議会局「軍師」論のススメ

清水 克士

議会局「軍師」論のススメ 第34回 改革を点から面へ変えるオフサイト活動とは?

地方自治

2020.11.12

議会局「軍師」論のススメ
第34回 改革を点から面へ変えるオフサイト活動とは? 清水 克士
月刊「ガバナンス」2019年1月号

 18年11月末に札幌市で、「議会研究会合同フォーラム」が開催された。第1部では、全国で活動する議会に関する研究会の活動報告があった。今号では私が報告した、発意する局職員育成のための「軍師ネットワーク」の意義を中心に、局職員のオフサイト活動の必要性についても言及したい。

■「軍師ネットワーク」の強み

 大津市議会局が事務局を所管する滋賀県市議会議長会では、16年に局職員の実務的課題解決や資質向上を目的として「軍師ネットワーク」を構築した。大局的理念は、大津市議会での議会改革の成果を滋賀県内の各市議会に波及させ、議会改革の流れを点から面へと発展させることである。

 一般的なオフサイト勉強会と比しての内的アドバンテージは、持続可能性である。具体的には、議長会の一事業と位置付けて、活動のための組織体制と財源が担保されていることである。

 多くの勉強会の組織体制は、創設時には活発な運営がされるものの、メンバーが固定的であるが故のマンネリ化や、逆に初期メンバーによる仲良しクラブ化が、新規加入を妨げている傾向も否定できない事実である。もちろんクローズドな運営も、限られたメンバーによる交流の場と割り切ればそれも良いだろうが、業界全体や地域貢献を目指すのであれば、それらの傾向は発展の阻害要因となるだろう。

 軍師ネットワークでは、現役自治体職員であれば局から転出しても、再び議会に戻る可能性を視野に入れて、会員資格の継続を可能としているが、自治体職員でなくなった時点で脱退となる。つまり、時がたてば組織は継続してもメンバーは自動的に入れ替わるサンセット方式であり、運営上の沈滞要因を予め排除している。

 財源的にも議長会予算が使えること、また準公的団体をベースとしている信用力を背景に、大学と有償の顧問契約を締結し、法務相談等の体制を整えている。

 次に軍師ネットワークの外的アドバンテージは、地方議会全体への貢献を果たしうる発展可能性である。議長会は都道府県単位で事務局が設置されており、運営ノウハウをパッケージ化して伝えれば、他地域でも容易に同様の展開が可能となるからである。

■オフサイト活動の必要性

 自治体業務は多様であるが、議会業務ほど法的には全国一律制度を前提としているにもかかわらず、ガラパゴス化している分野は珍しい。それは、他議会からの相談を受けた時に話が噛み合わないという形で顕在化する。お互いに議論の手前の前提部分で、自分たちのやり方が全国標準だと思い込んで話をするため、論点自体を共有できない事態が生ずるのである。

 それは地方議会自体が、国、広域地方自治体、基礎自治体の縦の関係性はもとより横の関係性も乏しく、それぞれが井の中の蛙となりやすい性質を持つ機関であるからだろう。

 それでもまだ議員には、政党活動や各種視察の機会など、他議会との接点があるが、局職員にはそのような機会が乏しい。したがって、公務員全体に言えることでもあるが、特に外部情報に通じた議員とのコミュニケーションを求められる議会(事務)局職員にとっては、なおのこと自ら求めて外の世界へ出る必要性を痛感させられるのである。

*文中、意見にわたる部分は私見である。

 

Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。

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