政策トレンドをよむ 第2回 超高齢社会に挑むコミュニティ政策―通いの場の創出に向けた重要ポイント

地方自治

2023.06.07

目次

    ※2023年4月時点の内容です。
    政策トレンドをよむ 第2回 超高齢社会に挑むコミュニティ政策―通いの場の創出に向けた重要ポイント
    EY新日本有限責任監査法人CCaSS事業部 北海道大学公共政策学研究センター研究員
    森川岳大
    『月刊 地方財務』2023年5月号

     少子高齢化や核家族化、晩婚化等の進展に加え、新型コロナウイルスの流行に伴う自粛生活の長期化により、地域社会を支える人と人との「つながり」は希薄化の一途をたどっている。これまで自治体やNPO法人等が各地域で提供してきた交流・支え合いの場が失われたことで、高齢者のフレイル状態の悪化や認知機能の低下等の健康二次被害が生じている現状も明らかとなってきた。

     高齢者等の孤独・孤立の問題が深刻な社会問題となっていることを受けて、政府においては、2021年3月以降、「孤独・孤立対策に関する連絡調整会議」及び「孤独・孤立対策推進会議」を開催し、総合的な対策の検討を行っている。前稿でも整理をしたとおり、これまでも一般介護予防事業における通いの場の取組など、高齢者の社会参加の推進に向けた取組が全国の自治体で行われてきた。2022年の孤独・孤立対策の重点計画でも、介護予防や地域づくりの観点から、通いの場の更なる推進が今後の対策の1つとして掲げられている。

     ポストコロナ社会を見据えた新たな孤独・孤立対策が求められる一方、地道な努力により、多くの通いの場の創出に成功してきた先進事例を振り返り、改めて学び直すことも重要である。そこで本稿では、通いの場の創出と成熟化に向けた充実した支援を行っている岡山県倉敷市の事例を参考に、通いの場の更なる推進に向けた重要ポイントを整理する。

     2021年の全国国民健康保険診療施設協議会の調査報告書によると、倉敷市の通いの場に関する取組は2016年4月より開始した。社会福祉協議会への委託により、通いの場を推進する生活支援コーディネーターを配置し、その生活支援コーディネーターが中心となり、①通いの場調査・情報発信事業、②地域支え合い活動普及啓発事業、③生活・介護支援サポーター養成事業の3つの事業を開始した。

     はじめに実施した事業は①の通いの場調査・情報発信事業であり、地域のサロン活動の実態把握を行った。自治会や地域の様々な集まりに顔を出してサロン活動の実態把握を行うとともに、把握した事例を掲載したガイドブックも作成している。

     ②の地域支え合い活動普及啓発事業では、関係者間での情報共有のほか、活動が評価されているという意識や他の活動とのライバル意識が芽生えることによる地域住民のモチベーションの向上等を目的に、実態調査で把握した取組の実施主体が中心となり事例発表を行うフォーラムを開催した。また、各取組の実施主体の交流会も各地区で実施している。

     ③の生活・介護支援サポーター養成事業では、地域での居場所づくりや支え合い活動に関心がある倉敷市民を対象にした講座を開催した。

     これらの取組により、これまで十分把握できていなかった通いの場が市内に705か所(2019年度時点)あることが明らかになった。また、真備地区では、2018年7月の豪雨災害の被災前と比べて通いの場の数が2倍近くになり復興の後押しとなっている。

     通いの場の創出に向けた重要ポイントの1つは、本事例のように、まずは今ある資源をしっかりと把握することである。既に各地域では様々な活動が行われており、日々の近所の付き合いや友人の集まり等も含めると、数多くの「つながり」が存在する。倉敷市では地域のサロン活動の実態把握を行うなかで、従来の保健・医療・介護・福祉分野で行われる専門的なプログラムを中心とした通いの場に加えて、趣味の会・井戸端会議・飲み会等も重要であると判断し、「2人からでも、お酒のんでも、拠点がなくても通いの場」というメッセージを打ち出している。

     過去にも様々な文脈において全国各地で行政主導の地域コミュニティ作りが行われてきたが、魅力に欠け参加者が集まらなかったケースも散見される。新たな場を作ろうとするのではなく今あるつながりを把握し、それらを成熟させるために後押しする視点が重要になる。また、成熟化には地域住民の主体的な関与も必要になる。そのため、倉敷市のように関係者のモチベーションの向上を狙いとしたイベントの開催や情報発信、伴走する支援者の育成も有効な手段の1つとなる。

     その他、把握した情報から新たな課題の解決につなげる視点も重要である。たとえば、ウォーキングを行う集まりに働きかけ、ウォーキングの時間を調整することにより子どもの見守りを行うなど、今ある資源を把握し、地域住民との対話を重ねることで新たな課題の解決につながるアイデアが浮かぶ可能性も大いにある。

     新型コロナウイルスの流行により自粛を強いられてきた地域の活動も再開の方向に舵を切り始めた。「場をつくる」のではなく、「場をみつけ、磨く」視点を持つとともに、従来の枠組みにとらわれない多様な交流機会の創出が期待される。

     

    〔参考文献〕
    ・全国国民健康保険診療施設協議会(2021)「中山間地域等における多世代型、地域共生型の地域づくりと介護予防との関係性に係る調査研究事業」


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    持続可能な社会のための科学技術・イノベーション | EY Japan
    多様な人材の活躍推進(DEI、外国人材の受け入れ・共生、新たな学び方・働き方) | EY Japan

     

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