【特別企画】自治体現場における人材育成のミライ 「インバスケット」研修で職員の問題解決力を高める――東京都練馬区

地方自治

2022.09.28

『月刊ガバナンス』2022年10月号

「練馬区人事・人材育成改革プラン」に基づき職員の育成を進めている東京都練馬区は、主任や係長級を対象に、制限時間内に多くの案件を処理する体験型トレーニングである「インバスケット」研修を実施している。状況を迅速・的確に判断して優先的に問題解決を図る力を養うとともに、自らの仕事の進め方の問題点などに気づかせ、その後の成長につなげるのがねらいだ。

係長級などを対象に実施

  自治体を取り巻く環境が激変する中、練馬区は全職員が共有する仕事への取組姿勢として「問題意識を持って仕事に取り組み、突破力で現状を変えていける地域行政のプロ」を掲げて人材育成を進めている。

「職層研修をはじめ、職務遂行能力を高める実務研修、日常業務外の課題への対応力向上を目指した能力開発型研修などを実施し、知識やスキルの習得を図っています」と人材育成課長の清水優子さん。その能力を開発する研修の一環として「インバスケット」を導入していると話す。

 主任に昇任した職員を対象に2018年度から開始し、19年度には係長級昇任者へ広げて進めている。

「新たに主任や係長級になった職員を対象に、的確に状況を把握し、緊急度や重要度に応じて仕事を進められる判断力や問題解決力を身につけてもらうのがねらい。主任には選択制で受講してもらい、係長級は全員を対象に実施しています」と人材育成課主任の大塚亮さんは説明する。

限られた時間で案件を処理

 インバスケットは、架空の立場になりきって、限られた時間内に多くの案件を処理するビジネストレーニングツールで、株式会社インバスケット研究所が開発・提供している。自治体業務に特化した設定になっているわけではなく、例えば、店舗で起こるクレームやトラブルなどさまざまな事態に対し、責任者としてどのような優先順位で対処していくかを考える体験型研修で、絶対的な正解がないのも大きな特徴だ。

 係長級は半日、主任は1日の日程で行う。インバスケット認定講師の下、問題として出された10案件を20分間で、または20案件を1時間で、案件内容を把握して処理の順序を考える。その後、グループワーク(現在はコロナ禍のためペアワーク)で何を優先したかなどを議論していく――というのが流れ。その中で、自らの仕事の進め方の癖や問題点などの気づきを得て、その後の仕事や行動に活かしていく。

「限られた人員と業務環境の中で、いかに優先的に仕事を進めるか、または係長として係員に仕事を任せるか。その力を鍛えるには有効な研修だと感じています」と人材育成課係長の武田悠さんは効果を話す。


新型コロナの感染状況に応じてグループ形式(上)とスクール形式(下)を使い分けている。

前向きな組織風土を醸成

 受講した職員からは、「自分の思考の癖に気づいた」「自分に何が欠けているかを具体的に見直すいい機会になった」「優先順位はそれなりに設定できているつもりだったが、不十分なことを再認識した」との気づきの声が寄せられ、「弱点を克服し、より高い能力を目指したい」との前向きな姿勢も示されている。研修への満足度は9割に上っているという。

 研修で得た体験をその後の仕事や職場でいかに活かせるかが大事なポイントになるため、清水さんは「多様なニーズや不測の事態に自ら考えて行動できる職員、課題を見つけて当事者として考えられる職員の育成に引き続き力を入れたい。そして、前向きに自分事として対応する組織風土の醸成につなげていければと思っています」と話す。その上で、「洞察力や問題解決力を高める職員研修を求めている自治体には、インバスケットは有効」と評価している。


左から練馬区人材育成課所属・大塚亮さん、同課課長・清水優子さん、同課係長・武田悠さん。

 


【インバスケット研修 導入団体】
内閣府/横浜市役所/東京都台東区役所/中野区 役所/他 約50 団体

【実際の声】
・ 体験会に参加し、役立つ研修だと感じたので導入を決めました。受講した職員からも、刺激の多い研修とのことで大変好評です。(教育担当)・ 前例踏襲の業務を削ることが求められている中で、事業削減を実践している職員も見受けられることから、期待している研修の効果が出ていると考えています。(人材教育担当)

仕事を劇的に変えるためにも、まずは体験を


株式会社インバスケット研究所
代表取締役
鳥原隆志さん

 インバスケットは、米国空軍で生まれたトレーニングツールで、日本の企業には制限時間内で案件を処理させる昇格試験用として導入されました。私もインバスケットを体験しましたが、社員教育に生かせるのではないかと考えたのがインバスケットの研究と普及に取り組んだきっかけです。「限られた時間内で、より高い結果を出す」という考え方の下、①無理な時間設定、②絶対的な正解が存在しない、③グループワーク主体の実践的なアウトプット型──を特徴とした研修ツールとして2011年に紹介したところ、多くの民間企業から注目され、現在、国内外1000 社以上に導入されています。

 2013 年の宮崎県からの研修依頼を契機に、自治体への普及にも努めています。自治体職員は多様化する行政ニーズに加え、突発する大規模災害や感染症への対応など、従来の対応方法が通用しない局面に直面することが増えているのではないでしょうか。先行きが不透明で、正解が存在しない時代だからこそ、マニュアルや前例に捉われない問題解決力と判断力、すなわちインバスケット思考が不可欠になっています。

 研修を受講すると、自らの仕事の進め方の誤りに気づき、愕然とする受講生もいます。しかし、それが行動変革につながり、仕事を劇的に変えるきっかけになります。現在50 団体以上に導入され、研修への満足度は96%に達しています。インバスケットは何よりも体験が大事なので、まずは体験会に参加してください。

自治体職員向け講演会 + 体験会 実施予定
10月26日 東京
11月2日 オンライン
11月29日 大阪


詳しくはこちらから

https://www.inbasket.co.jp/special/municipality/

企画提供
株式会社インバスケット研究所
TEL.072-242-8950 URL:https://www.inbasket.co.jp/

 

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