議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第65回 自治法改正をどのように実現すべきか?

地方自治

2022.04.14

本記事は、月刊『ガバナンス』2021年8月号に掲載されたものです。記載されている内容は発刊当時の情報であり、現在の状況とは異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

 大津市議会では、桐田議長が6月30日に武田総務大臣と平井デジタル改革担当大臣に面会し、オンライン本会議実現のための地方自治法(以下「自治法」)改正を要望した。

 昨年6月にも同様の意見書を提出しているが、それだけでは現状は変わらないと感じたからだ。

 意見書は、自治法99条に定める機関意思を国等の関係行政庁に伝える法定手段ではあるが、国等には受理義務はあっても、回答などの対応義務はないため、実効性に乏しい一面は否定できない。

 事実、すでに二十数議会から同様の意見書が提出されているが、自治法改正に向けて前進したという話は聞かない。

■大臣要望の趣旨

 要望趣旨は、大津市役所の庁内クラスター発生の教訓からは、感染拡大時においても議会の権能を果たしうるオンライン本会議の実現が必要であり、自治法の早期改正を要望したものである。

 武田総務大臣からは、「国会に準拠する必要はなく、むしろ地方議会が先行することで国会改革にもつながる。『時代と流れは創るもの』であり、オンライン本会議もいずれ実現する」との見解を示された。

 平井デジタル改革担当大臣からは、「地方議会のデジタル化自体は目的にはなり得ず、市民目線での大義が必要。デジタル化には、これまでの当たり前を見直す自己否定の視点が必要」とされた。

■自治法改正の工程

 自治法の重要な改正は、内閣総理大臣の諮問機関である地方制度調査会(以下「地制調」)の答申を踏まえて行われることが多い。その過程では地方6団体(注1)からの意見聴取もされ、地方現場の意見が反映される。

注1 全国知事会、全国市長会、全国町村会、全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会を指す。

 だが直近では、デジタル改革関連法案の提出を優先させるために、議員のなり手不足解消のために兼業禁止規定の緩和などを盛り込んだ第32次地制調答申のように先送りされた例もあり、地制調の答申に反映されれば法改正が保証されるといったものでもない。

 他には地方6団体からの要望を直接反映する場合や、あえて議員立法によって改正されるものもある。しかし、兼業禁止規定の緩和は議員立法でも提出さえ見送られた一方で、自宅療養中の新型コロナウイルス感染者の郵便投票を認める特例法のように、「影も形もなかったもの」が成立するなど、政治的状況に左右されることも否めない(注2)。

注2 「地方行政」6月21日号。

■早期の法改正の実現を!

 大津市議会では、5月19日にオンライン委員会を可能とする条例改正をしたところ、同月28日には急遽、委員長が登庁不能となり、オンラインで議事進行するハイブリッド型オンライン委員会を余儀なくされた。この経験からは、本会議においてもオンラインでの運用を迫られる事態は、突然訪れると実感させられた。

 自治法には、憲法の規定を具体化する憲法附属法としての一面もあり、その改正は憲法秩序を変動させ得ることから慎重さが求められることも理解している。しかし、英国下院では2020年新型コロナウイルス法により、暫定的にオンライン本会議を認めるなど、昨年3月の時点で迅速な対応がされている。非常時には迅速さが正確さに優先されることもある。

 コロナ禍におけるオンライン本会議の実現も、それに類するのではないだろうか。

 

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

第66回 信心がないことは悪いことなのか? は2022年5月12日(木)公開予定です。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士 しみず・かつし
 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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