地域の助け合いが自分と家族の命を守る第一歩!~「地区防災計画」の作り方~

葛西 優香

地域の助け合いが自分と家族の命を守る第一歩!~「地区防災計画」の作り方~ 第7回 様々な世代の巻き込み方~意義ある計画策定に向けて~

地方自治

2023.08.15

東日本大震災・原子力災害 伝承館 常任研究員・株式会社 いのちとぶんか社 取締役
葛西 優香

 

1.皆さんが思い浮かべる参加者の年齢層は?

 地区防災計画の策定の進め方について、前回の記事で一つの方法として示した。ご自身がお住まいの地域で地区防災計画をどのような段取りで進めればよいか、頭の中で少しずつ描き始められているだろうか。
 一方で、その頭の中にある策定の風景には、どんな人たちが集っているだろうか。普段から自治町会活動を一緒にしている人、PTAの役員で活動を共にしたことがある人、行政の防災関係の職員の人・・・などが浮かんでいるかもしれない。その絵の中に浮かんでいる人は、どのような年齢層で構成されているだろうか。
 今、私自身が地区防災計画策定の場面を頭の中に浮かべると思い浮かぶのは20~80代の多様な人々の姿である。

 

 

2.意義ある計画策定~多世代が参加するために~

 多世代が集うその場は、町の縮図であると考える。世代ごとの人数構成は各地域によって変わるが、おじいちゃんもおばあちゃんも、おじさんもおばさんも、お姉ちゃんもお兄ちゃんも、赤ちゃんも地域には住んでいる。そして災害時には同時に被災する。その地域の計画を立てるのであれば、計画を作成する会議には地域に住む多世代の人が集い、多様な意見が反映されないとならないのではないだろうか。
 「わかってはいるけど・・・」という声が聞こえてきそうである。実際に地区防災計画を立てるために最初に地域を訪れてお話をするとまず出てくるのは、「若い人がいない」「集まってもいつも同じ人」「高齢化しているからたくさん活動はできない」という言葉である。話を聞いている私は、「本当に?」と問いかけたくなることがよく起こる。地域に訪れて、赤ちゃんを抱っこしているお母さんを見かけたけどな、中学生が数名で一緒に歩いていたけどな、小学生が自転車に乗って移動していたけどな・・・と地域を歩いていれば見かける多世代の姿が頭に浮かぶのである。一方で確かに多世代の姿を目にしない地域もある。子どもの姿が少ないな、そもそも歩いている人も少ないな、と。しかし、そこで諦めてしまうと意義のある計画は作成できない。

 

3.浪江町での居住経験から~一人一人と向き合う大切さ~

 現在、かつて約2万人が居住していて、東日本大震災の被害により、一斉に避難を強いられ、居住者が一度ゼロになった福島県双葉郡浪江町に私は、居住している。現在は、約2,000人の住民が居住しているが、避難指示解除後も地域に住んでいる人が少ない町である。しかし、子どももいれば、20~90代の方が生活をしている。多世代が地域で生活をしているのだ。
 一方で、浪江町では、どのような世代の人が避難先から戻ってきているのか、または新しく移住をして、他都道府県からどんな人が引っ越してきているのかはなかなか把握できない状況があった。そこで、同じ集落に住んでいる住民に声をかけて、現在居住している人の名簿作成を試みたのである。一軒一軒回って、各戸の状況を把握した。個人情報を守ることにも配慮し、災害時に助け合える環境をつくるために活用すること以外に決して公開しないという約束を書面で提示しながら、会話を続けた。すると、浪江町にも多様な世代の方々が居住していることを少しずつ把握できたのである。浪江町でも現在自主防災組織の再構成を試みながら、各地域で住民が活動を続けている。
 ここで言いたいことは、地区防災計画作成の場に多世代が参加するために必要なことは、とにかく足を使い、一軒一軒と向き合い、地域内の居住状況をまずは自身で把握する労力を惜しまない、ということである。一軒一軒回り、声をかけることは簡単なことではない。また時間もかかる。しかし、日常で生活をしていても活動時間は様々で、会いに行かないと会えない人もたくさん同じ地域に住んでいる。「若い人がいない」のは本当なのか、「参加してくれる人はいつも同じで限られている」ということは思い込みではないかということを自分たちの目で確かめにいくという行動を起こさなければ、地区防災計画を策定する会議への多世代の参加は叶わないのではないだろうか。
 一軒一軒回らないと何もわからないことは、浪江町のある地域で会長を務めるS氏の行動を見て学ばせていただいた。朝の散歩、昼間でも時間があれば、地域内を自転車で周り、どんな人が今生活しているかを見回っておられた。「誰に聞いてもわからないことは自分で確かめに行く」と力強くご発言されたS氏の行動から学び、その地域の住民は動き始め、居住者名簿も完成したのである。
 地域に居住する人は、転入や転出が発生し、その都度変わる。大きなマンションなどが建てば、一気に人口構成は変わる。今、現在、どんな人が居住しているかは、それぞれの目で確かめていくことで、地域のことをより深く知ることができ、防災計画にも何を交えたらいいのか、何について考えたり、話し合ったりしないといけないのかが見えてくる。訪問をして声をかけるときつい言葉を投げかける方もいるかもしれない。しかし、そのようなことで、地域内の一人の命が失われてしまっては困る。いざという時に地域の方々の命を守るためにもまずは地域に住んでいる人を自ら知りに行くことから始めたい。
 住んでいる人を知るためには、一軒一軒の訪問も一つの方法だか、世帯数の多い地域では時間がかかってしまう。その場合は、地域に住んでいる人が通っている施設を訪問し、現在どのような活動をされているのか、どのような課題を抱えているのかを聴き、施設に協力してもらえるようにお話をしてみる。施設の協力を得られれば、防災に関するお知らせを掲示してくれたり、議論をする場の告知を一緒にしてくれたり、協働の体制が徐々に構築される。最初から一気に協力体制を築くことができなくても、何度も顔を合わせ、話し合いを続けて多世代と一緒に取り組める環境を整えていくことが重要である。
 簡単なことではない。地道に丁寧に一人ひとり、一つひとつの施設と向き合って話し合いを続けること。多世代を巻き込むには、世代が異なるから話ができないと決めつけるのではなく、世代関係なく、一人の人として向き合い、話を続けることが一番の手段であろう。
 次回は、根強く話し合いを続け、多世代が集いながら地区防災計画を策定した結果生まれた「策定後に得られる多世代のつながり(地域活性化事例)」について実例を交えて述べていきたい。

 

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