月刊「ガバナンス」特集記事

ガバナンス編集部

月刊「ガバナンス」2023年12月号 特集1:住民の声をどう政策に活かすか──政策形成と住民参画 特集2: 「子どもの安全」を考える

地方自治

2023.11.30

●特集1:住民の声をどう政策に活かすか──政策形成と住民参画

コロナ禍は収束しつつあるが、異常気象や物価高、人口減少、人手不足、少子高齢化など地域社会を取り巻く課題は多い。こうした中だからこそ、自治体には地域に根差した政策の実行が求められる。そのために重要なのは、現場で課題に直面する住民の声を把握し、政策に反映させていくことだろう。急速に進展したデジタルツールなども活用しながら、地域や住民にとって必要な地に足の着いた政策をどうつくり、実行していくのか。今月は考えたい。

■人口減少時代の自治体は市民の対話から政策を作る

福嶋浩彦
中央学院大学教授

右肩上がりの時代は、同じ意見、同じ要望の人がそれぞれ集まり、数の多さと声の大きさを競い、自らの要求を実現しようとした。しかし人口減少時代は、多様な人が集まって対話し、適切な選択や新しい創造のために知恵を出し合う民主主義が必要だ。そのためのチャレンジが始まっている。

■条例制定にどう住民の声を反映するか──立法事実と住民参加/山口道昭
「全国初」であれば、条例として成功かといえば必ずしもそうではない。その条例が社会的課題の解決という「立法事実」に基づいた内容であって、世間に広く認知され、同様の状況にある自治体(と全国的な課題であれば国)に伝播していくことなどが成功といえる。ただし、伝播は条例を制定する時点ではわからない。とするならば、一層重要なのは、条例の内容である。

■市民の声からどう政策課題を把握するか/金井茂樹
〝市民の声から政策課題を把握し、政策立案に活かす"。これは戦後、日本にPR(Public Relations)が導入されて以来、自治体が常に取り組んできた課題のひとつである。本稿では、この〝古くて新しい課題.を検討するにあたって、政策課題を把握するための「市民の声」とは何かについてあらためて考えてみたい。

■デジタル時代こそ熟議民主主義を/奥村裕一
「民主主義」の本質は、人間の集団において合理的でかつ拘束力のある意思決定をする場合に、その集団の構成員全員が平等な決定権を持つことだ。選挙権は国民の参政権の典型例だが、単に選挙の時だけではなく、政策プロセス全般へと参政権を拡げていくことが民主主義の再生のもう一つの課題だ。その場合に、熟議を通じて参加する市民の判断の質を高めようということから生まれてきている考え方が「熟議」と「民主主義」を掛け合わせた「熟議民主主義」となる。

〈取材リポート〉
「みんなで未来を育てる」まちづくりに向け、ワークショップを開催/青森市

 

●特集2:「子どもの安全」を考える

2022年に全国の保育所や幼稚園、認定こども園等で起きた死亡事故、30日以上の治療を要する負傷、疾病を伴う重篤な事故は合計2461件(前年比114件増)で過去最多となりました。うち死亡事故は5件で、通園バス内の置き去りや睡眠中、食事中などに発生しています(こども家庭庁「令和4年教育・保育施設等における事故報告集計」2023年8月公表)。背景に、保育現場の人手不足や保育の質の問題なども挙げられるなか、現場で、そして行政サイドで、なすべきことは何でしょうか。犯罪や虐待の防止も含め、「子どもの安全」は"待ったなし"の課題です。本特集では、「子どもの安全」を守るため、今すぐ取り組むべきことについて考えます。

■子どもの安全を問い直す/宮田美恵子
子どもの安全が脅かされている。教育・保育施設での事故、虐待や不適切保育が増加している。教育・保育を「質と安全」から考えれば、「こどもまんなか社会」とは、子どもの心身や命を守るために、子どもの発達や個々の特性が尊重されることが第一義となる。「子ども」を中心に置き、実現方法を考え、周囲の大人や社会が折り合いをつけていく必要がある。

■保育の質の向上と安全確保における自治体の役割/掛札逸美
2022年秋以降、いわゆる「不適切な保育」が大きく取り上げられるようになった。深刻な事故等の報道も続いている。こうした事象すべてが保育者の不見識や怠慢によるのか?10年以上、安全の視点から未就学児施設と関わってきた立場からすると、答えは「否」である。子どもを十分に育て、社会を維持したいなら、子どもを育てる重責を担っている保育者と保護者を社会全体で支えなければならない。おとなの都合で解釈できる「こどもまんなか」ではなく、「保護者と保育者を中心に」をキーワードにした社会づくりが急務である。

■安全な子育て環境を作るには/山中龍宏
日本社会では、「気をつけていれば事故は起きない」と考えられている。事故が起これば、管理者側はすぐに「注意喚起」の通知を出す。これにより人々は気を付けるようになり、事故を防ぐことができると思い込まれており、通知を出せば役割は果たしたと考えている。
こうした「予防効果のない事故予防の考え方」を変えるにはどうしたらいいのだろうか?

 

●キャリアサポート連載

■管理職って面白い! ナッジ理論「EAST」/定野 司 ■「後藤式」知域に飛び出す公務員ライフ
高校×行政 ポイントは「学校を超えた取組みづくり」/後藤好邦
■誌上版!「お笑い行政講座」/江上 昇 ■〈公務員女子のリレーエッセイ〉あしたテンキにな~れ!/西口彩乃 ■自治体DXとガバナンス/稲継裕昭 ■自治体職員なら知っておきたい!公務員の基礎知識/高嶋直人 ■そうだったのか!!目からウロコのクレーム対応のワンヒント/関根健夫 ■自治体法務と地域創生──政策法務型思考のススメ
/出石 稔(関東学院大学地域創生実践研究所)
■キャリアを拓く!公務員人生七転び八起き/堤 直規 ■〈リレー連載〉Z世代ズム~つれづれに想うこと/青木悠太 ■ただいま開庁中!「オンライン市役所」まるわかりガイド/北川誠晃 ■地域の“逸材”を探して/寺本英仁

 

●巻頭グラビア

自治・地域のミライ
片岡聡一・岡山県総社市長
弱者に寄り添い、「日本で一番やさしい市役所」をつくる

片岡聡一・岡山県総社市長(64)。「市役所の仕事は弱い立場の人のために全力を尽くすこと」という片岡市長は「障がい者千人雇用」などの施策を積極的に進め、「日本で一番やさしい市役所」をめざす。

 

●取材リポート

□新版図の事情──“縮む社会”の現場を歩く/葉上太郎
牛の餌ではなく、世界のトップブランドに【「天のつぶ」の物語(2)猪苗代町】
原発事故、続く模索45
一度は開発が断念され、デビューしたのは原発事故の年、魅力が伝わらずに半分が飼料用とされている福島県のオリジナル米「天のつぶ」。高冷地であるがために作付けが許されなかった猪苗代町は、密かに種籾を入手し、被災後の米の切り札として生産に乗り出した。特性を最大限いかす栽培法を研究して世界に売り込むと、10年がかりでトップブランドになった。牛や豚、鶏の餌なのか。高級料理店が欲しがる米なのか。分かれ目はどこにあったのか。


□自治体政策最前線──地域からのイノベーション
民間に開かれた宇宙港を核に航空宇宙産業の拠点を創る(北海道大樹町)
北海道大樹町は、航空宇宙産業基地の候補地になって以降、官民一体となって宇宙のまちづくりを推進してきた。滑走路を備えた航空公園を整備してJAXAや企業、大学等の航空宇宙関連実験を誘致し、2021年には我が国唯一の民間に開かれた商業宇宙港として本格稼働。航空宇宙関連産業の集積を図り、40年に100兆円超の巨大市場になるとみられている宇宙産業の一翼を担う〝宇宙版シリコンバレー"の創出をめざしている。

 

●Governance Focus

□満員列車を地域振興に結びつけられるか──福島県奥会津、JR只見線の全線運行再開から1年/葉上太郎 新潟・福島豪雨(2011年7月)で被災し、不通になったJR只見線の只見―会津川口間(27・6㎞)。22年10月1日に11年ぶりに運行を再開してから1年が過ぎた。福島県で最も山深い奥会津を走る絶景路線として有名になり、日中の列車は満員で立ち客が出る好調ぶりだ。しかし1日に3往復しかなく、生活路線としては使えない。観光路線としてどこまで地域振興につなげられるか。これにはまだまだ課題がある。

□量と質の確保は市町村の努力義務 多重の備えと普段からの慣れが鍵──災害時のトイレ対策/河野博子 大地震はいつ来てもおかしくない。地球温暖化の影響による豪雨で水害や土砂災害が頻発し、「命を守れ」と避難が呼びかけられる。自治体に義務付けられる避難生活への備え。そこで「盲点」となっているのが、災害時のトイレだ。避難所であれ、コロナ禍以降に推奨される「在宅避難」であれ、避けて通れない「排泄」対策はどうなっているのか。

 

●Governance Topics

□シビックプライドをどう育み、地域の価値を高めていくか
──関東学院大学地域創生実践研究所・法学研究科シンポジウム
関東学院大学は10月29日、横浜・関内キャンパスの開校を記念して、シンポジウム「住民自治を実現するシビックプライドの可能性」を開催した(主催は同大地域創生実践研究所と法学研究科。オンラインと対面のハイブリッド形式)。近年、自治体で導入が進む「シビックプライド」について、実際に取り組む自治体の首長らを招き、その実践やこれからの可能性などを議論した。

□地方公務員か?選ふ?すこ?い地方公務員を表彰
──「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2023」表彰式
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード2023」(株式会社ホルグ主催)の表彰式が10月28日に都内で行われた。今年は全国各地の地方公務員から推薦された12人がアワードを受賞している。

□マニフェスト大賞優秀賞受賞事例から学ぶ──トップランナーに学ぶ受賞事例研修会 11月10日の「第18回マニフェスト大賞」授賞式(最優秀賞、授賞式のようすはp128)に先立って、同賞優秀賞受賞事例を学ぶ研修会が、11月9日に都内で行われた。受賞した40事例が取り組みについてプレゼンを行い、活動の学びの機会と参加者同士の交流の場となった(一部オンライン登壇)。

 

●連載

□自治・分権改革を追う/青山彰久 □新・地方自治のミ・ラ・イ/金井利之 □市民の常識VS役所のジョウシキ/今井 照 □地域発!マルチスケール戦略の新展開/大杉 覚 □“危機”の中から──日本の社会保障と地域の福祉/野澤和弘 □地域経済再生の現場から~Bizモデルの中小企業支援/富松 希(Y-Biz) □自治体の防災マネジメント/鍵屋 一 □市民と行政を結ぶ情報公開・プライバシー保護/奥津茂樹 □公務職場の人・間・模・様/金子雅臣 □生きづらさの中で/玉木達也 □議会局「軍師」論のススメ/清水克士 □地方議会シンカ論/中村 健(早稲田大学マニフェスト研究所) □「自治体議会学」のススメ/江藤俊昭 □From the Cinema その映画から世界が見える
『ぼくたちは見た―ガザ・サムニ家の子どもたち』、『ガーダ パレスチナの詩』/綿井健陽
□リーダーズ・ライブラリ
[著者に訊く!/『声の地層―災禍と痛みを語ること』瀬尾夏美]

 

●カラーグラビア

□つぶやく地図/芥川 仁
まちを支える 家族が紡ぐ伝統の食と業──長崎県平戸市川内町
□技の手ざわり/大西暢夫
佛壇を「洗濯」し、甦らせる──【古久保佛檀店】古久保満さん(滋賀県東近江市)
□わがまちDiary──風景・人・暮らし
豊かな自然と冴えわたる星空、歴史・文化・伝統が息づくまち(福井県大野市)
□クローズアップ
マニフェスト提唱20年。7つの最優秀賞を選出──第18回マニフェスト大賞授賞式

 

■DATA・BANK2023 自治体の最新動向をコンパクトに紹介!

※表紙写真は、「九頭竜湖の雪景色」
*「ザ・キーノート」と「童門冬二の日本列島・諸国賢人列伝」休みます。

 

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「ガバナンス」は共に地域をつくる共治のこと――これからの地方自治を創る実務情報誌『月刊 ガバナンス』は自治体職員、地方議員、首長、研究者の方などに広く愛読いただいています。自治体最新事例にアクセスできる「DATABANK」をはじめ、日頃の政策づくりや実務に役立つ情報を提供しています。2019年4月には誌面をリニューアルし、自治体新時代のキャリアづくりを強力にサポートする「キャリアサポート面」を創設しました。

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