議会局「軍師」論のススメ
議会局「軍師」論のススメ 第13回 「チーム議会」の必要条件とは何か?
地方自治
2020.06.25
議会局「軍師」論のススメ
第13回 「チーム議会」の必要条件とは何か? 清水 克士
(月刊「ガバナンス」2017年4月号)
議会の政策立案機能とは
この連載も2年目を迎えることとなった。これもひとえに、読者のみなさんのおかげであり感謝に堪えない。地方議会の現場に身を置く立場からの率直な個人的意見ではあるが、何らかのお役に立てれば望外の喜びである。
さて前号では、議会からの政策立案の機能発揮は、政策条例の制定によることこそが、立法機関たる議会のとるべき王道であると述べた。今号では、立法機関であり合議制機関である議会からの政策立案を実現する要件について、思うところを述べてみたい。
議会には大きく分けて監視機能と政策立案機能の二つの機能があるが、レベルは様々でも監視については、多くの議会で機能発揮されている。それは、検査権、監査請求権、調査権などが法定されているほか、会議規則(大津市議会では会議条例)で定めることによって、一般質問がルーティンの制度として確立されていることが要因として大きい。それは、質問にあたっては自ずと執行機関の事務事業について調査、検証することとなるため、必然的に監視は果たされるからである。
それに対して、政策立案機能については、多くの議会で手つかずである。それは根源にさかのぼれば、批判は容易だが、対案を自ら示すのは難しいということももちろんある。同時に、方法論の観点からは、政策立案機能については一般質問のように方程式化された手法が確立されておらず、それぞれの議会でそれを確立しなければならないことがある。もちろん、政策提案型の一般質問もあり得るが、限られた持ち時間の中では散発的かつ表層的な提案とならざるを得ず、政策立案の本命の手法とはなり得ない。
「チーム議会」の必要条件
一般的に、監視機能と政策立案機能では、発揮に求められる能力、手法が異なり、監視機能の強化に努めていれば、それに呼応して自然と政策立案能力が高まるというものではない。具体的には、一般質問のスキルを磨いても、それだけで議会立案政策の実現には直結しない。それは、一般質問を起点とする監視機能の発揮は議員個人でも可能だが、議会としての政策立案は機関としての意見を集約できなければ成果にはつながらず、議事機関としての合意形成を前提とすることが根本的に違うからである。
合意形成のキーになるのは議員間討議であるが、それだけで条例案を調製することは難しい。政策条例は執行機関側が執行可能な内容としなければ絵に描いた餅となりかねず、執行部との綿密な調整が必要であるとともに、法制執務の知識と技術をも要求されるからである。そして、執行部での行政経験を活かして調整し、法制執務もこなすところに議会(事務)局職員(以下、「議会局職員」)の出番がある。
そして、会派を超えて議論できる議員間の関係性とともに、議員と議会局職員との間でも議論ができるフラットな関係性の二つが、議会からの政策立案の実現に資するものであり、それこそが大森彌・東京大学名誉教授も提唱される「チーム議会」の必要条件でもある。もちろん、議員と議会局職員の関係性は、究極的には議員の懐の深さしだいのところはあるが、そもそも議会局職員が議会や議員に対して、自ら距離を置こうとする「ひとごと意識」をもって接していては、関係性を構築できることはあり得ない。具体的には次号で論じたい。
*文中、意見にわたる部分は私見である。
Profile
大津市議会局長・早稲田大学マニフェスト研究所招聘研究員
清水 克士
しみず・かつし 1963年生まれ。同志社大学法学部卒業後、85年大津市役所入庁。企業局総務課総務係長、産業政策課副参事、議会総務課長、次長などを経て2020年4月から現職。著書に『議会事務局のシゴト』(ぎょうせい)。