議会局「軍師」論のススメ
議会局「軍師」論のススメ 第44回 議会に長期ビジョンは不要なのか?
地方自治
2021.01.21
議会局「軍師」論のススメ
第44回 議会に長期ビジョンは不要なのか? 清水 克士
(月刊「ガバナンス」2019年11月号)
前号でも述べたとおり、地方議会制度は、それぞれの議会の理念に関して、議員任期を超えた継続性を担保する制度設計とはなっていない。今号では、議会の掲げる理念を機関として継承する具体策と、その目的について考えてみたい。
■ミッションロードマップの意義
大津市議会では、2015年に「大津市議会ミッションロードマップ」という、議員任期4年間を通して議会が行う政策立案と議会改革の内容を定めた「全国初の議会版実行計画」を策定した。
その一義的目的は、議会基本条例に定める基本理念、基本方針を具現化し、議会活動を「見える化」することによって、市民への説明責任を果たすところにある。
計画最終年度の2018年度には、計画の進捗に関して毎年度末に行っている自己評価のほか、議会活動全般の課題についても、外部有識者による評価を加えたうえで、「次期議会へのメッセージ」として次任期への申し送り事項を取りまとめた。
それは今議員任期における実行計画である「大津市議会ミッションロードマップ2019」の策定時に、議論の前提として活用され、「大津市議会ミッションロードマップ」は2サイクル目に入った今年度、任期を超えて議会の理念を継承させるスキームとしても完成した。
■第三者評価制度の必要性
議会における政策サイクル確立の必要性は、既に多くの議会で認識されているが、議会活動を第三者評価し、その結果を次任期の政策サイクルへ反映、連動させている議会はまれである。
長期計画に基づいて、議会活動をPDCAサイクル化するにあたっては、どのような手法で評価を行うかがポイントとなる。自己評価を導入している議会は多いが、自己評価は甘くなる宿命にあり、それだけで市民に対する説明責任が果たされるとは思えない。市民が納得する客観性を担保するためには、第三者評価の導入が必須となろう。
大津市議会の第三者評価は、大津市議会とパートナーシップ協定を締結している龍谷大学、立命館大学、同志社大学の大津市民である研究者に評価を依頼しているところに特色がある。アウトプット(手段の結果指標)を図る手法はあっても、アウトカム(目的に対する成果指標、議会においては住民福祉の向上度)を図る客観的な指標、手法は未だ確立されていないため、その視点を補うのが目的だ。
高い見識を有する複数の研究者から、議会活動の市民福祉向上への貢献度について、一市民としての視点からも評価してもらうことによって、数値化した客観的評価が困難な現状においても、多面的な視点によるアウトカム評価の要素を取り込もうとするものである。
■目指すべき次の一歩
執行機関も議事機関も、構成する公選職が4年ごとの選挙によって変わる可能性があることは同じである。だが、執行機関では多くの場合、首長任期を超える期間の総合計画によって、任期を超えた施策方針があらかじめ示されている。自治体としての政策は、4年を超えた長期視点で考察しなければならないものが多く、ある意味当然である。
議会も二元代表制の一翼を担う立場からは、任期に囚われず普遍的理念を継承し、議事機関としての長期ビジョンを市民に示すことが必要ではないだろうか。
*文中、意見にわたる部分は私見である。
Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。