修理が完了し、住宅が利用し得る状態になったとみなされ、応急仮設住宅を利用することができなくなる。実際には、応急修理を利用したからといって、被災した住宅が十分に利用できるようになるわけではない。応急修理を利用することで、住宅が避難所程度に修繕できる場合もある。仮設住宅程度に修繕できる場合もある。もちろん、応急修理によって住宅の修繕が完了することもあり得るのであって、被災の状況によって、応急修理の結果は様々である。しかし、応急修理による修繕の結果にかかわらず、仮設住宅を利用することはできないため、応急修理を利用することで、その後、壊れた自宅に住み続けなければならないという事態が生じてしまった。
 令和2年7月豪雨災害においては、応急修理の期間中、仮設住宅に入居できるようになったことから、一歩前進はしたが、あくまでも修理中のみの対応であり、更なる運用改善が望まれる。

3 被災者生活再建支援法について

(1) 被災者生活再建支援法は、災害により住宅が被災した被災者に対して、その被災の程度に応じた支援を行い(基礎支援金)、また、住宅再建の方法に応じた支援を行う(加算支援金)ことを定めた法律である。
(2) まず、り災証明において、住宅が全壊、大規模半壊の認定を受けた被災者に対して、基礎支援金として、全壊の世帯には100万円、大規模半壊の世帯には50万円が支給される。
 なお、半壊の認定を受けた世帯であっても、地盤の問題など、住宅を存続させることに危険性があることから解体を余儀なくされた場合や、長期間居住が不可能である場合などは全壊として取り扱われることとなる。

(3) そして、全壊及び大規模半壊の認定を受けた世帯については、加算支援金として、新たに住宅を建築又は購入した場合には200万円、住宅を補修した場合には100万円、民間住宅を賃借した場合には50万円が支給される。
 なお、2020年12月4日の改正により、中規模半壊と認定された世帯については、基礎支援金は支給されないが、加算支援金は支給されることとなり、その額は、住宅建設・購入の場合100万円、住宅補修の場合50万円、民間住宅賃借の場合25万円ということになった。
 被災により住宅が全壊と認定され、一旦民間の住宅を賃借し、その後、新たに住宅を建設した場合には、基礎支援金が100万円支給され、その後民間住宅の賃借により加算支援金が50万円支給され、住宅建設の際に200万円から50万円を控除した150万円の加算支援金が支給されることとなる。
 災害公営住宅を含む、公営住宅に入居することとなった場合には、加算支援金は支給されない。
 一旦災害公営住宅に入居した場合には、既に住宅再建が完了したと評価され、その後、新たに住宅を建設したとしても加算支援金は支給されないという自治体もあるが、新たな住宅を建設するまでの間、災害公営住宅への入居を認める自治体も存在する。

(4) 同法については、り災証明において、住宅の被災状況がどのように評価されるかによって、得られる支援が大きく異なってしまうことを問題として指摘することができる。
 例えば、津波等の浸水の被害の場合、床上に浸水すれば、概ね半壊以上の認定がなされることとなるが、浸水高が床上1メートル以上になると大規模半壊の認定が、天井近くまで浸水した場合には全壊という認定がなされることとなる。
 そうなれば、厳密に言えば、床上99センチメートルの浸水の場合には、半壊ということとなり、1メートルの浸水の場合には大規模半壊となるということであって、被害の状況はほとんど変わらないにもかかわらず、わずかな浸水高の差によって、大規模半壊以上の認定がなされれば、支援が受けられるが、半壊以下の認定になれば何らの支援も受けられないこととなり、大きな差が生じてしまうのである。

4 災害弔慰金の支給等に関する法律について


(1) 災害弔慰金の支給等に関する法律は、三つの事項を定めている。
 まず、災害によって死亡した人がいた場合、その遺族に災害弔慰金を支給するということである。
 亡くなった方が災害前、世帯の生計を維持する者だった場合には、弔慰金は500万円そうでない場合には250万円である。
 次に、災害によって重大な障害を負った人がいた場合、その被災者に災害障害見舞金を支給するということである。
 その人が災害前、世帯の生計を維持する者だった場合には、見舞金は250万円、そうでない場合には125万円である。
 最後に、災害によって被災した人に対して、災害援護資金の貸付を行うということである。
 災害援護資金貸付は、被災者の状況によるが、最大350万円を借りることができ、償還期間は10年(据置期間3年)、利率年3%(据置期間経過後)となっている。一般的な借入れに際しては、保証人が必要である。
 災害援護資金貸付には、償還免除事由が定められており、借主が死亡した場合や、借主が障害を負い償還が不能となった場合などには、償還を免除することができる(但し、保証人が支払える場合は除かれる。)。

(2) なお、災害援護資金貸付については、東日本大震災においては、特例が定められていた。
 東日本大震災においては、償還期間が13年とされ、据置期間も6年に延長された。保証人が必須ではなくなり、利率も年1.5%に下げられた(保証人がいる場合には、無利息とされた。)。
 さらに、免除要件が拡充され、貸付から10年後に、借主が無資力であるか、無資力に近く、償還の見込みがない場合も免除できることとなった。

(3)  同法については、災害弔慰金の支給に関して、災害関連死が問題とされる。
 災害により直接亡くなった方の遺族に災害弔慰金が支給されることは問題ないが、災害発生後、時間をおいて被災者が亡くなった場合には、その死と災害との関係が問題となる。
 災害の影響によって死亡した場合には、災害関連死とされ、災害弔慰金の支給対象となるが、これについては、各自治体に災害弔慰金等支給審査委員会等が設置され、死亡診断書や過去の通院歴、災害からの経緯等の資料から災害関連死に該当するか否かを検討することとなる。
 審査の基準については、全国的に統一的なものはなく、抽象的には、災害により、死亡原因となった疾病が発病(発症)し、又は悪化したことにより死亡したと認められる場合には、災害と疾病との間に因果関係があるとされ、災害関連死と認められることになるが、地域により、その判定には差が生じることとなる。
 いわゆる「長岡基準」は、「地震から1週間以内の死亡は関連死であり、1か月以内であれば、その可能性が高い。それ以降の場合は可能性は低く、6か月以降であれば関連死ではない。」という基準であり、東日本大震災発生時には、厚生労働省から、各自治体に「参考例」として紹介されたが、単に災害から経過した期間のみをもって関連死であるか否かを判断することが実態を反映しない不適切なものであることは明らかで、関連死であるか否かを判断する基準たり得ないことは言うまでもない。
 これまで、被災自治体は、国に対して、統一的な審査基準を設けるように求めてきたが、国は、実際の地域の状況に応じて判断がなされるべきであるとして、統一的な基準を設けることには否定的である。
 確かに、柔軟な認定のためには、統一的な審査基準が足枷になることも考えられる。
 しかしながら、災害後に行われた審査について調査、検討し、災害後、被災者がどのような形で亡くなったのかを把握し、今後の対策に反映させることは重要であり、少なくとも実態の把握と公表は必要であることは指摘しておきたい。

 

三 今後の被災者支援の在り方

 以上のような、災害法制における問題点からは、被災者支援の在り方として、以下のような点が浮かび上がってくる。

(1)  災害直後からの正しい情報提供と先を見据えた選択の必要性
 被災者は、災害の直後から、様々な選択を迫られることとなる。
 応急修理について述べたように、その選択によっては、その後の動きが大きく変わってくる可能性もあるが、選択をする時点で、正しい情報が伝わり、それを理解し、将来的な動きも視野に入れた上で選択ができているのかという点に大きな疑問がある。
 そうであれば、災害発生直後から、被災者に対して、正しい情報が提供され、将来的な動きまで視野に入れた検討を可能とし、その上で、受ける支援を選択していくということが必要となる。

(2)  住宅の被災の有無や程度のみにとらわれない支援の体制の必要性
 応急的な救助を除けば、被災者に対しては、住宅の被災状況を前提とした支援しか存在しない。
 しかし、被災者の抱える問題は、住宅被災に限られない。
 住宅は被災しなかったが、職場を失い、生活の糧を失った被災者には、義援金などは存在しても、支援の制度は存在しない。
 住宅の被災状況が半壊以下の認定を受けた被災者は、応急修理による支援を除けば、自らの資力と借入によって再建していくしかない。
 以上から、被災者の状況に応じて、住宅の被災の有無や程度のみにとらわれない支援の体制が整備されなければならない。
 足りない支援については新設が必要であろうし、平時の支援制度の活用も考えなければならない。

 さらに、被災者への支援には、以下のような問題もある。

(1)  被災者に対する支援は、基本的に世帯を前提としたものとなっている。
 住宅再建についてだけ見ても、世帯への支援が前提となっていることから、世帯内において世帯主の意向のみによって再建方法が決定され、他の世帯員が意見や希望を反映させることができないまま、不本意な形での生活再建に至っている場合もある。
 被災者一人ひとりによって、描いている復興の姿は異なるのであって、被災者支援は、そうした被災者一人ひとりの復興への考えに寄り添うものでなければならない。

(2) 現在存在する支援についても、被災者は、自ら申請しなければ支援を受けることはできない。
 行政等から支援に関する情報は被災者に伝えられてはいるが、全ての被災者がそれを正しく受け取り、利用について検討して、申請していくということができるわけではない。
 また、避難所や仮設住宅には、集中的に支援が行われ、情報提供もなされることから、避難所や仮設住宅を利用できた被災者は、比較的支援の情報に触れる機会が多いが、例えば住宅の被災の程度が小さかったために避難所に行くことができなかった被災者や、応急修理を利用したために仮設住宅を利用できなかった被災者は、在宅で避難生活を送っているために、情報に触れる機会が少ないという状況もある。
 被災し、混乱している状態にある被災者に対して、情報を自ら得て、支援の申請をしなければならないということは、被災者にとって大きな負担であり、また、本来であれば利用できる支援を利用できずに時間が経過してしまうおそれも生じる。
 よって、被災者支援については、基本的に申請主義を取るのではなく、支援する側からの積極的な関わり(アウトリーチ)が必要である。

(3)  既に述べたとおり、被災者の抱える問題は多岐に亘っている。
 平時から抱えていた問題が、被災により、より色濃く顕在化するということも指摘できる。
 災害によって、直接生じた問題でなくとも、生活の再建という場面においては、同時に対処していかなければならないことは容易に理解できるだろう。
 すなわち災害の後、被災者の生活再建を支えていくためには、災害によって直接生じた問題のみならず、災害前から被災者が抱えていた問題も含めて対応していかなければならないということである。
 また、そうした多岐に亘る問題に対処する場合、被災者自身が問題ごとに異なる窓口などに相談しなければならないということになれば、それ自体が高いハードルとなり、被災者が生活の再建を諦めてしまうということにもつながる。支援する側が連携し、被災者に対してはワンストップの形で支援をして行くことが重要である。

(4)  そして、支援を要する被災者に対しては、目の前の問題が形式上解決したことをもって支援を終了してはならない。
 始めに述べたとおり、復興とは、被災者の生活の再建であり、被災者が被災後、新たに自立した生活を営むことができる状態に戻っていくことである。
 この「自立」とは、「1人で生きていく」ということではない。生きていくために必要な支えを、可能な限り活用して生きていくということである。支援者とのつながりを持ち、必要な支えを十分に備えておくことが自立して生きるということである。
 支援者側は、被災者の自立した生活のため、必要な支えとして、支援を継続しなければならない。
 もちろん、支援の形は状況や時間の経過によって変化していく。特定の支援者がずっと1人の被災者に寄り添っていなければならないということではない。そのとき、そのときで、必要な支援にしっかりと結びつけておく、支援者間で引き継ぎながら、被災者を支え続けるという、息の長い支援が必要である。

 

四 災害ケースマネジメント

 以上のような、被災者一人ひとりの状況を把握し、災害に直接関係するものとそうでないものとにかかわらず、生活の再建のために必要な支援をパッケージとして被災者に提供し、被害者の生活再建を支えるという支援方式が災害ケースマネジメントである。
 こうした取組は、既に様々な災害において実践されている。

2 仙台市における災害ケースマネジメント


(1) 東日本大震災が発生した後、宮城県仙台市は、仙台市被災者生活再建加速プログラムを実施した。
 被災世帯について、①生活再建可能世帯、②日常生活支援世帯、③住まいの再建支援世帯、④日常生活・住まいの再建支援世帯に分類し、それぞれの世帯の状況に応じた支援を提供する仕組みである。

(2) ①生活再建可能世帯は、住まいの再建方法や再建時期が決まっており、特に大きな問題がなく日常生活を送っている世帯である。係る世帯については、必要に応じて公営住宅入居支援や住宅再建相談支援を行うこととなるが、基本的にはさほど手厚い支援までは必要なく、継続的な状況調査や支援情報の提供を行うことで生活再建をサポートする。
 ②日常生活支援世帯は、住まいの再建方針や再建時期は決まっているが、主に心身の健康面に課題を抱えており、日常生活において継続的に支援が必要な世帯である。係る世帯については、地域保健福祉サービスの利用が必要となる。戸別訪問を実施し、健康支援を行いつつ、見守り・生活相談を提供することとなっている。
 ③住まいの再建支援世帯は、住まいの再建方針又は再建時期が未定である世帯や、資金面、就労、家族関係等に課題を抱えているため、支援が必要な世帯である。係る世帯については、個別支援計画による支援が必要であり、戸別訪問を実施してできる限りきめ細やかに状況を把握しなければならない。また、就労支援も必要である。伴走型民間賃貸住宅入居支援も行っていく。
 ④日常生活・住まいの再建支援世帯は、②と③の複合的な世帯で、住まいの再建に関して課題を抱えており、かつ、日常生活においても継続的な支援が必要な世帯である。個別支援計画による支援が必要があり、戸別訪問の実施によるきめ細やかな状況の把握、健康支援や見守り・生活相談を提供する。地域保健福祉サービスや伴走型民間賃貸住宅入居支援の利用が必要となる。また、専任弁護士と連携した相談支援体制も構築された。
 ②、③、④の世帯は、前記のような支援を受けながら、①に移行していくことが目標とされており、市は世帯の状況に応じて、必要な支援を整理した上で、具体的に支援を提供していくことが可能となっていた。状況の変化により、提供すべき支援にも変化があり、そこに柔軟に対応できる態勢が整備されていたと言える。
 その他に、仙台市内の仮設住宅に入居しているが、接触できない世帯に対しては、戸別訪問調査を継続し、情報提供や相談支援、居住実態のない世帯については退去勧奨等の働きかけも行っていた。

(3) このプログラム実施においては、まず、個別世帯訪問による生活再建状況の調査を行った。この際、調査員として活躍したのは、シルバー人材センターの登録者である。
 係る調査で得られた世帯毎のケースデータを仙台市が蓄積し、被災者生活再建支援ワーキンググループにより、そのデータに基づいて、各世帯の状況を確認(前記の①〜④の分類)、世帯毎に恒久住宅移行に向けた生活の個別支援計画を作成した(計画は、状況に応じて更新した。)。
 そして、その計画に基づき、必要な支援を組み合わせて提供していった。

(4) 対象が個人ではなく、世帯ということではあるが、①〜④の分類からもわかるように、個別の世帯員の状況を把握して問題点を探り、これに対応することで世帯全体の生活再建を図ろうとするものであり、まさに災害ケースマネジメントの実践ということができる。
3 岩手県岩泉町における災害ケースマネジメント

(1) 平成28年台風10号災害が発生した後の岩手県岩泉町においては、複数のNPO団体や弁護士会等が「岩泉よりそい・みらいネット」と称する任意団体を構成し、岩泉町と共同して住民の支援に当たってきた。
(2) 具体的には、岩泉町内において、弁護士とNPO職員(社会福祉士等の有資格者も含まれる。)による相談支援を行い、相談の内容に応じて、必要な支援を検討し、それを相談者に示すとともに、必要に応じて町内外の支援者につなぎ、生活再建に向けた継続的な支援を実現してきた。
(3)  特筆すべきは、「被災者からの相談」に限らず、住民からの相談にはどのようなものでも応じ、その相談に応じた対応を検討してきたところである。
 定期的な相談会に加え、保健師等からの情報提供に基づき自宅へ赴いて相談を受けたり、町内のケース会議に参加して複数部署と共に支援の方法を検討したり、活動の方式はアウトリーチ型で、ワンストップ型の方式が意識されていた。
 活動の経費についても、災害に関わる助成金等にとらわれず、相談支援の包括化推進事業を活用する等、相談者の生活課題全般を対象とする活動が行われていた。
 この活動も、災害ケースマネジメントの実践ということができる。

 東日本大震災の後にも、多数の災害が発生しているが、こうした過去の活動を参考に、各地で災害ケースマネジメントの実践が行われるようになっている。
 鳥取県は2018年3月に「鳥取県防災及び危機管理に係る基本条例」を改正し、制度として災害ケースマネジメントを採用した。
 こうした動きが全国的に広がっていくことが期待されるところであり、日本のどこで災害が発生しても、同じように災害ケースマネジメントの手法による被災者支援が展開されることが切望される。

5 さらに災害ケースマネジメントを広げていくために


(1)  災害ケースマネジメントを実践するためには、多様な支援者の連携が必要となる。
 行政、弁護士等の士業、各種のNPO団体、ボランティア、多様な支援者が連携して、被災者に対して支援を提供できなければ、災害ケースマネジメントは成り立たない。
 いざ災害が発生してからそのような関係作りをしていくことは難しいことであるし、時間の無駄である。
 平時のうちから、そうした関係作りを進めておかなければならない。
 災害対策基本法は、自治体の責務として「ボランティアの活用」を挙げているが、さらに進めて、各種の支援者、支援団体との連携作りを義務づけるべきである。
 そして、国や地方自治体の防災計画に、被災者支援の方策として災害ケースマネジメントを位置づけ、予め準備をしておくべきである。

(2) 加えて、災害ケースマネジメントを実践していくためには、情報の共有が必須である。
 被災者にとって、ワンストップの支援方式であるためには、支援者側が被災者の情報を共有し、その時々で必要な支援を提供し得る体制が必要である。
 被災者台帳の活用、日本弁護士連合会が作成した「被災者生活再建ノート」の活用など、情報の一元化と支援者間における共有という部分を個人情報保護の観点も踏まえて、平時のうちに整えておく必要がある。

(3) そして、災害ケースマネジメントの実践において、被災者に提供される支援についても整理、拡充が必要である。
 現行の災害法制による支援の問題点も指摘したところであるが、そうした各支援の関係性を今一度確認、整理し、足りない支援は新設し、平時の福祉的な支援制度の活用も踏まえて、支援のメニューの拡充を図っていく必要がある。

(4)  日本は災害大国である。
 毎年のように豪雨災害や台風災害が発生しており、また、いつ巨大地震が発生するかもわからない。
 今後起こり得る大型災害において、一日も早く被災者の生活再建を可能とするために、早期に災害ケースマネジメントの制度化が求められる。

(よしえ・のぶひろ)

 

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